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バングラデシュの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、バングラデシュの羊肉生産量は1960年代初頭には年間約900トンと限定的でしたが、直近の2023年には6,200トンに達しました。この間、生産量はゆるやかな増加を示しつつ、特定の年で急増や停滞を見せる特徴的な変動を経ています。特に2000年代後半以降、着実な成長を続け、近年では生産体制が一層強化されていることが読み取れます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,200
25.23% ↑
2022年 4,951
1.36% ↑
2021年 4,885
1.69% ↑
2020年 4,804
1.95% ↑
2019年 4,712
2.58% ↑
2018年 4,593
-1.85% ↓
2017年 4,680
-2.9% ↓
2016年 4,819
5.92% ↑
2015年 4,550
4.84% ↑
2014年 4,340
3.39% ↑
2013年 4,198
1.67% ↑
2012年 4,129
1.71% ↑
2011年 4,059
4.08% ↑
2010年 3,900
5.41% ↑
2009年 3,700
5.71% ↑
2008年 3,500
6.06% ↑
2007年 3,300
4.76% ↑
2006年 3,150
5% ↑
2005年 3,000 -
2004年 3,000
7.14% ↑
2003年 2,800 -
2002年 2,800
7.69% ↑
2001年 2,600 -
2000年 2,600 -
1999年 2,600 -
1998年 2,600
4% ↑
1997年 2,500
-1.96% ↓
1996年 2,550
27.5% ↑
1995年 2,000 -
1994年 2,000
16.41% ↑
1993年 1,718
4.56% ↑
1992年 1,643
4.78% ↑
1991年 1,568
2.42% ↑
1990年 1,531
4.86% ↑
1989年 1,460
2.96% ↑
1988年 1,418
5.51% ↑
1987年 1,344
2.91% ↑
1986年 1,306
6.01% ↑
1985年 1,232
3.7% ↑
1984年 1,188
47.39% ↑
1983年 806
1.77% ↑
1982年 792
2.59% ↑
1981年 772
2.66% ↑
1980年 752
-44.3% ↓
1979年 1,350
-23.03% ↓
1978年 1,754
-17.58% ↓
1977年 2,128
7.58% ↑
1976年 1,978
16.35% ↑
1975年 1,700
6.25% ↑
1974年 1,600
6.67% ↑
1973年 1,500
36.36% ↑
1972年 1,100
22.22% ↑
1971年 900
21.62% ↑
1970年 740
-1.33% ↓
1969年 750 -
1968年 750 -
1967年 750
-9.64% ↓
1966年 830
-7.78% ↓
1965年 900
-33.33% ↓
1964年 1,350
28.57% ↑
1963年 1,050
10.53% ↑
1962年 950
5.56% ↑
1961年 900 -

バングラデシュの羊肉生産量データから、同国の農業と畜産業の発展を深く分析することができます。1961年当時、全体の生産量は年間900トンと限定的であり、これが示すのは、当時の畜産業が主に国内需要を満たす規模にとどまっていたという事実です。その後、1970年代にかけて生産量は不安定な増減を見せます。この背景には、当時の地政学的状況が関係しています。バングラデシュは1971年に独立を果たしましたが、その直後には政治的不安定やインフラ整備の不足が、生産活動に影響を与えたと考えられます。

1980年代から1990年代にかけては、農村部の農業政策や家畜管理の改善を受けて、生産量は徐々に増加していきました。この成長傾向は、農業技術の導入や気候条件を意識した畜産業の展開が寄与していると考えられます。特に1994年と1995年の時点で年間2,000トンに達し、その後も2000年代には3,000トンを超える水準へ到達しました。ここから見て取れるのは、羊肉がバングラデシュの生活習慣や食文化において一定の重要性を持ち始めたという点です。

さらに、2008年以降、生産量の成長率が加速しており、特に2023年には6,200トンという顕著な増加を記録しました。この急増の背景には、輸出需要の高まりや国内における高収益作物の需要拡大、加えて牧草地の拡張と家畜育種技術の向上が挙げられます。ただ、依然として人口規模の大きいバングラデシュ全体の食料需要に対するシェアは限られています。また、隣国インドの羊肉生産量が1トン単位で見ると遥かに上回ることを考えると、近隣諸国との格差は依然として存在しています。

次に注意すべき課題は、この羊肉生産に影響を及ぼしかねない気候変動や土地利用の変化です。バングラデシュは気候リスクの高い地域であり、洪水やサイクロンが頻繁です。これらの自然災害は、牧草地の消失や家畜死亡率の上昇を引き起こし、畜産業に直接的な打撃を与える可能性があります。例えば、2017年から2018年にかけて生産量が減少している現象は、天候不順やその影響を受けた農地・牧草地縮小の影響と推察されます。

さらに注視すべき点は、羊肉生産に関連する持続可能性です。持続可能な農業を推進するには、土地の過剰利用や過放牧を防ぎつつ、現代的な管理手法を導入する必要があります。バングラデシュは人口密度が高く、農地利用の競争が激しいため、他産業や作物との調整が重要です。

一方で、羊肉生産を促進するための具体的な提言としては、以下のような取り組みが挙げられます。第一に、牧羊業の近代化を進め、高収量を誇る羊の品種改良を奨励することが重要です。第二に、地域ごとの気候特性を考慮しつつ、適切な牧草や飼料の供給体制を整備する必要があります。また、若い農業従事者への技術教育の提供も、生産効率向上への鍵となるでしょう。そして第三に、輸出市場の拡大を図るため、国際基準に準拠した衛生管理や品質保証の仕組みを構築することが望まれます。

最後に、全体的な結論として、バングラデシュの羊肉生産は、過去数十年で大きく成長し、今後も更なる拡大が期待されます。ただし、気候変動や農地利用の制約といった課題を踏まえ、持続可能かつ競争力のある産業構造を構築することが必要です。国際的な協力を通じた技術移転や市場開拓が加速すれば、バングラデシュは自国の食料安全保障を確保しつつ、近隣諸国との経済競争を強化できるでしょう。そのため、政策立案者と農業関係者は今後も緻密な対応を求められることになります。