国連食糧農業機関(FAO)の最新データ(2024年更新)によると、バングラデシュの牛飼養数は1961年の19,850,000頭から2022年には24,700,000頭に増加しています。この期間に見られる牛飼養数の推移は、一部の急激な増減を含みつつも、長期的には増加傾向を示しています。特に、1978年や2020年代以降の緩やかな増加が特徴的です。
バングラデシュの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 24,700,000 |
2021年 | 24,545,000 |
2020年 | 24,391,000 |
2019年 | 24,187,000 |
2018年 | 24,086,000 |
2017年 | 23,935,000 |
2016年 | 23,785,000 |
2015年 | 23,636,000 |
2014年 | 23,488,000 |
2013年 | 23,341,000 |
2012年 | 23,195,000 |
2011年 | 23,121,000 |
2010年 | 23,051,000 |
2009年 | 22,976,000 |
2008年 | 22,900,000 |
2007年 | 22,870,000 |
2006年 | 22,800,000 |
2005年 | 22,670,000 |
2004年 | 22,600,000 |
2003年 | 22,580,000 |
2002年 | 22,460,000 |
2001年 | 22,380,000 |
2000年 | 22,310,000 |
1999年 | 22,230,000 |
1998年 | 22,160,000 |
1997年 | 22,090,000 |
1996年 | 22,020,000 |
1995年 | 23,977,000 |
1994年 | 23,769,000 |
1993年 | 23,569,000 |
1992年 | 23,480,000 |
1991年 | 23,259,008 |
1990年 | 23,244,000 |
1989年 | 23,015,008 |
1988年 | 22,789,008 |
1987年 | 22,567,008 |
1986年 | 22,348,000 |
1985年 | 22,132,000 |
1984年 | 21,920,176 |
1983年 | 22,490,000 |
1982年 | 22,174,000 |
1981年 | 21,863,008 |
1980年 | 21,556,000 |
1979年 | 31,741,008 |
1978年 | 30,520,000 |
1977年 | 26,624,000 |
1976年 | 26,057,008 |
1975年 | 25,500,000 |
1974年 | 24,959,008 |
1973年 | 24,430,000 |
1972年 | 25,500,000 |
1971年 | 25,500,000 |
1970年 | 25,686,000 |
1969年 | 25,000,000 |
1968年 | 24,500,000 |
1967年 | 24,000,000 |
1966年 | 23,500,000 |
1965年 | 22,370,000 |
1964年 | 22,986,000 |
1963年 | 21,150,000 |
1962年 | 20,500,000 |
1961年 | 19,850,000 |
バングラデシュにおける牛飼養数の推移は、この国の農業構造、経済発展、そして社会文化的背景を映し出す重要な指標と言えます。牛は伝統的に農村部の生計手段として利用され、農業労働力やミルク供給源としてバングラデシュの農村生活を支えてきました。
1961年から2022年にかけての牛の頭数データを分析すると、大きく分けて3つの動向が見られます。まず、1961年から1970年の間には、おおむね増加基調でしたが、その後の1971年から1973年にはヒンディ戦争の影響と独立戦争の混乱により、一時的な減少が見られます。第二に、1978年に約30,520,000頭と大幅な増加が記録されていますが、翌1980年には約21,556,000頭に減少しており、この急変は統計上の方法論の変更やデータ収集の課題、または疫病などの影響が背景にある可能性があります。最後に、2000年以降は安定した伸びを示しており、2016年以降のデータを見ると、年間でおおよそ150,000頭ずつ増加していることが分かります。
このような増減の要因には、国の政策、地政学的要素、自然災害、そして社会的要請が複雑に絡み合っています。バングラデシュは頻繁にサイクロンや洪水といった自然災害に見舞われるため、これらが時折、牛の飼養数に長期的なダメージを与えてきたのは明らかです。また、経済成長に伴い農村部で農業に代わる収益源が拡大しているため、かつては農村部の全世帯が牛を飼育していた状況にも変化が生じています。
そして、疫病もまた飼養数に大きな影響を与えうる現状で、特に公衆衛生の整備が限られている地域では、感染症が牛の存続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。これに加え、新型コロナウイルス以後の輸送制限により、飼料や資源調達の問題が一部の農家で深刻化する懸念も指摘されています。
将来的に重要な課題は、急激な都市化の進展と、持続可能な農業制度の維持のバランス調整です。牛の飼養数を現状の増加傾向のまま推移させるためには、効果的な政策が求められます。具体的には、疫病対策のための獣医学インフラの整備、気候変動対策も含めた持続可能な飼料供給システムの構築、そして飼育農家への教育支援が挙げられます。また、近隣諸国インドや中国と協調した地域経済圏の形成により、農業・畜産製品の流通効率を高めることも期待されます。
さらに、地政学的リスクが農業や畜産に与える影響についても注目が必要です。たとえば、インドとの国境情勢や土地資源の競争が、牧畜業に与える制約になる可能性があります。このため、国家や国際機関は地域間での協力を促進し、問題解決に向けた包括的なアプローチを採用することが求められます。
結論として、バングラデシュの牛飼養数推移は、経済と社会の発展と密接に結びついています。増加傾向を持続するためには、課題を継続的に評価し、対応策を講じていく必要があります。政策面での努力と地域間協力が鍵となる中、国際的な支援と専門家の協力の下での長期的なビジョンが重要となるでしょう。