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バングラデシュのオレンジ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、バングラデシュのオレンジ生産量は1961年から2022年にかけて大きな変動を示しており、一時期は急激に減少する局面も見られます。1960年代には平均5,000トンを維持していましたが、1970年代後半から減少傾向に転じました。その後、1990年代半ば以降も低調に推移しましたが、2008年以降は徐々に回復し、2010年代後半から再び3,000トンを超える生産量に達するようになっています。2022年のデータでは、3,550トンとなっていますが、この期間における生産の持続性には多くの課題が存在しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,616
1.86% ↑
2022年 3,550
-5.05% ↓
2021年 3,739
16.41% ↑
2020年 3,212
-5.33% ↓
2019年 3,393
2.35% ↑
2018年 3,315
-1.69% ↓
2017年 3,372
4.79% ↑
2016年 3,218
-18.61% ↓
2015年 3,954
7.62% ↑
2014年 3,674
6.55% ↑
2013年 3,448
15.47% ↑
2012年 2,986
-0.4% ↓
2011年 2,998
12.45% ↑
2010年 2,666
29.23% ↑
2009年 2,063
32.41% ↑
2008年 1,558
79.7% ↑
2007年 867
3.21% ↑
2006年 840
-13.4% ↓
2005年 970
-3% ↓
2004年 1,000
2.56% ↑
2003年 975
-2.5% ↓
2002年 1,000 -
2001年 1,000 -
2000年 1,000 -
1999年 1,000 -
1998年 1,000 -
1997年 1,000 -
1996年 1,000
28.21% ↑
1995年 780
9.09% ↑
1994年 715
8.33% ↑
1993年 660 -
1992年 660
-35.92% ↓
1991年 1,030
4.04% ↑
1990年 990
5.21% ↑
1989年 941
-3.49% ↓
1988年 975
-35.69% ↓
1987年 1,516
-12.47% ↓
1986年 1,732
-18.69% ↓
1985年 2,130
-13.59% ↓
1984年 2,465
9.07% ↑
1983年 2,260
14.55% ↑
1982年 1,973
-18.91% ↓
1981年 2,433
0.08% ↑
1980年 2,431
0.37% ↑
1979年 2,422
1% ↑
1978年 2,398
-32.56% ↓
1977年 3,556
-0.67% ↓
1976年 3,580 -
1975年 3,580
-2.59% ↓
1974年 3,675
1.94% ↑
1973年 3,605
3% ↑
1972年 3,500
-12.5% ↓
1971年 4,000
-11.11% ↓
1970年 4,500
-10% ↓
1969年 5,000
25% ↑
1968年 4,000 -
1967年 4,000 -
1966年 4,000
-20% ↓
1965年 5,000
-16.67% ↓
1964年 6,000
20% ↑
1963年 5,000 -
1962年 5,000 -
1961年 5,000 -

バングラデシュのオレンジ生産量は、過去60年以上にわたり、変動の激しい軌跡を描いています。1960年代には5,000トン以上を記録し安定していましたが、1970年代には3,000トン台、1980年代後半には1,000トンを下回ることもありました。この背景として考えられる主要な要因は、農業技術の進歩が遅れていたこと、適した作物の選定が十分でなかったこと、さらには気候変動の影響や土地利用の変化などです。また、この時期のバングラデシュにおいては政治的混乱や災害の影響により農業全体が打撃を受けていたとも考えられます。

1990年代にやや回復の兆しを見せたものの、生産量は1,000トン台の低水準で推移し続けました。しかし、2008年を境にこれが再度上向き、2010年代後半には一部の年で3,000トンを超える成果を上げています。この回復は、近年の農業技術への投資強化や農家支援制度、さらには特定地域での農業普及活動の成果が背景にあります。例えば、オレンジの栽培に適した気候条件を有する一部の地域では、収穫率が他地域に比べて高いことが確認されています。このような地域への重点的支援が、一定の成功を収めていると考えられます。

一方で、2022年の3,550トンという生産量には課題も潜んでいます。過去データを振り返ると、バングラデシュのオレンジ生産には安定性が欠けており、天候や災害に大きく左右される性質が見てとれます。例えば、気候変動が作物の生育に悪影響を及ぼすケースが増加していることが予想されます。また、国内での土地利用の競争や人口増加による需要の変化が、果樹栽培の将来的な拡張を制限する懸念があります。それに加えて、農産物流通体制や市場アクセスにおける課題も指摘されています。

さらに、地域比較の観点から見ると、バングラデシュのオレンジ生産量はインドや中国といった隣接国に大きく差をつけられています。例えば、中国では年間数百万トン規模のオレンジが生産されていますが、これは専ら大規模かつ集約的な農業システムの普及によるものです。こうした対比から、バングラデシュにおける生産効率向上の必要性はますます強調されています。

今後の課題としては、まず災害リスクマネジメントの強化が挙げられます。特に洪水や乾燥化といった気候条件が近年不規則になっているため、耐気候性の高い品種の研究・導入が急がれます。そのためには、政府機関が農業研究機関や国際機関と連携し、新しい品種や技術の導入を促進する必要があります。また、小規模農家が多いバングラデシュに特化した支援体制の整備も鍵となります。特定地域での成功事例を全国的に展開し、農家間での知識共有を進めることが効果的でしょう。

さらに、地政学的観点から検討すると、バングラデシュが輸出志向型の果物生産を視野に入れることで、生産拡大のための動機付けを強化する余地があります。隣国インドやその他のアジア市場へのオレンジ輸出を目指し、物流インフラの整備と品質基準の向上につながる政策が有効です。

最後に、オレンジ生産の安定性を確保し、さらに増加させるためには、国内外からの資金調達を活用した戦略的な投資が不可欠です。また、農業従事者に対する教育やトレーニングを充実させることで、全体的な生産効率を底上げすることも期待されます。バングラデシュのオレンジ生産が長期的に地域経済や食糧安全保障に貢献するためには、これらの取り組みを統合的に実施していく必要があります。