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バングラデシュのオレンジ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、バングラデシュのオレンジ生産量は1961年から2022年にかけて大きな変動を示しており、一時期は急激に減少する局面も見られます。1960年代には平均5,000トンを維持していましたが、1970年代後半から減少傾向に転じました。その後、1990年代半ば以降も低調に推移しましたが、2008年以降は徐々に回復し、2010年代後半から再び3,000トンを超える生産量に達するようになっています。2022年のデータでは、3,550トンとなっていますが、この期間における生産の持続性には多くの課題が存在しています。

年度 生産量(トン)
2022年 3,550
2021年 3,739
2020年 3,212
2019年 3,393
2018年 3,315
2017年 3,372
2016年 3,218
2015年 3,954
2014年 3,674
2013年 3,448
2012年 2,986
2011年 2,998
2010年 2,666
2009年 2,063
2008年 1,558
2007年 867
2006年 840
2005年 970
2004年 1,000
2003年 975
2002年 1,000
2001年 1,000
2000年 1,000
1999年 1,000
1998年 1,000
1997年 1,000
1996年 1,000
1995年 780
1994年 715
1993年 660
1992年 660
1991年 1,030
1990年 990
1989年 941
1988年 975
1987年 1,516
1986年 1,732
1985年 2,130
1984年 2,465
1983年 2,260
1982年 1,973
1981年 2,433
1980年 2,431
1979年 2,422
1978年 2,398
1977年 3,556
1976年 3,580
1975年 3,580
1974年 3,675
1973年 3,605
1972年 3,500
1971年 4,000
1970年 4,500
1969年 5,000
1968年 4,000
1967年 4,000
1966年 4,000
1965年 5,000
1964年 6,000
1963年 5,000
1962年 5,000
1961年 5,000

バングラデシュのオレンジ生産量は、過去60年以上にわたり、変動の激しい軌跡を描いています。1960年代には5,000トン以上を記録し安定していましたが、1970年代には3,000トン台、1980年代後半には1,000トンを下回ることもありました。この背景として考えられる主要な要因は、農業技術の進歩が遅れていたこと、適した作物の選定が十分でなかったこと、さらには気候変動の影響や土地利用の変化などです。また、この時期のバングラデシュにおいては政治的混乱や災害の影響により農業全体が打撃を受けていたとも考えられます。

1990年代にやや回復の兆しを見せたものの、生産量は1,000トン台の低水準で推移し続けました。しかし、2008年を境にこれが再度上向き、2010年代後半には一部の年で3,000トンを超える成果を上げています。この回復は、近年の農業技術への投資強化や農家支援制度、さらには特定地域での農業普及活動の成果が背景にあります。例えば、オレンジの栽培に適した気候条件を有する一部の地域では、収穫率が他地域に比べて高いことが確認されています。このような地域への重点的支援が、一定の成功を収めていると考えられます。

一方で、2022年の3,550トンという生産量には課題も潜んでいます。過去データを振り返ると、バングラデシュのオレンジ生産には安定性が欠けており、天候や災害に大きく左右される性質が見てとれます。例えば、気候変動が作物の生育に悪影響を及ぼすケースが増加していることが予想されます。また、国内での土地利用の競争や人口増加による需要の変化が、果樹栽培の将来的な拡張を制限する懸念があります。それに加えて、農産物流通体制や市場アクセスにおける課題も指摘されています。

さらに、地域比較の観点から見ると、バングラデシュのオレンジ生産量はインドや中国といった隣接国に大きく差をつけられています。例えば、中国では年間数百万トン規模のオレンジが生産されていますが、これは専ら大規模かつ集約的な農業システムの普及によるものです。こうした対比から、バングラデシュにおける生産効率向上の必要性はますます強調されています。

今後の課題としては、まず災害リスクマネジメントの強化が挙げられます。特に洪水や乾燥化といった気候条件が近年不規則になっているため、耐気候性の高い品種の研究・導入が急がれます。そのためには、政府機関が農業研究機関や国際機関と連携し、新しい品種や技術の導入を促進する必要があります。また、小規模農家が多いバングラデシュに特化した支援体制の整備も鍵となります。特定地域での成功事例を全国的に展開し、農家間での知識共有を進めることが効果的でしょう。

さらに、地政学的観点から検討すると、バングラデシュが輸出志向型の果物生産を視野に入れることで、生産拡大のための動機付けを強化する余地があります。隣国インドやその他のアジア市場へのオレンジ輸出を目指し、物流インフラの整備と品質基準の向上につながる政策が有効です。

最後に、オレンジ生産の安定性を確保し、さらに増加させるためには、国内外からの資金調達を活用した戦略的な投資が不可欠です。また、農業従事者に対する教育やトレーニングを充実させることで、全体的な生産効率を底上げすることも期待されます。バングラデシュのオレンジ生産が長期的に地域経済や食糧安全保障に貢献するためには、これらの取り組みを統合的に実施していく必要があります。