国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、バングラデシュにおけるサツマイモの生産量は、1960年代から1970年代にかけて急激に増加したものの、1980年代以降は減少傾向が続いています。近年では2020年ごろに底を打ち、2022年には303,710トンまで回復しています。長期的には生産量に波がありながらも減少基調という点が見受けられる一方、近年の回復基調は希望的なサインと言えます。
バングラデシュのサツマイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 303,710 |
2021年 | 279,801 |
2020年 | 245,719 |
2019年 | 235,881 |
2018年 | 246,816 |
2017年 | 262,702 |
2016年 | 259,372 |
2015年 | 254,633 |
2014年 | 259,472 |
2013年 | 263,000 |
2012年 | 252,891 |
2011年 | 297,539 |
2010年 | 306,633 |
2009年 | 305,025 |
2008年 | 307,221 |
2007年 | 304,090 |
2006年 | 307,695 |
2005年 | 311,440 |
2004年 | 320,495 |
2003年 | 332,030 |
2002年 | 346,000 |
2001年 | 357,000 |
2000年 | 378,000 |
1999年 | 383,000 |
1998年 | 397,620 |
1997年 | 405,875 |
1996年 | 435,105 |
1995年 | 435,000 |
1994年 | 426,935 |
1993年 | 433,545 |
1992年 | 470,190 |
1991年 | 482,635 |
1990年 | 511,687 |
1989年 | 543,920 |
1988年 | 557,545 |
1987年 | 548,155 |
1986年 | 611,980 |
1985年 | 682,600 |
1984年 | 713,033 |
1983年 | 713,555 |
1982年 | 691,527 |
1981年 | 704,377 |
1980年 | 791,270 |
1979年 | 794,952 |
1978年 | 782,826 |
1977年 | 755,565 |
1976年 | 790,599 |
1975年 | 718,678 |
1974年 | 636,845 |
1973年 | 691,366 |
1972年 | 747,117 |
1971年 | 831,896 |
1970年 | 852,054 |
1969年 | 805,926 |
1968年 | 772,000 |
1967年 | 733,000 |
1966年 | 454,000 |
1965年 | 440,000 |
1964年 | 400,000 |
1963年 | 370,000 |
1962年 | 350,000 |
1961年 | 330,000 |
バングラデシュのサツマイモ生産量は過去数十年間にわたり、大きな変動を見せてきました。1960年代のデータから見ると、330,000トンから始まり1970年には852,054トンと急増しています。この時期の急成長は、バングラデシュ国内でサツマイモが重要な食糧作物として認識され、多くの農地が栽培に利用されたことが背景にあります。一方で、1970年代後半から1980年代にかけて一貫した低下が始まりました。特に1990年代以降、生産の低迷が顕著で、2000年代初頭には300,000トン台にまで減少しました。この低迷は、他作物への転換や農業の収益性の変化、生産効率の改善の遅れが原因と考えられます。
近年では2020年に245,719トンまで落ち込むものの、その後は増加傾向が見え始めています。2022年には303,710トンまで回復しており、この変化は農業技術や施策の改善が功を奏している可能性があります。しかしながら、長期トレンドを見ると、依然として1960年代や1970年代のピーク時の生産量には程遠い状況にあります。
背景として、バングラデシュは洪水や台風といった自然災害に頻繁に見舞われる国であり、これが農業生産に大きく影響している点があります。特に、低地の多い地形により洪水の被害が拡大しやすいことや、気候変動による降水パターンの変化が収穫量の安定化を妨げている可能性があります。また、農家がデータや技術へのアクセスが限られている中で、効率的な農業技術を導入できていない点も課題です。
このような生産量低迷の解決策としては、サツマイモの高収量品種の開発と普及活動が急務です。また、農業インフラの整備や灌漑技術の導入、さらには災害リスクを軽減する気候適応型農業が鍵となります。日本や韓国では、稲作や根菜類における災害適応技術の研究が進んでおり、バングラデシュも他国の事例を参考にした農業技術革新が必要です。加えて、公的な支援により地方農家に対する教育プログラムや資金援助を充実させることで、持続可能な農業モデルを構築するべきです。
地政学的な観点では、南アジア全域での作物需要の増加や農業輸出促進を見据える必要があります。インドや中国が農業生産の質と量を飛躍的に向上させている中で、バングラデシュが競争力を維持するためには、農業の近代化をさらに推し進めることが重要です。さらに、地域協力の一環として農作物の輸出入や技術共有の枠組みを活性化させることも、有望な解決策となるかもしれません。
結論として、サツマイモ生産量の推移を見れば、バングラデシュ農業は多くの課題に直面している一方で、技術改善と政策介入により回復の兆しも見え始めています。この回復傾向を維持し、さらなる向上を目指すためには、災害対策、技術革新、農家の支援を統合した包括的なアプローチが必要不可欠です。また、国際協力を通じて地域全体で農業安定化を目指す動きにも期待が寄せられます。