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イスラエルのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供した最新データによると、イスラエルのパイナップル生産量は過去30年以上にわたり顕著な変動を示しています。特に1990年代の1,000トン台前半から2000年代には生産量が大幅に減少しましたが、2019年以降急激な増加が見られ、2023年には6,309トンに達しました。この大幅な増加は気候変動への対応技術の進展や農業政策の転換が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,309
-4.41% ↓
2022年 6,600
3.94% ↑
2021年 6,350
26.97% ↑
2020年 5,001
42.89% ↑
2019年 3,500
662.53% ↑
2018年 459
85.83% ↑
2017年 247
7.39% ↑
2016年 230
11.11% ↑
2015年 207
6.15% ↑
2014年 195
5.41% ↑
2013年 185
49.19% ↑
2012年 124
5.98% ↑
2011年 117 -
2010年 117
-84.67% ↓
2009年 763
9.31% ↑
2008年 698
26.45% ↑
2007年 552
-39.21% ↓
2006年 908
-4.32% ↓
2005年 949
2.59% ↑
2004年 925
-19.57% ↓
2003年 1,150 -
2002年 1,150
48.75% ↑
2001年 773
286.56% ↑
2000年 200
-52.38% ↓
1999年 420
-65% ↓
1998年 1,200
33.33% ↑
1997年 900
-45.45% ↓
1996年 1,650
65% ↑
1995年 1,000
-17.2% ↓
1994年 1,208
-4.88% ↓
1993年 1,270
-4.37% ↓
1992年 1,328
-4.31% ↓
1991年 1,387
-7.51% ↓
1990年 1,500 -

イスラエルのパイナップル生産量データを振り返ると、1990年代は1,000~1,500トンという比較的安定した生産量を記録していましたが、その後1999年には420トンにまで減少しました。この生産低下の背景には、当時の地中海性気候がもたらす高温乾燥な環境が影響し、水資源の不足や栽培技術の制約が主な要因として挙げられます。また、2000年代にかけて、最少では200トン(2000年)という厳しい状況となりました。しかしその後、2019年以降、イスラエルのパイナップル生産量は急激に回復しました。最も顕著なのは2020年から2023年までで、1年間平均6,000トン以上を生産しています。

この復活劇の理由として、まず挙げられるのは先進的な農業技術と政策の導入です。イスラエルは乾燥地帯であるにもかかわらず、世界最先端の灌漑(かんがい)技術や土壌管理技術を開発してきた国として知られています。特に、ドリップ灌漑システムを活用することで、水資源を大幅に節約しながら生産効率を高めることに成功しました。この技術の進展は、気候に左右されやすいパイナップルのような熱帯果樹の栽培において、極めて重要でした。

さらに、農業を支える政策の強化も見逃せません。例えば、国内農家に対する補助金や、新規栽培技術の普及活動が行われ、また輸出市場拡大を目的とした品質向上の取り組みが進められました。これにより、パイナップル生産が適正な収益をもたらす作物として再評価されました。また気候適応型農業の導入もイスラエル特有の気候条件に即した選択と言えます。

一方で、生産量の急激な変化には限界が見え始めています。2022年の6,600トンをピークに、2023年は6,309トンへやや減少しました。この変化は、持続可能な形での生産をいかに維持するかという課題を浮き彫りにしています。また、イスラエルでは水資源不足の問題が依然として深刻であり、パイナップルを含む農産物の生産が拡大するにつれて水の需要がさらに増加すると推測されます。

さらに、地政学的なリスクも無視できない要因です。中東地域は複雑な国際関係や時折発生する地域衝突の影響を受けやすい環境であり、流通ルートの安定化や輸出先市場の多様化が今後の大きな課題として挙げられます。特に、周辺諸国の紛争が輸送経路に影響を及ぼす可能性があり、これがパイナップルの国際競争力に影響を与える可能性を懸念する声もあります。

未来に向けた具体的な対策としては、まず最新技術のさらなる導入が挙げられます。特にAIを活用した農業生産管理や、気温・湿度の微調整を可能にするスマート農業の導入は、災害リスク軽減と高効率な農業の実現に寄与するでしょう。また、水使用量を抑える新たな灌漑技術の研究開発を進めることも、持続可能な成長戦略には不可欠です。

加えて、輸出市場を多様化させる努力も重要です。現在はヨーロッパ向けの輸出が高い割合を占めますが、人口が多いアジア諸国、特に日本や中国などの需要を開拓することで安定的な収益基盤を築くことが期待されます。このため、現地市場の消費者ニーズに応じた品種改良や、消費者にアピールするパッケージング技術の向上も取り組むべき課題です。

これらの対策を進めることで、イスラエルはパイナップル産業を新たな収益源として確立し、乾燥地農業のモデルケースとして国際的な注目を集める可能性を高めるでしょう。