国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、イスラエルのエンドウ豆(生)の生産量は、1961年の5,700トンに始まり、1970年代から1980年代にかけて約4,000~12,900トンで推移していました。しかしながら、2014年以降、生産量が急激に減少し、2023年には46トンという著しく低い水準に達しています。これは長期的な生産低迷と持続可能性に関する課題を示唆しており、特に近年その傾向が顕著です。
イスラエルのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 46 |
-17.86% ↓
|
2022年 | 56 |
-60% ↓
|
2021年 | 140 |
-66.82% ↓
|
2020年 | 422 |
-31.05% ↓
|
2019年 | 612 |
37.84% ↑
|
2018年 | 444 |
27.22% ↑
|
2017年 | 349 |
50.43% ↑
|
2016年 | 232 |
71.85% ↑
|
2015年 | 135 |
-60.64% ↓
|
2014年 | 343 |
-97.31% ↓
|
2013年 | 12,732 |
8.11% ↑
|
2012年 | 11,777 |
6.23% ↑
|
2011年 | 11,086 |
7.14% ↑
|
2010年 | 10,347 |
18.93% ↑
|
2009年 | 8,700 |
-19.44% ↓
|
2008年 | 10,800 |
-11.48% ↓
|
2007年 | 12,200 |
-4.29% ↓
|
2006年 | 12,747 |
4.66% ↑
|
2005年 | 12,180 |
33.85% ↑
|
2004年 | 9,100 |
19.74% ↑
|
2003年 | 7,600 |
-13.64% ↓
|
2002年 | 8,800 |
79.59% ↑
|
2001年 | 4,900 |
-54.21% ↓
|
2000年 | 10,700 |
105.77% ↑
|
1999年 | 5,200 |
-44.09% ↓
|
1998年 | 9,300 |
24% ↑
|
1997年 | 7,500 |
-27.18% ↓
|
1996年 | 10,300 |
-14.88% ↓
|
1995年 | 12,100 |
51.25% ↑
|
1994年 | 8,000 |
-14.89% ↓
|
1993年 | 9,400 |
22.88% ↑
|
1992年 | 7,650 |
-10.51% ↓
|
1991年 | 8,548 |
15.51% ↑
|
1990年 | 7,400 |
17.46% ↑
|
1989年 | 6,300 |
1.61% ↑
|
1988年 | 6,200 |
-40.95% ↓
|
1987年 | 10,500 |
87.5% ↑
|
1986年 | 5,600 |
-15.15% ↓
|
1985年 | 6,600 |
1.54% ↑
|
1984年 | 6,500 | - |
1983年 | 6,500 |
-8.45% ↓
|
1982年 | 7,100 |
21.37% ↑
|
1981年 | 5,850 |
8.33% ↑
|
1980年 | 5,400 |
-1.82% ↓
|
1979年 | 5,500 |
-7.56% ↓
|
1978年 | 5,950 |
29.35% ↑
|
1977年 | 4,600 |
13.58% ↑
|
1976年 | 4,050 |
-62.5% ↓
|
1975年 | 10,800 |
7.46% ↑
|
1974年 | 10,050 |
-22.09% ↓
|
1973年 | 12,900 |
6.17% ↑
|
1972年 | 12,150 |
13.02% ↑
|
1971年 | 10,750 |
12.57% ↑
|
1970年 | 9,550 |
51.59% ↑
|
1969年 | 6,300 |
-9.35% ↓
|
1968年 | 6,950 |
-3.47% ↓
|
1967年 | 7,200 |
-31.1% ↓
|
1966年 | 10,450 |
34.84% ↑
|
1965年 | 7,750 |
66.67% ↑
|
1964年 | 4,650 |
-3.13% ↓
|
1963年 | 4,800 |
18.52% ↑
|
1962年 | 4,050 |
-28.95% ↓
|
1961年 | 5,700 | - |
イスラエルにおけるエンドウ豆の生産量推移は、農業政策や地政学的状況、気候変動が複雑に絡み合う結果を象徴しています。データを見ると、1960年代から1980年代にかけては生産量が増減を繰り返しながらも1万トンを超える年が見られ、農産物として一定以上の重要性を保っていました。特に、1965年の7,750トンから1966年の10,450トンへと増加した時期や、1995年や2006年に12,100トン、12,747トンなど高い値を記録した年は、生産拡大を可能にした好条件が存在したことが考えられます。
一方で、2014年を境に状況は劇的に変化しています。この年の343トンというデータは、それまでの年間平均生産量と比較して大幅な減少を示しており、2023年にはわずか46トンと、数値はほとんどゼロに近い状態です。その要因には、以下のような背景が考えられます。
第一に、気候変動の影響が農作物の生産適地に大きな制約を与えている可能性があります。イスラエルは半乾燥気候の地域が多く、水資源が限られているため、灌漑が必要なエンドウ豆の栽培に適しているとは言い難い状況が続いています。気温上昇や降雨の減少が、収量そのものの悪化につながったと考えられます。
第二に、地政学的背景や政策の影響も無視できません。この地域では土壌の劣化や農業収益性の低下が課題で、農作物の生産体系が他の作物、例えばオリーブや柑橘類などへ転換されてきた可能性があります。エンドウ豆は輸出市場における競争力が他の主要輸出作物に比べて低いとされており、農業生産者がコスト効率の高い作物に集中せざるを得なかったことが示唆されます。
第三に、災害や紛争などの影響も考慮すべきです。2014年以降、地域的な不安定さや新型コロナウイルス感染症の影響が農産物の流通や生産にも影響を与えているかもしれません。また、組織的な農業技術支援の不足がさらなる生産低迷を引き起こしている可能性もあります。
解決策のために考えられるアプローチとして、水資源管理の革新が挙げられます。高度な灌漑技術の導入や収量を最大化する農作物の品種改良は、イスラエルの農業にとって必須の課題です。また、環境的持続可能性を考慮した新しい政策枠組みが検討されるべきでしょう。地域間協力を通じて農業技術を共有する、あるいは気候変動に対応した作物の多様化に向けた国家的支援が不可欠です。
さらには、エンドウ豆のような限られた市場需要の作物に焦点を当てるのではなく、イスラエルの農業全体の競争力強化を図る包括的な戦略が求められます。これには、地域内外の市場分析、農業省による資金援助、教育プログラムの展開など、幅広い施策が含まれます。
このデータから得られる結論は、多角的な課題を抱えるイスラエルの農業セクターがエンドウ豆生産の復興を遂げるには、環境技術や政策介入が欠かせないということです。農業が地元住民にとって依然として重要な経済基盤であるため、持続可能な生産拡大と地域全体の協力による安定した生態系構築が、今後求められる対策といえます。