国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、イスラエルのほうれん草生産量は1961年以降大きな増減を繰り返してきました。特に1960年代後半から1990年代後半までは比較的安定した増加傾向が見られましたが、2008年以降から急激な減少が確認されています。この傾向は依然として続いており、2022年の生産量は293トンと、2007年のピーク時(1,971トン)に比べて約85%も減少しています。
イスラエルのほうれん草生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 236 |
-19.45% ↓
|
2022年 | 293 |
19.11% ↑
|
2021年 | 246 |
-15.46% ↓
|
2020年 | 291 |
-29.71% ↓
|
2019年 | 414 |
93.46% ↑
|
2018年 | 214 |
-19.55% ↓
|
2017年 | 266 |
-27.12% ↓
|
2016年 | 365 |
192% ↑
|
2015年 | 125 |
-34.55% ↓
|
2014年 | 191 |
80.19% ↑
|
2013年 | 106 |
-7.02% ↓
|
2012年 | 114 |
-20.83% ↓
|
2011年 | 144 |
6.67% ↑
|
2010年 | 135 |
-67.7% ↓
|
2009年 | 418 |
-11.44% ↓
|
2008年 | 472 |
-76.05% ↓
|
2007年 | 1,971 |
0.36% ↑
|
2006年 | 1,964 |
5.03% ↑
|
2005年 | 1,870 |
2.19% ↑
|
2004年 | 1,830 |
-1.08% ↓
|
2003年 | 1,850 |
-3.39% ↓
|
2002年 | 1,915 |
14.6% ↑
|
2001年 | 1,671 |
13.83% ↑
|
2000年 | 1,468 |
-18.44% ↓
|
1999年 | 1,800 | - |
1998年 | 1,800 |
5.88% ↑
|
1997年 | 1,700 |
2.72% ↑
|
1996年 | 1,655 |
14.14% ↑
|
1995年 | 1,450 |
-3.33% ↓
|
1994年 | 1,500 | - |
1993年 | 1,500 |
52.75% ↑
|
1992年 | 982 |
8.39% ↑
|
1991年 | 906 |
5.96% ↑
|
1990年 | 855 |
0.83% ↑
|
1989年 | 848 |
-27.83% ↓
|
1988年 | 1,175 |
15.2% ↑
|
1987年 | 1,020 |
20% ↑
|
1986年 | 850 |
-4.49% ↓
|
1985年 | 890 |
-18.35% ↓
|
1984年 | 1,090 |
29.76% ↑
|
1983年 | 840 |
-6.67% ↓
|
1982年 | 900 |
12.5% ↑
|
1981年 | 800 |
6.67% ↑
|
1980年 | 750 |
-11.76% ↓
|
1979年 | 850 |
-26.09% ↓
|
1978年 | 1,150 |
9.52% ↑
|
1977年 | 1,050 |
-19.23% ↓
|
1976年 | 1,300 |
18.18% ↑
|
1975年 | 1,100 |
22.22% ↑
|
1974年 | 900 |
-25% ↓
|
1973年 | 1,200 | - |
1972年 | 1,200 |
4.35% ↑
|
1971年 | 1,150 |
15% ↑
|
1970年 | 1,000 |
11.11% ↑
|
1969年 | 900 | - |
1968年 | 900 |
5.88% ↑
|
1967年 | 850 |
-32% ↓
|
1966年 | 1,250 |
48.1% ↑
|
1965年 | 844 |
23.03% ↑
|
1964年 | 686 |
-14.25% ↓
|
1963年 | 800 | - |
1962年 | 800 | - |
1961年 | 800 | - |
イスラエルのほうれん草生産量の推移を見ると、初期段階における生産量は1961年から約800トンで安定していました。その後、1970年代から1990年代にかけて徐々に増加し、最盛期とも言える1990年代末から2007年には年間生産量が1,800トンを超える水準に到達しました。この時期の増加要因としては、農業技術の進歩、農地の効率的利用、灌漑システムの整備が挙げられます。また、イスラエルは乾燥した気候が特徴ですが、ここに適応した農業技術の高度化は他国との比較においても顕著です。例えば、日本のほうれん草生産は安定しており、年平均生産量は現在も100万トン以上ですが、イスラエルの増加率は生産規模の小ささを考慮しても非常に独自性のある成長と言えます。
しかし、2008年に突如472トンに減少したことを皮切りに、その後も減少傾向が続いています。特に2012年以降の生産量は年間100~300トンの範囲に留まる低水準となっています。この急激な変化は、ほうれん草の栽培に必要な寒冷な気候条件をイスラエルの気候が満たすことが難しくなってきたことや、農業資源をより競争力の高い作物に集中させたことが影響していると考えられます。また、近年の地政学的リスクや気候変動も大きな要因となっています。これに対応する形で、耕地面積の再配分や農業生産の多様化への移行が進められている可能性が示唆されます。
さらに、イスラエルでは水資源の確保が農業全体の大きな課題となっています。灌漑を支える貴重な水資源が他の高付加価値の作物に優先される傾向にあるため、低い市場価値の作物であるほうれん草の栽培が減少している可能性があります。また、2008年以降の世界経済危機や、その後の農業補助金政策の転換が栽培減少に寄与していることも考えられます。
現在のイスラエルのほうれん草生産量の低迷に対し、いくつかの対策を検討できます。まず、国内市場向けの需要を満たしながら輸出市場にも対応するため、高収量かつ耐暑性の品種を開発する取り組みが求められます。これにより、イスラエルの気候条件に適応した生産が可能となるでしょう。また、持続可能な農法の導入を推進し、水や土壌資源の負担を減らしながら生産量を増やすことにも注力すべきです。さらに、気候変動に対する国際的な協力や資金援助を得るための交渉も重要です。イスラエルの農業技術は世界的に高い評価を受けているため、この知識を活用することで新たな国際的パートナーシップを構築し、技術移転による生産性向上を目指すことが期待されます。
気候変動、地政学的リスク、資源管理の課題を克服するためには、イスラエルのみならず世界全体での長期的な視点が必要です。イスラエルがかつての生産規模を回復し、安定した供給を確保するためには、これまでに学んだ技術を今後さらに発展させ、他国との協力体制を築くことが不可欠であると言えます。