Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、イスラエルの小麦生産量は1960年代から2020年代にかけて大きな変動が見られます。1960年代には上昇傾向が一部みられるものの、その後生産量は不安定な推移を続け、21世紀に入ると減少傾向が顕著になっています。特に2017年から2022年の間で生産量が低迷しており、2022年時点では104,500トンと安定的な生産が課題となっています。
イスラエルの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 104,500 |
2021年 | 150,000 |
2020年 | 116,691 |
2019年 | 84,750 |
2018年 | 70,500 |
2017年 | 72,200 |
2016年 | 168,000 |
2015年 | 173,000 |
2014年 | 139,800 |
2013年 | 178,200 |
2012年 | 222,487 |
2011年 | 141,866 |
2010年 | 112,324 |
2009年 | 132,963 |
2008年 | 75,734 |
2007年 | 158,921 |
2006年 | 131,200 |
2005年 | 200,800 |
2004年 | 154,300 |
2003年 | 184,300 |
2002年 | 177,275 |
2001年 | 157,970 |
2000年 | 94,000 |
1999年 | 29,000 |
1998年 | 155,000 |
1997年 | 116,000 |
1996年 | 185,000 |
1995年 | 242,000 |
1994年 | 103,230 |
1993年 | 217,000 |
1992年 | 254,100 |
1991年 | 180,000 |
1990年 | 291,200 |
1989年 | 201,700 |
1988年 | 211,000 |
1987年 | 298,000 |
1986年 | 168,500 |
1985年 | 127,700 |
1984年 | 130,000 |
1983年 | 335,000 |
1982年 | 147,000 |
1981年 | 215,000 |
1980年 | 253,200 |
1979年 | 133,200 |
1978年 | 167,000 |
1977年 | 220,000 |
1976年 | 205,500 |
1975年 | 243,300 |
1974年 | 274,000 |
1973年 | 241,500 |
1972年 | 301,400 |
1971年 | 199,500 |
1970年 | 125,000 |
1969年 | 155,800 |
1968年 | 175,000 |
1967年 | 221,600 |
1966年 | 100,600 |
1965年 | 150,000 |
1964年 | 126,500 |
1963年 | 54,700 |
1962年 | 51,700 |
1961年 | 65,900 |
イスラエルの小麦生産量の推移データを見ると、1960年代から断続的な増減が続き、時折生産量が非常に高い年と非常に低い年が交互に現れる傾向があります。例えば1961年の生産量は65,900トンであったのに対し、1972年には301,400トンと約4.5倍に増加しています。しかし、この後再び生産量が低下し、経年的な変動幅が非常に大きいという特徴があります。
地中海性気候に位置するイスラエルでは、降雨量の不規則性が農業生産に大きな影響を与えていると考えられます。加えて、技術革新や農業政策の変化なども生産量に寄与しています。その一方で、21世紀に入り特に2010年以降は生産量が右肩下がりに転じる傾向が強まっています。2017年には72,200トン、そして2018年には70,500トンと過去最低水準に近い値を示したことは、大きな課題の一つとして挙げられます。
この減少傾向は地政学的リスクや環境的要因とも無縁ではありません。例えば中東地域特有の水資源の奪い合いは農業生産に甚大な影響を与える可能性があります。また、イスラエルでは近年、都市化と人口増加の進行により農地面積が縮小していることが指摘されています。このことが、小麦栽培を含む伝統的な農作物生産を制約する一因となっています。
他国と比較すると、イスラエルの小麦生産量は日本や韓国と同様に国内需要を常に満たすレベルには達しておらず、多くを輸入に依存しています。一方でインドやアメリカ、中国といった主要小麦生産国では、灌漑や栽培技術の高度化を通じて比較的安定的な生産を実現しています。例えばアメリカでは、生産量は2億トンを超える年もあり、穀物輸出国としての地位を確立しています。
同時に、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延やウクライナ危機がグローバルな穀物供給網に大きな影響を与えたことも忘れてはなりません。このような状況下では、イスラエルが国内での食品生産力を高める努力が求められるでしょう。例えば最先端の農業技術を適用し、砂漠環境下でも生産可能な効率的な品種開発や、水の再利用を可能にする新たな灌漑技術の導入が具体策として挙げられます。
また、国内の消費需要を補うためには輸入や地域間連携の強化が重要となります。中近東地域において農業協力の枠組みを構築し、気象データ共有や食糧貯蔵施設の共用などの国際協力も効果的です。さらに、国内農家への財政支援や技術指導の充実化により、小規模生産者が不利な市場条件でも持続的に生産を続けられるよう支援する必要があります。
結論として、イスラエルが直面している小麦生産量の課題は、経済的・環境的、さらに地政学的要因が複合的に絡み合った問題です。この複雑な課題に対処するためには、長期的視点に立った政策立案と、地域および国際社会との連携が欠かせません。