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イスラエルの小麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、イスラエルの小麦生産量は1960年代から2020年代にかけて大きな変動が見られます。1960年代には上昇傾向が一部みられるものの、その後生産量は不安定な推移を続け、21世紀に入ると減少傾向が顕著になっています。特に2017年から2022年の間で生産量が低迷しており、2022年時点では104,500トンと安定的な生産が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 136,000
30.14% ↑
2022年 104,500
-30.33% ↓
2021年 150,000
28.54% ↑
2020年 116,691
37.69% ↑
2019年 84,750
20.21% ↑
2018年 70,500
-2.35% ↓
2017年 72,200
-57.02% ↓
2016年 168,000
-2.89% ↓
2015年 173,000
23.75% ↑
2014年 139,800
-21.55% ↓
2013年 178,200
-19.91% ↓
2012年 222,487
56.83% ↑
2011年 141,866
26.3% ↑
2010年 112,324
-15.52% ↓
2009年 132,963
75.57% ↑
2008年 75,734
-52.34% ↓
2007年 158,921
21.13% ↑
2006年 131,200
-34.66% ↓
2005年 200,800
30.14% ↑
2004年 154,300
-16.28% ↓
2003年 184,300
3.96% ↑
2002年 177,275
12.22% ↑
2001年 157,970
68.05% ↑
2000年 94,000
224.14% ↑
1999年 29,000
-81.29% ↓
1998年 155,000
33.62% ↑
1997年 116,000
-37.3% ↓
1996年 185,000
-23.55% ↓
1995年 242,000
134.43% ↑
1994年 103,230
-52.43% ↓
1993年 217,000
-14.6% ↓
1992年 254,100
41.17% ↑
1991年 180,000
-38.19% ↓
1990年 291,200
44.37% ↑
1989年 201,700
-4.41% ↓
1988年 211,000
-29.19% ↓
1987年 298,000
76.85% ↑
1986年 168,500
31.95% ↑
1985年 127,700
-1.77% ↓
1984年 130,000
-61.19% ↓
1983年 335,000
127.89% ↑
1982年 147,000
-31.63% ↓
1981年 215,000
-15.09% ↓
1980年 253,200
90.09% ↑
1979年 133,200
-20.24% ↓
1978年 167,000
-24.09% ↓
1977年 220,000
7.06% ↑
1976年 205,500
-15.54% ↓
1975年 243,300
-11.2% ↓
1974年 274,000
13.46% ↑
1973年 241,500
-19.87% ↓
1972年 301,400
51.08% ↑
1971年 199,500
59.6% ↑
1970年 125,000
-19.77% ↓
1969年 155,800
-10.97% ↓
1968年 175,000
-21.03% ↓
1967年 221,600
120.28% ↑
1966年 100,600
-32.93% ↓
1965年 150,000
18.58% ↑
1964年 126,500
131.26% ↑
1963年 54,700
5.8% ↑
1962年 51,700
-21.55% ↓
1961年 65,900 -

イスラエルの小麦生産量の推移データを見ると、1960年代から断続的な増減が続き、時折生産量が非常に高い年と非常に低い年が交互に現れる傾向があります。例えば1961年の生産量は65,900トンであったのに対し、1972年には301,400トンと約4.5倍に増加しています。しかし、この後再び生産量が低下し、経年的な変動幅が非常に大きいという特徴があります。

地中海性気候に位置するイスラエルでは、降雨量の不規則性が農業生産に大きな影響を与えていると考えられます。加えて、技術革新や農業政策の変化なども生産量に寄与しています。その一方で、21世紀に入り特に2010年以降は生産量が右肩下がりに転じる傾向が強まっています。2017年には72,200トン、そして2018年には70,500トンと過去最低水準に近い値を示したことは、大きな課題の一つとして挙げられます。

この減少傾向は地政学的リスクや環境的要因とも無縁ではありません。例えば中東地域特有の水資源の奪い合いは農業生産に甚大な影響を与える可能性があります。また、イスラエルでは近年、都市化と人口増加の進行により農地面積が縮小していることが指摘されています。このことが、小麦栽培を含む伝統的な農作物生産を制約する一因となっています。

他国と比較すると、イスラエルの小麦生産量は日本や韓国と同様に国内需要を常に満たすレベルには達しておらず、多くを輸入に依存しています。一方でインドやアメリカ、中国といった主要小麦生産国では、灌漑や栽培技術の高度化を通じて比較的安定的な生産を実現しています。例えばアメリカでは、生産量は2億トンを超える年もあり、穀物輸出国としての地位を確立しています。

同時に、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延やウクライナ危機がグローバルな穀物供給網に大きな影響を与えたことも忘れてはなりません。このような状況下では、イスラエルが国内での食品生産力を高める努力が求められるでしょう。例えば最先端の農業技術を適用し、砂漠環境下でも生産可能な効率的な品種開発や、水の再利用を可能にする新たな灌漑技術の導入が具体策として挙げられます。

また、国内の消費需要を補うためには輸入や地域間連携の強化が重要となります。中近東地域において農業協力の枠組みを構築し、気象データ共有や食糧貯蔵施設の共用などの国際協力も効果的です。さらに、国内農家への財政支援や技術指導の充実化により、小規模生産者が不利な市場条件でも持続的に生産を続けられるよう支援する必要があります。

結論として、イスラエルが直面している小麦生産量の課題は、経済的・環境的、さらに地政学的要因が複合的に絡み合った問題です。この複雑な課題に対処するためには、長期的視点に立った政策立案と、地域および国際社会との連携が欠かせません。