国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、シエラレオネの落花生生産量は1961年以降大きく変動しています。特に2000年代以降は飛躍的に上昇し、2021年には過去最高の121,531トンを記録しました。一方、生産量は安定せず、2023年には88,608トンと減少するなど、年によるばらつきが目立ちます。この長期的な推移の背景には、農業政策、天候や地政学的要因が絡んでいると考えられます。
シエラレオネの落花生生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 88,608 |
-17.96% ↓
|
2022年 | 108,007 |
-11.13% ↓
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2021年 | 121,531 |
106.64% ↑
|
2020年 | 58,814 |
-44.72% ↓
|
2019年 | 106,396 |
415.63% ↑
|
2018年 | 20,634 |
2.51% ↑
|
2017年 | 20,129 |
2.51% ↑
|
2016年 | 19,636 |
-68.29% ↓
|
2015年 | 61,914 |
-28.01% ↓
|
2014年 | 86,000 |
-0.51% ↓
|
2013年 | 86,443 |
2% ↑
|
2012年 | 84,748 |
2.02% ↑
|
2011年 | 83,068 |
1.98% ↑
|
2010年 | 81,457 |
16.29% ↑
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2009年 | 70,049 |
17.3% ↑
|
2008年 | 59,720 |
3.95% ↑
|
2007年 | 57,448 |
-50.13% ↓
|
2006年 | 115,200 |
10% ↑
|
2005年 | 104,730 |
14.93% ↑
|
2004年 | 91,128 |
29.26% ↑
|
2003年 | 70,500 |
20.72% ↑
|
2002年 | 58,400 |
94.67% ↑
|
2001年 | 30,000 |
104.03% ↑
|
2000年 | 14,704 |
-49.31% ↓
|
1999年 | 29,010 |
-18.05% ↓
|
1998年 | 35,400 |
-6.6% ↓
|
1997年 | 37,900 |
5.87% ↑
|
1996年 | 35,800 |
-3.76% ↓
|
1995年 | 37,200 |
-6.53% ↓
|
1994年 | 39,800 |
102.99% ↑
|
1993年 | 19,607 |
2.12% ↑
|
1992年 | 19,200 |
-9% ↓
|
1991年 | 21,100 |
4.98% ↑
|
1990年 | 20,100 | - |
1989年 | 20,100 |
7.49% ↑
|
1988年 | 18,700 |
-10.95% ↓
|
1987年 | 21,000 |
-18.92% ↓
|
1986年 | 25,900 |
90.44% ↑
|
1985年 | 13,600 |
-9.33% ↓
|
1984年 | 15,000 |
31.58% ↑
|
1983年 | 11,400 |
-24% ↓
|
1982年 | 15,000 |
50% ↑
|
1981年 | 10,000 | - |
1980年 | 10,000 |
-33.33% ↓
|
1979年 | 15,000 | - |
1978年 | 15,000 |
-1.96% ↓
|
1977年 | 15,300 | - |
1976年 | 15,300 |
2% ↑
|
1975年 | 15,000 | - |
1974年 | 15,000 |
3.45% ↑
|
1973年 | 14,500 |
2.84% ↑
|
1972年 | 14,100 |
-6.62% ↓
|
1971年 | 15,100 |
-26.7% ↓
|
1970年 | 20,600 |
-9.65% ↓
|
1969年 | 22,800 |
8.57% ↑
|
1968年 | 21,000 | - |
1967年 | 21,000 |
-1.41% ↓
|
1966年 | 21,300 |
-7.39% ↓
|
1965年 | 23,000 | - |
1964年 | 23,000 | - |
1963年 | 23,000 |
4.55% ↑
|
1962年 | 22,000 | - |
1961年 | 22,000 | - |
シエラレオネの落花生生産量の推移を振り返ると、1960年代から1970年代前半にかけては22,000トン前後で推移する安定期が見られましたが、1970年代後半から1980年代初頭にかけて大幅に減少しました。この減少は、主に内戦などの政治的不安定や農業インフラの脆弱性に起因していると考えられます。その後も1994年から顕著な回復が見られ、2000年代中盤には急速に生産量が増加しました。この急伸期には、国際援助機関や政府主導の農業振興政策が影響を及ぼした可能性が高いです。
特に2004年から2006年にかけての拡大(2004年の91,128トンから2006年の115,200トン)は、農業技術の向上や主要栽培地域での広範囲な再編成が行われた結果と見られます。ただし、2007年に57,448トンまで減少した点からもわかるように、この成長は持続可能ではなく、気候変動や市場の不安定性が大きく影響していることが示唆されます。
2021年には過去最高の121,531トンの生産量を記録しましたが、それ以降の2年間は再び減少傾向が見られ、2023年には88,608トンまで減少しました。この短期的な減少の要因には、疫病や気候変動の影響だけでなく、近隣諸国との地政学的摩擦や輸送インフラの不足が影響していると考えられます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックもまた、一時的に人員や物資の流れを制限し、農業にも波及的な悪影響を与えた可能性があります。
課題となる点の一つは、生産量の大きな年次変動に対応する長期的な農業政策の欠如です。他国と比較してみると、例えばインドや中国などでは大規模な灌漑システムを整備し安定した生産基盤を確立していますが、シエラレオネではそのようなインフラ投資が不十分であるため、生産が天候に依存する傾向が強くなっています。また、地政学的リスクの影響も大きく、内戦の経験を乗り越えたものの、近隣国との貿易紛争や資源の争奪が生産活動全体に影響を与えています。
シエラレオネの農業は地域経済において重要な位置を占めており、特に農村部では多くの家計が落花生の栽培に依存しています。そのため、持続可能な生産を実現するための対策が急務です。具体的には、気候変動に強い品種の研究開発、持続可能な土壌管理技術の導入、そして農業従事者への研修や技術支援が挙げられます。また、収穫後の保存技術を改善することで、収量の波に左右されることなく市場への安定供給を可能とする必要があります。
国際支援と地域協力もまた重要です。隣国と協力し共同市場を形成することで、価格の安定化を図り、農家の収入を保障することが可能になります。また、国際機関や非政府組織(NGO)との連携による長期的支援が、農業全体のインフラ改善を後押しします。
結論として、シエラレオネの落花生生産は過去数十年にわたり大きな変動を経験してきましたが、現状には改善すべき課題が多いと言えます。特に生産の安定性と持続可能性の確保が重要であり、これを達成するには国内外での多層的な協力と投資が求められます。長期的には食糧安全保障や農業の収益性向上に寄与する政策を実施することで、地域経済と農村社会全体の発展につながることが期待されます。