国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、シエラレオネのトマト生産量は1961年から2022年の間で大きな変動を見せてきました。1961年の8,000トンから1980年代半ばにかけて増加基調にあった生産量は、1990年代前半にピークである32,000トン(1995年)を記録しました。しかしその後の内戦や社会不安の影響で急激に生産量が減少し、特に2000年には12,000トンに落ち込みました。2007年にかけて部分的に回復を遂げたものの、その後はおおむね横ばいの推移を示しています。近年では2022年の20,188トンと、安定はしているものの1995年のピークには遠く及んでいません。
シエラレオネのトマト生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 19,734 |
-2.25% ↓
|
2022年 | 20,188 |
0.36% ↑
|
2021年 | 20,116 |
-0.5% ↓
|
2020年 | 20,217 |
-0.07% ↓
|
2019年 | 20,231 |
1.66% ↑
|
2018年 | 19,900 |
-3.02% ↓
|
2017年 | 20,519 |
1.21% ↑
|
2016年 | 20,273 |
7.91% ↑
|
2015年 | 18,787 |
-7.01% ↓
|
2014年 | 20,203 |
-7.45% ↓
|
2013年 | 21,828 |
-7.11% ↓
|
2012年 | 23,500 |
0.69% ↑
|
2011年 | 23,339 |
-1.48% ↓
|
2010年 | 23,691 |
-5.24% ↓
|
2009年 | 25,000 |
4.17% ↑
|
2008年 | 24,000 |
4.35% ↑
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2007年 | 23,000 |
27.78% ↑
|
2006年 | 18,000 |
-5.26% ↓
|
2005年 | 19,000 |
6.74% ↑
|
2004年 | 17,800 |
18.67% ↑
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2003年 | 15,000 |
7.14% ↑
|
2002年 | 14,000 |
7.69% ↑
|
2001年 | 13,000 |
8.33% ↑
|
2000年 | 12,000 |
-52% ↓
|
1999年 | 25,000 |
-2.31% ↓
|
1998年 | 25,590 |
-5.92% ↓
|
1997年 | 27,201 |
-2.99% ↓
|
1996年 | 28,040 |
-12.37% ↓
|
1995年 | 32,000 |
14.29% ↑
|
1994年 | 28,000 |
33.33% ↑
|
1993年 | 21,000 |
-8.54% ↓
|
1992年 | 22,961 |
-10.09% ↓
|
1991年 | 25,538 |
10.49% ↑
|
1990年 | 23,113 |
-0.38% ↓
|
1989年 | 23,200 |
4.98% ↑
|
1988年 | 22,100 |
5.24% ↑
|
1987年 | 21,000 |
5% ↑
|
1986年 | 20,000 |
5.26% ↑
|
1985年 | 19,000 |
11.76% ↑
|
1984年 | 17,000 |
-5.56% ↓
|
1983年 | 18,000 |
12.5% ↑
|
1982年 | 16,000 |
14.29% ↑
|
1981年 | 14,000 |
16.67% ↑
|
1980年 | 12,000 |
14.29% ↑
|
1979年 | 10,500 |
2.94% ↑
|
1978年 | 10,200 |
2% ↑
|
1977年 | 10,000 |
2.04% ↑
|
1976年 | 9,800 |
2.08% ↑
|
1975年 | 9,600 |
3.23% ↑
|
1974年 | 9,300 |
2.2% ↑
|
1973年 | 9,100 |
2.25% ↑
|
1972年 | 8,900 |
2.3% ↑
|
1971年 | 8,700 | - |
1970年 | 8,700 |
2.35% ↑
|
1969年 | 8,500 | - |
1968年 | 8,500 |
6.25% ↑
|
1967年 | 8,000 | - |
1966年 | 8,000 | - |
1965年 | 8,000 | - |
1964年 | 8,000 | - |
1963年 | 8,000 | - |
1962年 | 8,000 | - |
1961年 | 8,000 | - |
シエラレオネにおけるトマト生産の長期的な推移を振り返ると、1960年代から1980年代にかけての生産拡大は、農業の技術革新やトマトが地元市場での重要な食材として需要を拡大した背景を反映しています。この時期、国内の農業におけるトマトの位置付けは大きく向上し、1961年の8,000トンから1995年には32,000トンという飛躍的な増加が見られました。特に1980年代半ばの成長期は、農家の経済的な向上と地域経済を支えた象徴的な時期ともいえます。
しかし1990年代後半からの生産量の急激な減少は、シエラレオネが抱える地政学的リスクに根ざしています。この期間は国内の内戦(1991年~2002年)の影響が顕著であり、農業基盤の崩壊、農業労働力の減少、インフラの破壊によって多くの地域でトマトの生産が維持できなくなりました。1996年以降生産量は減少トレンドに入り、2000年の12,000トンという数字はまさにその最中の厳しい現実を示しています。
内戦終結後の2000年代には一定の回復が見られ、特に2007年までには23,000トンまで持ち直しました。それでも、完全な復興には至らず、その後の生産量はおおむね20,000トン前後で推移しています。2022年では20,188トンを記録し、2000年代後半以降の下限値には至っていませんが、依然として以前の最高値には遠く及んでいない状況です。
長期的に生産量が伸び悩んでいる背景には、農業インフラの脆弱さや自然災害、トマト栽培技術の向上が進んでいない点があります。また、気候変動による影響も顕著になりつつあり、降水量の不安定さや農業用水確保の問題が、生産性低下の一因と考えられます。これらは特に小規模農家に大きな打撃を与えていると推測されます。
未来に向けての課題と対策として、トマト生産の安定化と向上には多方面からのアプローチが求められます。第一に、農業インフラと物流ネットワークの強化は不可欠です。これには灌漑施設の整備や種子の品質改善が含まれます。第二に、農家を対象とした教育と訓練を強化し、効率的な栽培技術の普及を図る必要があります。さらに、国内市場を超えた輸出産業の開拓は、トマト生産の長期的な拡大を促進する可能性を秘めています。例として、近隣諸国との経済連携を活用すれば、余剰生産を有効活用する道が開けるでしょう。
国際協力機関や開発援助の役割も重要です。シエラレオネは今後、援助資金を農業セクターに振り向けるとともに、民間の投資を呼び込むための政策を推進する必要があります。また、気候変動に対処するための包括的な戦略を策定し、持続可能な農業を実現することも急務です。
結論として、シエラレオネのトマト生産量の推移は、同国の農業が経済・社会的状況や気候変動にいかに大きく影響を受けるかを物語っています。再びかつての好調な生産水準を取り戻し、それを維持するためには、基盤整備や教育、国際協力、そして持続可能性を考慮した政策が不可欠となるでしょう。この取り組みが成功すれば、農業はシエラレオネの経済と社会発展を支える柱となるかもしれません。