国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、2022年のシエラレオネの豚飼育数は241,784頭と推定されています。このデータからは、特に2000年以降、豚の飼育数が急増し、その後の変動が見られることが特徴的です。一方で、2000年以前の増加ペースは緩やかであり、内戦などの地政学的リスクや経済の変動が数値に大きく影響を与えたことがうかがえます。
シエラレオネの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 241,784 |
2021年 | 239,790 |
2020年 | 270,356 |
2019年 | 251,345 |
2018年 | 233,809 |
2017年 | 217,497 |
2016年 | 93,092 |
2015年 | 133,119 |
2014年 | 83,842 |
2013年 | 62,315 |
2012年 | 57,310 |
2011年 | 52,100 |
2010年 | 47,364 |
2009年 | 43,058 |
2008年 | 35,882 |
2007年 | 28,706 |
2006年 | 22,964 |
2005年 | 18,372 |
2004年 | 14,697 |
2003年 | 11,758 |
2002年 | 9,406 |
2001年 | 7,525 |
2000年 | 52,000 |
1999年 | 52,000 |
1998年 | 50,000 |
1997年 | 50,000 |
1996年 | 50,000 |
1995年 | 50,000 |
1994年 | 50,000 |
1993年 | 50,000 |
1992年 | 50,000 |
1991年 | 50,000 |
1990年 | 50,000 |
1989年 | 50,000 |
1988年 | 50,000 |
1987年 | 50,000 |
1986年 | 47,000 |
1985年 | 44,000 |
1984年 | 40,000 |
1983年 | 42,000 |
1982年 | 40,000 |
1981年 | 38,000 |
1980年 | 36,000 |
1979年 | 35,000 |
1978年 | 33,000 |
1977年 | 30,000 |
1976年 | 28,000 |
1975年 | 26,000 |
1974年 | 23,000 |
1973年 | 21,000 |
1972年 | 18,000 |
1971年 | 16,773 |
1970年 | 20,000 |
1969年 | 25,000 |
1968年 | 28,000 |
1967年 | 26,000 |
1966年 | 26,000 |
1965年 | 24,000 |
1964年 | 20,000 |
1963年 | 16,000 |
1962年 | 12,500 |
1961年 | 10,000 |
シエラレオネにおける豚の飼育数の変化は、同国の経済状況や社会的な安定性と密接に関連しています。特に、1960年代から1990年代中盤にかけては、全体的に徐々に増加していたものの、1990年代初頭から飼育数が50,000頭で停滞する傾向が見られます。これは内戦(1991年~2002年)による影響が大きかったと推測されます。内戦の最中、農業や畜産業の基盤が崩壊し、多くの農家が生計を維持することが困難になったため、豚の飼育数も停滞せざるを得なかったと考えられます。
2000年代に入り内戦が終結した後、飼育数の急激な回復が始まりました。具体的には、2001年から2005年にかけての成長率が顕著で、2000年の7,525頭から2005年には18,372頭に増加しています。この背景には、平和回復後に人々の生活再建が進み、農村部での畜産業が再び拡大したことが考えられます。また、国際機関や援助団体が提供した技術支援や資金援助が、農業・畜産業の再建を後押しした可能性があります。
2010年代にはさらに大幅な増加が見られ、2010年の47,364頭から2020年には270,356頭と約6倍に成長しています。この時期は、国内の安定化や地方経済の改善が目立ちますが、一方で2015年に見られる133,119頭から2016年の93,092頭への急減といった一時的な下降も観察できます。この変化の一因として、西アフリカで発生したエボラ出血熱の流行が挙げられます。エボラの流行は、畜産物の市場流通に混乱をもたらし、農業従事者の活性を低下させたと考えられます。
近年のデータを見ると、2017年以降の飼育数は20万頭を超える安定した水準に達していますが、2021年の減少(239,790頭)や2022年の若干の回復(241,784頭)というように微細な変動が見られます。このような変動には、高熱を伴う豚コレラや豚熱などの病気が影響を与えた可能性もあるため、疾病管理や家畜の健康管理が非常に重要な課題となっています。
さらに、豚の飼育数が増加した背景には、人々の食生活の変化も影響している可能性があります。シエラレオネの伝統的な食文化では豚肉が重視されることは少なかったものの、近年では都市化や所得の増加とともに需要が高まっていることが推測されます。また、輸出の可能性も視野に入った飼育が一部で行われている可能性が考えられます。
今後、豚の飼育数が安定的に増加し続けるためには、家畜の健康管理や疾病予防体制の強化が欠かせません。特に、地域の獣医サービスの拡充や国際支援によるワクチン接種プログラムの導入が効果的であると考えられます。また、生産インフラの整備だけでなく、地域農家に対して飼料供給や養豚技術のトレーニングを提供することも重要です。これらの取り組みは、地元経済の自立化や持続可能な畜産業の発展に寄与するでしょう。
さらに、シエラレオネ政府や国際機関が連携し、輸出市場における豚肉の競争力を高めるための品質管理やマーケティング支援を行うことも望まれます。地政学的リスクや気候変動による自然災害への備えを十分に行いながら、国全体としての食料安全保障を強化することが求められます。
このように、シエラレオネの豚飼育数の推移は、一国の歴史的、社会的、経済的事情が深く反映されています。将来的には、持続可能な農業・畜産業の発展を実現し、地域経済の安定化と国民の福祉向上を目指していくことが期待されます。