Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月更新の最新データによると、スリナムのパイナップル生産は、過去数十年間で顕著な成長を遂げています。特に2020年代に入ってから生産量が急増し、2023年には4,672トンを記録しました。この推移を見ると、1960年代からゆるやかな増加が見られたものの、1970年代には大きな低迷があり、その後も波を伴いながら回復してきたことがわかります。21世紀に入り、生産量は徐々に安定し、2016年以降急激な増加が見られるようになりました。
スリナムのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 4,672 |
11.63% ↑
|
2022年 | 4,185 |
9.35% ↑
|
2021年 | 3,827 |
0.84% ↑
|
2020年 | 3,795 |
-2.67% ↓
|
2019年 | 3,899 |
8.97% ↑
|
2018年 | 3,578 |
-2.16% ↓
|
2017年 | 3,657 |
208.87% ↑
|
2016年 | 1,184 |
11.8% ↑
|
2015年 | 1,059 |
-4.51% ↓
|
2014年 | 1,109 |
156.71% ↑
|
2013年 | 432 |
28.57% ↑
|
2012年 | 336 |
-4% ↓
|
2011年 | 350 |
-17.65% ↓
|
2010年 | 425 |
41.67% ↑
|
2009年 | 300 | - |
2008年 | 300 |
-20% ↓
|
2007年 | 375 |
11.61% ↑
|
2006年 | 336 |
-20.94% ↓
|
2005年 | 425 |
18.06% ↑
|
2004年 | 360 |
-4% ↓
|
2003年 | 375 |
29.31% ↑
|
2002年 | 290 |
-22.67% ↓
|
2001年 | 375 |
4.17% ↑
|
2000年 | 360 |
2.86% ↑
|
1999年 | 350 |
-17.65% ↓
|
1998年 | 425 |
13.33% ↑
|
1997年 | 375 |
-19.35% ↓
|
1996年 | 465 |
17.72% ↑
|
1995年 | 395 |
23.44% ↑
|
1994年 | 320 |
-11.6% ↓
|
1993年 | 362 |
60.18% ↑
|
1992年 | 226 |
-37.22% ↓
|
1991年 | 360 |
41.18% ↑
|
1990年 | 255 |
18.06% ↑
|
1989年 | 216 |
-70.97% ↓
|
1988年 | 744 |
-10.9% ↓
|
1987年 | 835 |
1888.1% ↑
|
1986年 | 42 |
-73.58% ↓
|
1985年 | 159 |
72.83% ↑
|
1984年 | 92 |
-32.85% ↓
|
1983年 | 137 |
-51.59% ↓
|
1982年 | 283 |
379.66% ↑
|
1981年 | 59 |
18% ↑
|
1980年 | 50 |
25% ↑
|
1979年 | 40 |
33.33% ↑
|
1978年 | 30 |
25% ↑
|
1977年 | 24 |
20% ↑
|
1976年 | 20 |
-20% ↓
|
1975年 | 25 |
38.89% ↑
|
1974年 | 18 |
-35.71% ↓
|
1973年 | 28 |
-67.06% ↓
|
1972年 | 85 |
-5.56% ↓
|
1971年 | 90 |
26.76% ↑
|
1970年 | 71 |
-56.97% ↓
|
1969年 | 165 |
26.92% ↑
|
1968年 | 130 |
8.33% ↑
|
1967年 | 120 |
9.09% ↑
|
1966年 | 110 |
10% ↑
|
1965年 | 100 |
11.11% ↑
|
1964年 | 90 |
12.5% ↑
|
1963年 | 80 |
14.29% ↑
|
1962年 | 70 |
16.67% ↑
|
1961年 | 60 | - |
スリナムのパイナップル生産量の推移データは、国の農業生産の発展とともにその変遷を如実に示しています。1960年代には、年間60~165トンという小規模な生産が行われていましたが、1970年代には生産量の急下降が観測され、特に1973年には28トン、1974年には18トンまで落ち込みました。この時期の低迷は、恐らく農業インフラや経済状況の課題が影響したと考えられます。地政学的には、この時期スリナムは独立を控えた変革期にあり、社会的、経済的な不安定要因が影響したと推察されます。
1980年代に入ると、年283トン(1982年)、835トン(1987年)という数値に見られるように、生産量は改善傾向を示しました。この時期にスリナム政府が農業振興政策を強化し、国内の自給自足を重視する動きがあったことが背景にある可能性があります。しかし、その後も1990年代には生産量の増減が続き、安定的な成長が見られるようになったのは1996年以降です。この時点で年間400トン台を超えるような水準を維持し始めました。
特筆すべきは、2016年以降の急激な飛躍です。特に2017年以降、3,000トン台に急上昇し、2023年には4,672トンに到達しました。このような急激な増加は、貿易自由化や国際市場向けの輸出体制の強化、技術革新による農業効率の向上、さらには国内外からの投資誘致の成功が反映されている可能性があります。また、スリナムの比較的温暖で湿潤な気候はパイナップル栽培に適しており、地理的な優位性もその成長に寄与していると考えられます。
しかし、この大幅な生産増加にもいくつかの課題が含まれています。まず、生産の持続可能性が問われます。気候変動の影響により、極端な天候や土壌質の劣化が進むリスクが考えられます。例えば、乾季の長期化は農作物に深刻な打撃を与える可能性があります。また、急激な生産拡大に伴う土地利用の増加は、環境保全の視点で見直しが必要となるでしょう。
さらに、国際市場の競争も無視できません。スリナムのパイナップルが世界の他の主要産地(例:フィリピンやコスタリカ)の生産に比べて依然として規模が小さいことを考慮すると、競争力向上のためには品質管理やブランディング戦略の強化が必要です。加えて、自然災害のリスクもあり、洪水や熱帯性暴風雨による被害を最小限に抑えるための農業インフラ整備と早期警戒システムの導入が重要です。
これらの課題に対応するため、いくつかの具体的な提案が考えられます。まず、持続可能な農業を推進するために、気候適応型栽培技術を導入し、水資源管理を強化することが求められます。また、小規模農家への技術支援や融資制度の拡充は、生産能力の底上げにつながるでしょう。国際市場向けには、有機栽培やフェアトレード認証を取得し、高付加価値化を図ることをお勧めします。
結論として、スリナムのパイナップル生産の急成長は地域経済にとって非常に有望な兆候を示しています。しかし、その成長を持続的なものとするためには、農業インフラや気候変動への対応策、国際市場における競争力の強化が欠かせません。政府や国際機関はこの分野に資源を投入し、スリナムが世界的なパイナップル生産地としての地位を確立するための足がかりを築くべきです。