国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、スリナムのココナッツ生産量は1961年の5,756トンから2023年の1,329トンまで、大きな変動を経て減少傾向にあります。特に2023年は大きな落ち込みを記録しており、最盛期であった1991年の12,086トンや2016年の14,672トンと比較して大幅な減少を示しています。この長期的な推移は、気候条件、農業政策、災害などいくつかの要因が絡んだ結果と考えられます。
スリナムのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,329 |
-81.86% ↓
|
2022年 | 7,327 |
-21.62% ↓
|
2021年 | 9,348 |
-34.74% ↓
|
2020年 | 14,325 |
1.82% ↑
|
2019年 | 14,069 |
-3.47% ↓
|
2018年 | 14,574 |
3.57% ↑
|
2017年 | 14,072 |
-4.09% ↓
|
2016年 | 14,672 |
15.63% ↑
|
2015年 | 12,689 |
-1.48% ↓
|
2014年 | 12,880 |
19.41% ↑
|
2013年 | 10,786 |
163.72% ↑
|
2012年 | 4,090 |
-6.81% ↓
|
2011年 | 4,389 |
-49.6% ↓
|
2010年 | 8,709 |
-3.38% ↓
|
2009年 | 9,014 |
5.95% ↑
|
2008年 | 8,508 |
19.56% ↑
|
2007年 | 7,116 |
43.15% ↑
|
2006年 | 4,971 |
-3.36% ↓
|
2005年 | 5,144 |
-16.18% ↓
|
2004年 | 6,137 |
-40.26% ↓
|
2003年 | 10,273 |
2.39% ↑
|
2002年 | 10,033 |
24.54% ↑
|
2001年 | 8,056 |
-5.41% ↓
|
2000年 | 8,517 |
-4.67% ↓
|
1999年 | 8,934 |
-2.74% ↓
|
1998年 | 9,186 |
-2.63% ↓
|
1997年 | 9,434 |
-3.57% ↓
|
1996年 | 9,783 |
-5.52% ↓
|
1995年 | 10,355 |
-4.97% ↓
|
1994年 | 10,896 |
-7.36% ↓
|
1993年 | 11,762 |
23.52% ↑
|
1992年 | 9,522 |
-21.21% ↓
|
1991年 | 12,086 |
10.31% ↑
|
1990年 | 10,956 |
-2.79% ↓
|
1989年 | 11,270 |
29.57% ↑
|
1988年 | 8,698 |
-14.14% ↓
|
1987年 | 10,130 |
18.92% ↑
|
1986年 | 8,518 |
22.47% ↑
|
1985年 | 6,955 |
2.7% ↑
|
1984年 | 6,772 |
0.28% ↑
|
1983年 | 6,753 |
-5.91% ↓
|
1982年 | 7,177 |
9.99% ↑
|
1981年 | 6,525 |
19.09% ↑
|
1980年 | 5,479 |
-2.96% ↓
|
1979年 | 5,646 |
25.05% ↑
|
1978年 | 4,515 |
2.61% ↑
|
1977年 | 4,400 | - |
1976年 | 4,400 |
-0.45% ↓
|
1975年 | 4,420 |
-7.92% ↓
|
1974年 | 4,800 |
-21.05% ↓
|
1973年 | 6,080 |
7.04% ↑
|
1972年 | 5,680 |
-1.8% ↓
|
1971年 | 5,784 |
-4.51% ↓
|
1970年 | 6,057 |
2.38% ↑
|
1969年 | 5,916 |
-9.49% ↓
|
1968年 | 6,536 |
2.82% ↑
|
1967年 | 6,357 |
11.6% ↑
|
1966年 | 5,696 |
9.9% ↑
|
1965年 | 5,183 |
1.97% ↑
|
1964年 | 5,083 |
-13.05% ↓
|
1963年 | 5,846 |
11.06% ↑
|
1962年 | 5,264 |
-8.55% ↓
|
1961年 | 5,756 | - |
スリナムのココナッツ生産の推移を見てみると、年ごとの変化がはっきりと表れています。1960年代から1970年代までは、ほぼ安定した年間5,000から6,000トン台が続いていましたが、1974年には4,800トンまで減少、その後も減少傾向が続きました。しかし1980年代に入ると一時的に生産量が増加し、1991年には12,086トンというピークを迎えました。この増加は、当時の政府の農業政策の変化や農業生産性向上を目的とした技術導入が寄与した可能性があります。
1990年代以降は上下動を繰り返しながら、2000年代中頃に急激な減少が見られます。特に2004年以降の持続的な低迷は顕著であり、この時期の気候変動や国際市場における価格変動が影響を及ぼしたと考えられます。その後、2010年代には一時的に盛り返したものの、2020年代に入ってから再び大幅な減少傾向が現れ、2023年には1,329トンという過去最低の数値を記録しています。
この急激な減少の背景には、いくつかの理由が考えられます。まず第一に、スリナムの地政学的リスクや経済的状況が影響を与えています。農業従事者の減少や若年層の都市部への移動が進み、生産に必要な労働力が不足している可能性があります。また、気候変動の影響も重要な要因です。近年、スリナムでは極端な気候変動が報告されており、特に洪水や干ばつが農業に深刻なダメージを与えています。
さらに、新型コロナウイルスのパンデミックもココナッツ生産に影響を与えた可能性があります。ロックダウンや物流の混乱は、農業資材の調達や販売経路に制限をかけ、結果的に生産能力を低下させたと言えます。また、国際的なココナッツ需要の変動や輸出市場の不安定さも、スリナムのココナッツ農業において不利な条件となっています。
この現状を踏まえると、スリナムにはいくつかの課題があります。一つ目は、気候変動に対応した農業技術の導入です。耐旱性や耐塩性に優れたココナッツの品種を開発し、導入することが急務です。二つ目は、農業労働力の確保です。農業分野における若者の労働参加を促し、小規模農場を維持するための支援制度を設ける必要があります。三つ目は、国際市場との連携強化です。輸出インフラを整備するとともに、スリナム産ココナッツを高品質商品として位置付けるマーケティング戦略を展開することで、持続可能な生産体制を構築するべきです。
最後に、地域間協力の強化も重要です。近隣諸国との共同プロジェクトや技術共有を通じて、生産効率を高めるとともに、サプライチェーンを強固にすることが将来的なリスク回避につながります。また、国際連合やFAOなどの国際機関からの技術協力をより積極的に活用することで、環境変化や社会経済的危機にも対応しやすくなるでしょう。
以上のように、スリナムのココナッツ生産は多面的な課題に直面していますが、適切な政策と技術開発、地域協力の強化により持続可能な成長が期待されます。具体的な対策を講じることで、この重要な産業は再び立ち直ることができるでしょう。