国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、スリナムの羊肉生産量は1961年の16トンから2023年の12トンまで推移しており、全体としては小規模な変動の中に減少傾向が見られます。1960年代から1990年代にかけては若干の増加が確認されましたが、2000年代以降は概ね減少しています。近年の2020年代では横ばいが続き、2023年には過去最低水準に近い生産量となっています。
スリナムの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 12 |
5.15% ↑
|
2022年 | 11 |
-14.85% ↓
|
2021年 | 13 | - |
2020年 | 13 | - |
2019年 | 13 | - |
2018年 | 13 |
-7.14% ↓
|
2017年 | 14 |
-6.67% ↓
|
2016年 | 15 |
25% ↑
|
2015年 | 12 | - |
2014年 | 12 |
-4.46% ↓
|
2013年 | 13 |
3.29% ↑
|
2012年 | 12 |
3.4% ↑
|
2011年 | 12 |
-34.08% ↓
|
2010年 | 18 |
-6.69% ↓
|
2009年 | 19 |
13.27% ↑
|
2008年 | 17 |
3.69% ↑
|
2007年 | 16 |
-13.77% ↓
|
2006年 | 19 |
-6.07% ↓
|
2005年 | 20 | - |
2004年 | 20 | - |
2003年 | 20 |
-9.95% ↓
|
2002年 | 22 |
-1.33% ↓
|
2001年 | 23 |
2.45% ↑
|
2000年 | 22 |
-30.57% ↓
|
1999年 | 32 |
6% ↑
|
1998年 | 30 | - |
1997年 | 30 |
-13.79% ↓
|
1996年 | 35 |
18.37% ↑
|
1995年 | 29 |
-2% ↓
|
1994年 | 30 |
-7.41% ↓
|
1993年 | 32 |
-10% ↓
|
1992年 | 36 | - |
1991年 | 36 |
-9.09% ↓
|
1990年 | 40 |
13.79% ↑
|
1989年 | 35 |
7.41% ↑
|
1988年 | 32 |
42.11% ↑
|
1987年 | 23 |
26.67% ↑
|
1986年 | 18 |
36.36% ↑
|
1985年 | 13 |
-8.33% ↓
|
1984年 | 14 |
33.33% ↑
|
1983年 | 11 |
-15.89% ↓
|
1982年 | 13 |
-20.15% ↓
|
1981年 | 16 |
34% ↑
|
1980年 | 12 |
53.85% ↑
|
1979年 | 8 |
-13.33% ↓
|
1978年 | 9 |
-45.65% ↓
|
1977年 | 17 |
-4.83% ↓
|
1976年 | 17 | - |
1975年 | 17 |
-2.03% ↓
|
1974年 | 18 |
28.7% ↑
|
1973年 | 14 |
15% ↑
|
1972年 | 12 |
-4.76% ↓
|
1971年 | 13 |
16.67% ↑
|
1970年 | 11 |
-10% ↓
|
1969年 | 12 |
-21.88% ↓
|
1968年 | 15 |
-1.54% ↓
|
1967年 | 16 |
1.56% ↑
|
1966年 | 15 |
2.4% ↑
|
1965年 | 15 |
-16.67% ↓
|
1964年 | 18 |
-10.18% ↓
|
1963年 | 20 |
4.38% ↑
|
1962年 | 19 |
18.52% ↑
|
1961年 | 16 | - |
スリナムの羊肉生産量の推移を振り返ると、この国における畜産業の小規模さと地域特性が浮き彫りになります。初期の1960年代には15~20トン程度と安定した水準を維持していましたが、1970年代後半と1980年代初頭に一時的な大きな増減を経験しています。1980年代後半から1990年にかけては急速に増加し、1990年には40トンの記録となりました。しかしその後、これを頂点として徐々に生産量は減少傾向に移行しました。21世紀に入ると、極端な変動は小さくなり、多くの場合10~20トンの間で推移しています。
500万人以上の人口を擁する周辺国であるブラジルやガイアナ、あるいは隣国フランス領ギアナと比較しても、スリナムの羊肉生産は非常に小規模です。これにはいくつかの要因が考えられます。地理的な要因として、スリナムは豊富な熱帯雨林を抱えており、家畜牧場に適した土地の割合が低いことが挙げられます。また、家畜生産のためのインフラ整備や技術革新が進みにくい環境にあることも影響していると考えられます。
さらに気候問題および地政学的課題が羊肉生産量に影響を与えている可能性も否定できません。例えば、気候変動による洪水や干ばつの影響で農地利用に制約がかかること、また地元市場での羊肉需要の低さが農家のモチベーションを削ぐ要因になっていると考えられます。これに加え、新型コロナウイルスの流行や物流網の制限が、2020年以降の生産量に横ばいの圧力をかけているとも推測されます。
スリナムにおける羊肉生産の低迷を受け、いくつかの課題と対策が浮かび上がります。第一に、持続可能な畜産技術の普及が鍵を握ります。気候に対応した品種の導入や飼料供給改善を図ることで、生産効率を向上させることが可能です。第二に、市場の需要を喚起するための地域的な啓発活動が重要です。国内の需要が限られる中で、羊肉を地域外や海外市場に向けて輸出するための枠組み作りが必要となるでしょう。
また、観光業との連携や地域特産としての付加価値を高めることも一つの方向性です。スリナムは観光資源が豊富な国であるため、伝統料理や地元文化に根ざした農産物として羊肉をプロモーションすることが期待されます。
結論として、スリナムの羊肉生産量の推移は、その地理的・経済的背景を反映していると言えます。今後、国として持続可能な農業政策を整備し、環境保護との共存を図りながら畜産分野の潜在能力を引き出す必要があります。このためには、国際的な技術協力や投資を通じたインフラ改善が必須であり、地域間協力の枠組みを積極的に活用することが進むべき方向性と言えるでしょう。