Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、スリナムのパパイヤ生産量は1990年代から緩やかに増加しつつ、1999年や2005年などでは急激な減少も記録しています。2013年から2019年頃にかけて大幅な増加を見せたものの、2020年以降再び減少傾向が見られます。2023年には587トンと幾分回復していますが、過去のピーク時である2019年の854トンを下回っています。
スリナムのパパイヤ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 587 |
126.41% ↑
|
2022年 | 259 |
-34.4% ↓
|
2021年 | 395 |
-48.23% ↓
|
2020年 | 763 |
-10.66% ↓
|
2019年 | 854 |
5.43% ↑
|
2018年 | 810 |
8.72% ↑
|
2017年 | 745 |
4.49% ↑
|
2016年 | 713 |
-13.47% ↓
|
2015年 | 824 |
1.6% ↑
|
2014年 | 811 |
22.88% ↑
|
2013年 | 660 |
150% ↑
|
2012年 | 264 |
0.76% ↑
|
2011年 | 262 |
-24.28% ↓
|
2010年 | 346 |
-11.96% ↓
|
2009年 | 393 |
41.88% ↑
|
2008年 | 277 |
39.9% ↑
|
2007年 | 198 |
-12.78% ↓
|
2006年 | 227 |
59.86% ↑
|
2005年 | 142 |
-45.38% ↓
|
2004年 | 260 |
1.17% ↑
|
2003年 | 257 |
-18.41% ↓
|
2002年 | 315 |
30.71% ↑
|
2001年 | 241 |
46.06% ↑
|
2000年 | 165 |
18.71% ↑
|
1999年 | 139 |
-44.4% ↓
|
1998年 | 250 |
4.17% ↑
|
1997年 | 240 | - |
1996年 | 240 |
4.35% ↑
|
1995年 | 230 | - |
1994年 | 230 |
4.55% ↑
|
1993年 | 220 | - |
1992年 | 220 |
4.76% ↑
|
1991年 | 210 | - |
1990年 | 210 | - |
スリナムのパパイヤ生産量は四半世紀以上にわたり幾度かの変動を経て、近年では顕著な上昇と減少を繰り返していることがわかります。1990年代には年間210トンから250トン程度の規模で、安定的な生産が行われていました。しかし、1999年に139トンと生産量が半減近くまで落ち込んだ点は注目に値します。この減少の背景については、気候変動や病害虫の発生、農業インフラの脆弱性が影響した可能性が考えられます。
21世紀に入ると生産量はおおむね回復基調にありましたが、それでも2005年の142トンなど、断続的な減少が見られており、生産基盤が脆弱であることが推測されます。2009年から2015年にかけての急速な増加期は特筆すべき現象です。この期間、2009年の393トンから2015年の824トンまでほぼ倍増しており、農業生産技術の向上や外部資本による投資の可能性が考えられます。ただし、これと並行して病害や台風による影響、さらには地域的な気候リスクといった地政学的要因も無視できません。
2019年の854トンをピークにしてからは、世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)流行の影響も含めて生産量が再び下降しています。この流行が労働力確保や物流インフラにどのような影響を与えたのかの精査が必要ですが、2021年から2022年にかけて395トンから259トンと急激に減少した点は、特に注目すべきです。一方、2023年には587トンとある程度の回復を見せており、これは生産供給が安定化に向かいつつある兆候とも考えられます。
スリナムの今後の課題は、これらの変動を最小化し、安定した生産基盤を確立することです。災害対策を強化するためのインフラ整備や新たな栽培技術の導入が求められます。また、地理的特徴から輸送コストが高くなる可能性があるため、地域間や国際的な協力を推進し、物流課題の緩和も重要です。加えて、気候変動が農業生産に与える影響が大きいことから、気候に強い品種の開発や持続可能な農業手法の研究が不可欠と言えます。
同時に、スリナム国内だけでなく、他の熱帯の主要農業国との比較も興味深い点です。例えば、ブラジルやインドなどの大規模なパパイヤ生産国に比べると、スリナムの生産量は依然として小規模であり、グローバル市場での競争力向上が課題です。また、日本や韓国といった農業技術に注力している国々から技術の輸入を行うことで、効率的な生産体制を構築する可能性も考えられます。
これらを総合的に考慮すると、国際連合食糧農業機関や地域協力機関が主導する教育・技術支援プロジェクトが重要な役割を果たせるでしょう。スリナムの農業労働力に対する研修やパートナーシップの拡大を通じて、ポテンシャルを最大化する取り組みが肝要です。このような具体的な施策を講じることで、中長期的にはより持続可能な農業経営が実現できる可能性があります。スリナムが安定したパパイヤ生産国として位置づけられる未来を期待したいと思います。