ベナンのパイナップル生産量推移（1961年～2023年）

FAO（国際連合食糧農業機関）の提供データによると、ベナンのパイナップル生産量は1961年に2,000トンと控えめなスタートを見せましたが、その後、1980年代後半から急激に拡大し、2023年には477,428トンにまで増加しました。特に2000年代以降、パイナップル産業の飛躍的な成長が見られます。一方、数年単位で生産量の大幅な増減も確認され、これがベナンの農業政策や市場環境、天候条件に影響されている可能性を示唆しています。

ベナンは、西アフリカに位置する小国で、主に農業に依存する経済構造を持つ国です。この中でパイナップル産業は、特に近年において急速な発展を遂げています。データによれば、1960年代から1980年代半ばまでの間、パイナップル生産量はわずか3,000トン前後でほぼ横ばいの状態が続きました。しかし、1988年以降、急激な生産量の増加が見られ、一気に25,000トンを突破。以降も増産の動きが見られ、特に2009年には22万トンを超え、ついには2013年に約50万トンに迫る急成長を遂げました。

この急成長の背景には、政府の農業支援政策のほか、輸出市場を重視した生産体制の拡大があると考えられます。パイナップルは甘味が強く、国際市場でも人気が高いため、輸出ポテンシャルを持つ主要農産物の一つとされています。これに関連して、特にヨーロッパ市場など、ベナン産のパイナップルが歓迎されていることも背景にあります。一方、農業インフラの整備や栽培技術の向上も、この大きな生産量の拡大を支える重要な要因と考えられています。

しかし、生産量の推移を見ると、2000年代から2010年代にかけては急激な増減が頻繁に見られます。この変動は自然災害の影響や、農産物市場の価格変動、新型コロナウイルス感染症拡大による物流の停滞などとの相関が懸念されます。例えば、2014年から2015年にかけての生産量減少や、その後の2016年以降の緩やかな回復といった動きがその傾向を物語っています。

さらに、ベナンのような発展途上国では、気候変動も農業生産に大きな影響を与えるリスクの一つです。パイナップルは温暖で湿潤な気候を必要とする作物であり、干ばつや洪水といった極端な気象条件が発生することで、生産インフラへのダメージが避けられなくなる可能性もあります。また、土地利用の過度な拡大による土壌の劣化といった環境負荷や、農業技術や輸送施設の不足も課題として挙げられます。

これらの課題に対処するためには、いくつかの方策が考えられます。まず、安定的な生産基盤を整えるための農業インフラ投資を進めるべきです。例えば、灌漑設備や土壌改良プロジェクトへの資金提供が挙げられます。また、パイナップルの加工品開発や国内消費の拡大に向けたプロモーションを行い、国際市場への依存度を一部減らすことで、価格変動への耐性を高めることが必要です。

さらに、地政学的リスクを考慮した場合、ベナンが近隣国や国際的な農業団体と協力し、地域的な農業連携を模索することも重要です。他の西アフリカ諸国と協力して物流ネットワークを強化することで、輸出競争力を維持しつつ、気候変動への対応も効率的に進めることが可能となります。加えて、デジタル技術の活用も検討するべきです。特にAIや衛星データを用いた農業管理技術の導入で、生産量の予測精度を向上させたり、異常気象への対策を早期に講じたりすることができます。

結論として、ベナンのパイナップル産業はここ数十年間で大きな成長を遂げており、アフリカ全体の農業においても先駆的な役割を果たしています。ただし、その成長は常に波乱を伴っており、この不安定性への対応が求められています。持続可能な発展のために、国内外の協力体制を強化し、安定した農業基盤の構築と技術革新が急務といえるでしょう。