国際連合食糧農業機関が公表したデータによると、セーシェルのココナッツ生産量は、1960年代から1970年代にかけて最大4万トンを超える高い生産量が記録されましたが、その後減少傾向に転じました。1990年代からは年間約4,000トン前後で安定する形を見せ、2023年には5,755トンまで増加しました。一方で、長期的な推移をみると、現在の生産量は過去最高値の約7分の1にとどまっています。これらの推移から、セーシェルの農業政策や自然条件、経済環境の変化が大きく影響を与えてきたと考えられます。
セーシェルのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 5,755 |
21.02% ↑
|
2022年 | 4,756 |
-0.92% ↓
|
2021年 | 4,800 | - |
2020年 | 4,800 | - |
2019年 | 4,800 | - |
2018年 | 4,800 | - |
2017年 | 4,800 | - |
2016年 | 4,800 | - |
2015年 | 4,800 |
33.33% ↑
|
2014年 | 3,600 | - |
2013年 | 3,600 |
5.88% ↑
|
2012年 | 3,400 |
-20.93% ↓
|
2011年 | 4,300 |
-2.27% ↓
|
2010年 | 4,400 |
1% ↑
|
2009年 | 4,356 |
0.25% ↑
|
2008年 | 4,346 |
0.23% ↑
|
2007年 | 4,336 |
0.21% ↑
|
2006年 | 4,327 |
0.18% ↑
|
2005年 | 4,319 |
0.16% ↑
|
2004年 | 4,312 |
0.15% ↑
|
2003年 | 4,305 |
0.13% ↑
|
2002年 | 4,300 |
0.48% ↑
|
2001年 | 4,279 |
0.13% ↑
|
2000年 | 4,274 |
0.12% ↑
|
1999年 | 4,268 |
0.11% ↑
|
1998年 | 4,264 |
0.1% ↑
|
1997年 | 4,260 |
0.09% ↑
|
1996年 | 4,256 |
0.08% ↑
|
1995年 | 4,253 |
0.07% ↑
|
1994年 | 4,250 |
0.07% ↑
|
1993年 | 4,247 |
0.07% ↑
|
1992年 | 4,244 |
-1.31% ↓
|
1991年 | 4,300 |
-35.82% ↓
|
1990年 | 6,700 |
-4.29% ↓
|
1989年 | 7,000 |
-12.5% ↓
|
1988年 | 8,000 |
-20% ↓
|
1987年 | 10,000 |
-13.04% ↓
|
1986年 | 11,500 |
-14.81% ↓
|
1985年 | 13,500 |
-18.18% ↓
|
1984年 | 16,500 |
-21.43% ↓
|
1983年 | 21,000 |
16.67% ↑
|
1982年 | 18,000 |
-16.52% ↓
|
1981年 | 21,563 |
-0.22% ↓
|
1980年 | 21,610 |
-4.15% ↓
|
1979年 | 22,545 |
26.33% ↑
|
1978年 | 17,846 |
-7.98% ↓
|
1977年 | 19,394 |
9.69% ↑
|
1976年 | 17,681 |
-8.33% ↓
|
1975年 | 19,287 |
-1.46% ↓
|
1974年 | 19,573 |
-5.01% ↓
|
1973年 | 20,606 |
-4.52% ↓
|
1972年 | 21,582 |
-3.79% ↓
|
1971年 | 22,432 |
-17.98% ↓
|
1970年 | 27,350 |
-9.14% ↓
|
1969年 | 30,100 |
-16.62% ↓
|
1968年 | 36,100 |
-3.09% ↓
|
1967年 | 37,250 |
0.68% ↑
|
1966年 | 37,000 |
9.79% ↑
|
1965年 | 33,700 |
-20.71% ↓
|
1964年 | 42,500 |
30.77% ↑
|
1963年 | 32,500 |
-4.41% ↓
|
1962年 | 34,000 |
6.58% ↑
|
1961年 | 31,900 | - |
セーシェルでは、ココナッツ産業がかつて重要な経済活動の一環をなしており、特に1960年代には生産量が4万トンを上回る高水準を記録していました。当時、ココナッツは国内消費のみならず輸出用の商品作物としても位置づけられており、農業の中心的作物の一つでした。しかし、1970年代後半以降、世界の市場変動や石油危機、輸出需要の減少が影響を与え、ココナッツ生産量は一貫して減少しました。さらに1980年代から1990年代初頭には生産量が1万トンを下回る深刻な状態となりました。1990年代後半からは年間4,000トン前後という状態で推移し、この停滞傾向が21世紀初頭まで続きました。
このココナッツ生産量の下落には、いくつかの要因が付随していると考えられます。まず、セーシェルは主に観光業に依存した経済構造を持つ小国であり、農業の優先度が相対的に低下している点が挙げられます。その上、気候変動に伴う干ばつや熱帯性暴風などの影響はココナッツ栽培に悪影響を及ぼしてきたと推測されます。さらに、農業従事者の高齢化や都市部への人口流出も農地の維持管理を困難にする一因となりました。
一方で、2015年以降のデータではわずかながらも生産量の持ち直しが見られ、特に2023年には5,755トンと近年の最高値を記録していることが注目されます。この増加は、セーシェル政府による農業振興政策や持続可能な輸出戦略の一環として、ココナッツ産業の再活性化が進められている可能性を示唆しています。また、近年の観光業向けや地元消費需要の増加もこの回復を支えた要因と考えられます。
しかしながら、依然として今後の課題は多岐にわたります。第一に、気候変動の影響は今後も予測されており、特に長期的な干ばつや台風の頻発はココナッツ生産に甚大な被害を与える可能性があります。第二に、農業労働力不足による生産効率の低下が問題視されています。特に、若年層の農業離れが深刻であるため、農業教育や現代的な効率的生産技術の導入が急務となっています。最後に、輸出市場の競争激化も課題であり、セーシェル特有の小規模生産者による高付加価値商品の開発が鍵を握るでしょう。
未来に向けた提案としては、まず政府が国内外の気候変動対策の枠組みに積極的に参画し、気候に強いココナッツ品種の研究および導入を進めることが挙げられます。また、若年層の農業参加を促すため、観光業と連携した「アグリツーリズム」産業を構築し、ココナッツ農業を新たなビジネスチャンスとして再定義することが有効です。さらに、国際機関や地域経済協力体制と協力し、輸出先市場を多角的に拡大するための支援策にも力を入れるべきです。
結論として、セーシェルは過去の栄光を再び取り戻すために、持続可能な農業政策や広範な地域協力の構築が不可欠です。現状の回復傾向をさらに強固なものとするために、国際協力や農業イノベーションを積極的に導入し、ココナッツ生産の安定化と成長を目指すべきです。これにより、地元住民の生活水準向上や観光業とのシナジーを生むことが期待されます。