国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、セーシェルの牛飼養数は1961年には1,400頭でしたが、1980年代にピークを迎え、その後長期的な減少を経験しました。しかし近年では、2020年代に入ってから回復基調にあり、2022年には631頭に達しています。この推移はセーシェルの経済状況や自然条件、政策の影響を受けたものと考えられます。
セーシェルの牛飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(頭) | 増減率 |
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2023年 | 501 |
-20.6% ↓
|
2022年 | 631 |
5.17% ↑
|
2021年 | 600 |
20% ↑
|
2020年 | 500 |
17.92% ↑
|
2019年 | 424 |
17.13% ↑
|
2018年 | 362 |
24.83% ↑
|
2017年 | 290 |
7.41% ↑
|
2016年 | 270 | - |
2015年 | 270 |
-10% ↓
|
2014年 | 300 | - |
2013年 | 300 |
50% ↑
|
2012年 | 200 |
33.33% ↑
|
2011年 | 150 |
-55.88% ↓
|
2010年 | 340 |
-2.86% ↓
|
2009年 | 350 |
-33.96% ↓
|
2008年 | 530 |
-28.38% ↓
|
2007年 | 740 |
29.82% ↑
|
2006年 | 570 |
-32.94% ↓
|
2005年 | 850 |
-19.05% ↓
|
2004年 | 1,050 |
-16% ↓
|
2003年 | 1,250 |
-14.79% ↓
|
2002年 | 1,467 |
17.36% ↑
|
2001年 | 1,250 |
-16.67% ↓
|
2000年 | 1,500 |
-9.64% ↓
|
1999年 | 1,660 |
-10.27% ↓
|
1998年 | 1,850 |
-9.76% ↓
|
1997年 | 2,050 |
-6.82% ↓
|
1996年 | 2,200 |
-8.33% ↓
|
1995年 | 2,400 |
-9.43% ↓
|
1994年 | 2,650 |
-7.02% ↓
|
1993年 | 2,850 |
-5% ↓
|
1992年 | 3,000 |
-3.23% ↓
|
1991年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1990年 | 3,000 |
30.43% ↑
|
1989年 | 2,300 | - |
1988年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
1987年 | 2,200 | - |
1986年 | 2,200 |
4.76% ↑
|
1985年 | 2,100 |
16.67% ↑
|
1984年 | 1,800 |
-10% ↓
|
1983年 | 2,000 |
-13.04% ↓
|
1982年 | 2,300 |
-14.53% ↓
|
1981年 | 2,691 |
4.38% ↑
|
1980年 | 2,578 |
4.37% ↑
|
1979年 | 2,470 |
4.4% ↑
|
1978年 | 2,366 |
4.41% ↑
|
1977年 | 2,266 |
4.47% ↑
|
1976年 | 2,169 |
4.48% ↑
|
1975年 | 2,076 |
4.48% ↑
|
1974年 | 1,987 |
4.52% ↑
|
1973年 | 1,901 |
4.51% ↑
|
1972年 | 1,819 |
4.48% ↑
|
1971年 | 1,741 |
2.41% ↑
|
1970年 | 1,700 |
3.03% ↑
|
1969年 | 1,650 |
3.13% ↑
|
1968年 | 1,600 |
1.91% ↑
|
1967年 | 1,570 |
2.61% ↑
|
1966年 | 1,530 |
2% ↑
|
1965年 | 1,500 |
2.04% ↑
|
1964年 | 1,470 |
1.38% ↑
|
1963年 | 1,450 |
1.4% ↑
|
1962年 | 1,430 |
2.14% ↑
|
1961年 | 1,400 | - |
セーシェルにおける牛の飼養数の推移を見ると、初期段階にあたる1960年代から1970年代には増加が続き、特に1970年には1,700頭、1980年には2,578頭へと順調な伸びを見せました。この時期の増加は農業と畜産業が経済の重要な役割を担っていたことや、国内の食糧自給率を高めるために国民と政府が力を注いできた結果と考えられます。しかし、1980年代になると、1982年の2,300頭を境に急激な減少傾向が始まりました。この減少の背景には、観光業の成長による農業からの労働力の流出や、飼料供給の不足、さらには土地利用の変化などが影響した可能性が考えられます。
1990年代中盤から2000年にかけて、セーシェルの牛飼養数はさらに減少を続け、1994年には2,650頭だった頭数が、2000年には1,500頭にまで減少しました。その後も減少ペースは止まらず、2004年には1,050頭、2010年には340頭、そして2011年にはわずか150頭という危機的な状況に陥りました。この急激な減少の要因としては、外部輸入への依存度増加、畜産支援策の弱体化、そしてセーシェル特有の小規模な地理的条件と生態系の限界が考えられます。
しかし、2020年代に入ると牛飼養数はゆるやかに回復し始めました。具体的には2018年には362頭だった飼養数が、2020年には500頭、2022年には631頭と増加傾向を示しています。この回復には、香料や食品加工技術の向上、国内生産強化を意図した政策、そして地域コミュニティによる小規模農業復興の取り組みが寄与している可能性があります。また、新型コロナウイルスの影響で、食糧安全保障への重視が一時的に高まったことも、国内畜産業への再注目という形で反映されていると考えられます。
セーシェルの牛飼養数の推移は、人口増加や観光業の発展といった地政学的背景と密接につながっています。土地利用の優先順位が農業から観光業や都市開発へと移行する中で、畜産業の持続可能性が失われたことが、長期的な減少の根底にあると考えられます。また、島嶼国家としての限られた土地と資源が、この分野の拡大を阻む別の要因となっています。
セーシェルの畜産業を将来的に強化するには、いくつかの戦略が考えられます。たとえば、効率的な飼料供給システムの構築、地域間での協力体制の強化、小規模農家を対象とした技術訓練や融資支援の充実が必要です。さらに、気候変動の影響が農業全般に広がる中で、耐候性のある土地利用法や家畜管理技術を導入し、持続可能な畜産業を優先的に推進するべきです。また、地域食料生産を確保するために、国際的な支援や知識の共有が求められます。
データから得られる結論として、長期的な減少傾向から抜け出しつつあるとはいえ、セーシェルの牛飼養数の回復はまだ途上の段階にあります。この現状に対処するためには、国内政策の再設計と国際的な協力体制の併用が鍵となるでしょう。そして、観光業と畜産業が共存できるような土地利用のバランスを確保することが、セーシェル経済全体の安定化につながる重要なステップとなります。