国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、ベルギーにおける羊の飼養数は2000年の125,639匹から始まり、2022年には110,120匹となっています。全体の推移を見ると、2000年代初期は増加基調にありましたが、2006年をピークに下落を続け、その後は減少と回復が繰り返されました。特に2015年から大きな減少が見られ、2022年の飼養数は2000年と比べて約12%の減少を記録しています。
ベルギーの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 110,120 |
2019年 | 117,320 |
2017年 | 91,971 |
2016年 | 86,229 |
2015年 | 100,676 |
2014年 | 112,000 |
2013年 | 114,407 |
2012年 | 119,260 |
2011年 | 113,995 |
2010年 | 120,000 |
2009年 | 126,219 |
2008年 | 132,405 |
2007年 | 150,532 |
2006年 | 153,976 |
2005年 | 152,384 |
2004年 | 150,650 |
2003年 | 146,030 |
2002年 | 146,426 |
2001年 | 156,132 |
2000年 | 125,639 |
ベルギーの羊飼養数のデータを見ると、2000年代初頭は比較的安定して増加傾向がみられました。例えば、2000年の125,639匹から2006年には153,976匹に増加しています。しかしその後、減少傾向に転じ、2008年には大きな減少が観測される132,405匹にまで下がりました。それ以降、2016年まで減少が続き、この年には86,229匹と大幅な低下が記録されています。この時期に何が起きたのかを考えると、ヨーロッパ全体での農業振興政策の転換や、羊肉や羊毛市場の需要減少が影響している可能性が高いと考えられます。
さらに近年の推移では、2019年に117,320匹まで回復する局面もありましたが、2022年には再び110,120匹に下落しました。この数値の変化は必ずしも一貫した増加や減少を示さないことから、短期的な環境要因や政策変更、あるいは疫病や自然災害などの影響が存在した可能性が伺われます。例えば、ベルギーを含む欧州では近年、異常気象による干ばつや農作物の生産性低下が問題視され、これが羊の飼育に関係しているかもしれません。また、新型コロナウイルスのパンデミックが畜産業全体に与えた影響も議論に値します。人々の生活様式や輸送の制約が、牧畜全般に影響をもたらしたと考えられます。
地政学的な観点にも注目する必要があります。ベルギーはEU諸国間の競争が激化する中で、国内農業の競争力を維持する難しさに直面しています。特に輸入品との価格競争や、気候変動に対応した農業政策による規制強化が、中小規模の羊牧場に負担をかけている可能性があります。この地域では、羊毛や羊肉の国際価格低迷が飼養数の減少に寄与している側面も見逃せません。
未来に向けた対策としては、まず持続性の高い農業モデルの導入が挙げられます。例えば、高品質な羊毛生産や有機羊肉市場に特化した戦略を打ち出すことで、ベルギー産の羊関連製品の競争力を高めることができます。また、EUの農業補助金を活用した中小農家への支援プログラム強化も重要です。同時に、気候変動の影響を考慮した乳製品や羊毛の生産システムの見直しが求められます。このほか、地域間の協力を強化し、ベルギー国内での資源やノウハウの共有を図ることも効果的です。
結論として、ベルギーの羊飼養数の推移は、農業政策、気候変動、国際市場の動きなど、多くの要因が絡み合っていることがわかります。これらに効果的に対処するためには、国際的および地域的な協力を基盤とした政策の実現が必要です。また、持続可能な畜産業の推進と新しい市場創出に向けた戦略が欠かせません。国際連合食糧農業機関(FAO)をはじめとする国際機関や、EU内での連携を強化することで、ベルギーの畜産業の持続的発展が期待されます。