ベルギーの鶏飼養数推移（1961年～2023年）

出典： Food and Agriculture Organization「国際連合食糧農業機関」

国際連合食糧農業機関（FAO）が発表した2024年7月更新の最新データによると、ベルギーの鶏飼養数は、2000年の39,729千羽から2022年の53,283千羽に増加しています。この期間には一時的な減少期も見られたものの、2016年以降は一貫して増加傾向にあります。特に2020年以降の安定した水準が注目されます。

年度	飼養数(羽)	増減率
2023年	48,754,000	-8.5% ↓
2022年	53,283,000	0.18% ↑
2021年	53,188,000	-0.33% ↓
2020年	53,362,000	8.62% ↑
2019年	49,127,000	3.49% ↑
2018年	47,469,000	18.14% ↑
2017年	40,179,000	-5.58% ↓
2016年	42,553,000	12.76% ↑
2015年	37,739,000	11.99% ↑
2014年	33,700,000	-6.95% ↓
2013年	36,219,000	1.69% ↑
2012年	35,618,000	0.68% ↑
2011年	35,376,000	2.91% ↑
2010年	34,375,000	3.41% ↑
2009年	33,240,000	2.3% ↑
2008年	32,493,000	-0.78% ↓
2007年	32,750,000	-0.36% ↓
2006年	32,867,000	-7.6% ↓
2005年	35,569,000	-2.57% ↓
2004年	36,506,000	13.97% ↑
2003年	32,032,000	-15.55% ↓
2002年	37,928,000	-1.56% ↓
2001年	38,529,000	-3.02% ↓
2000年	39,729,000	-

ベルギーの鶏飼養数推移を振り返ると、2000年から2003年にかけて減少していましたが、これにはヨーロッパ全体で発生した2000年代初頭の口蹄疫や鳥インフルエンザの流行が影響した可能性があります。これらの疫病問題は、鶏の大量処分や養鶏業者への規制強化を誘発し、飼養数に直接的な影響を及ぼしました。また、2004年以降は徐々に回復の兆しを見せていますが、2010年以前の数値は依然として2000年の水準を下回っていました。

2016年からは鶏飼養数が急増しており、特に2018年以降は顕著な増加が見られます。この背景には、ベルギー国内の家禽産業の効率化や、輸出向け需要の拡大が影響していると考えられます。ヨーロッパの他の国々、例えばドイツやフランスが同時期に環境規制を強化し、飼養数をむしろ抑制する方向に動いたことを考慮すると、ベルギーの増加は対照的で、競争力の向上を象徴しています。ただし、絶対数で見ると、中国やインドなど、世界の大消費国に比べると控え目です。

今後の主な課題として、持続可能性の確保が挙げられます。鶏飼養数の増加は生産効率だけでなく、環境や疫病への影響にも波及します。特に水質汚染や温室効果ガス排出への懸念が高まっています。ベルギーは既に厳密なEU規制に従って運営されていますが、更なる規制強化や、循環型農業の導入が不可欠と言えるでしょう。また、欧州内外からの消費行動が変化している中で、オーガニックや無抗生物質飼育へのシフトも視野に入れる必要があります。

地政学的にも、鶏肉や卵製品の輸出先への依存にはリスクが存在します。特に、ベルギーが依存している隣国（フランスやドイツなど）での政策変更や市場動向が直接的な影響を及ぼす可能性があります。さらに、疫病が再び大規模に流行した場合や、輸送経路が遮断された場合には、飼養数や生産効率への影響も避けられません。

結論として、ベルギーの鶏飼養数推移を見ると、特に2016年以降の増加は鳴り物入りの成果ですが、その背後に潜む環境や地政学的リスクは更なる対策の必要性を示しています。ベルギー政府および関係機関には、競争力を維持しつつ、持続可能な形で家禽産業を発展させるため、新しい技術導入や規制調整を促進することが求められます。例えば、家禽の施設管理を向上させるようなIoT技術の導入や、EU全体での環境政策との調和を図ることが具体的対策と言えるでしょう。さらには、他国と連携し、家禽産業の長期的な課題への備えを強化する枠組み作りも重要です。