Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ツバルのココナッツ生産量は1961年の3,900トンをピークに、長期的には減少傾向を見せ、その後は1,000~2,500トンで推移しています。特に2000年以降、生産量は概ね安定していましたが、2022年と2023年には微減しています。地政学的課題や気候変動など、これらの変動には多様な要因が背景にあります。
ツバルのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 2,199 |
1.64% ↑
|
2022年 | 2,163 |
-9.86% ↓
|
2021年 | 2,400 | - |
2020年 | 2,400 | - |
2019年 | 2,400 |
50% ↑
|
2018年 | 1,600 | - |
2017年 | 1,600 | - |
2016年 | 1,600 | - |
2015年 | 1,600 | - |
2014年 | 1,600 |
-9.09% ↓
|
2013年 | 1,760 |
4.76% ↑
|
2012年 | 1,680 |
6.33% ↑
|
2011年 | 1,580 |
0.64% ↑
|
2010年 | 1,570 |
-5.13% ↓
|
2009年 | 1,655 |
-0.48% ↓
|
2008年 | 1,663 |
-2.18% ↓
|
2007年 | 1,700 |
1.31% ↑
|
2006年 | 1,678 |
-0.26% ↓
|
2005年 | 1,682 |
5.15% ↑
|
2004年 | 1,600 |
-5.07% ↓
|
2003年 | 1,685 |
-0.25% ↓
|
2002年 | 1,690 |
13.02% ↑
|
2001年 | 1,495 |
-16.11% ↓
|
2000年 | 1,782 |
20.72% ↑
|
1999年 | 1,476 |
-14.2% ↓
|
1998年 | 1,721 |
6.15% ↑
|
1997年 | 1,621 |
-9.24% ↓
|
1996年 | 1,786 |
-0.28% ↓
|
1995年 | 1,791 |
19.38% ↑
|
1994年 | 1,500 |
-16.67% ↓
|
1993年 | 1,800 |
-3.11% ↓
|
1992年 | 1,858 |
-38.07% ↓
|
1991年 | 3,000 |
87.5% ↑
|
1990年 | 1,600 |
-6.98% ↓
|
1989年 | 1,720 |
9.55% ↑
|
1988年 | 1,570 |
-21.5% ↓
|
1987年 | 2,000 |
-16.67% ↓
|
1986年 | 2,400 |
-4.76% ↓
|
1985年 | 2,520 | - |
1984年 | 2,520 |
0.8% ↑
|
1983年 | 2,500 |
6.38% ↑
|
1982年 | 2,350 |
-48.71% ↓
|
1981年 | 4,582 |
1.82% ↑
|
1980年 | 4,500 |
-4.26% ↓
|
1979年 | 4,700 |
2.58% ↑
|
1978年 | 4,582 |
186.38% ↑
|
1977年 | 1,600 |
60% ↑
|
1976年 | 1,000 |
-23.08% ↓
|
1975年 | 1,300 |
-69.05% ↓
|
1974年 | 4,200 |
320% ↑
|
1973年 | 1,000 |
-16.67% ↓
|
1972年 | 1,200 |
-65.71% ↓
|
1971年 | 3,500 |
40% ↑
|
1970年 | 2,500 |
-7.41% ↓
|
1969年 | 2,700 |
-12.9% ↓
|
1968年 | 3,100 |
-8.82% ↓
|
1967年 | 3,400 |
-12.82% ↓
|
1966年 | 3,900 | - |
1965年 | 3,900 | - |
1964年 | 3,900 | - |
1963年 | 3,900 | - |
1962年 | 3,900 | - |
1961年 | 3,900 | - |
ツバルのココナッツ生産量推移データを見ると、過去60年以上にわたる変動からいくつかの重要なトレンドが読み取れます。1961年から1966年までの3,900トンという高水準の安定期を経て、それ以降、特に1967年以降は急激な減少が確認されます。1970年代には一部の年において大幅な増減がありますが、これは自然災害や気候条件の変動に起因していると考えられるでしょう。この地域は南太平洋の小国という地理的特徴から、サイクロンや高潮などの自然災害の影響が特に大きいとされています。このような気象イベントは、ココナッツ樹に直接的なダメージを与えるほか、農業従事者の労働環境にも影響を及ぼします。
また、1980年代後半からは、1,000トン台の低水準で長期間推移するようになっています。これは気候変動に伴う降雨パターンの変化や塩害、土地利用の制約などが影響している可能性が高いです。特にツバルの地勢は平坦であり、海面上昇による塩害の影響を非常に受けやすいことが状況に拍車を掛けていると考えられます。さらに、経済的側面に目を向けると、ココナッツはツバルの輸出において重要な役割を果たしてきたものの、近年では他産業や輸入品への依存度が高まり、農業従事者の人口減少も課題となっています。
一方で、2000年代から2020年代前半までのデータでは全体的に1,600~2,400トンで安定しており、これは農業技術の改善や、気候変動への適応政策が一定の成果を上げている可能性を示唆しています。ただし、2022年と2023年においては2,400トンから2,199トンまで微減しており、依然として気候変動の影響や社会経済的課題が残されていることが分かります。
気象リスクに加えて、ココナッツ生産が人口減少や都市化などの地域的課題と関連していることも注目されます。他国と比較すると、例えばインドやフィリピンのような主要なココナッツ生産国では、規模の経済を活かした大規模農業が行われており、生産量も著しく高いです。一方でツバルのような小規模経済では、これらの競争力を持つのは難しく、結果として輸出量の低迷や独立した経済基盤の脆弱性が生じる可能性があります。
今後の課題としては、まず気候変動に適応するための農業支援策の充実が求められます。例えば、塩害に強いココナッツの品種を導入することで、生産効率向上を目指すことができます。また、地域協力を促進し、他の南太平洋諸国と知識共有を進めるべきです。さらに、持続可能性を担保するためには、従来型の輸出志向から脱却し、ココナッツを利用した国内製品の価値を高める取り組みも考えられます。例えば、伝統的な手工芸品やココナッツオイルの製品化が観光収入との相乗効果を生み出す可能性があります。
国際連合や地域機関がサポートを行う形で技術的および経済的な支援を強化し、ツバルの持続可能な農業基盤を構築することが重要です。加えて、長期的には技術移転や再生可能エネルギーの活用により、輸送コストを削減し、さらなる収益の拡大を目指すことが望ましいです。このような実践的なアプローチが、自然災害や地政学的リスクに揺れるツバルの経済安定化に大きく寄与するでしょう。