国際連合食糧農業機関(FAO)の提供データによると、1960年代から2023年にかけて、ニウエのココナッツ生産量は大きな波を経て推移しています。特に、1964年の約6,000トンをピークに減少傾向が続いた後、近年は年間約2,600トン前後で安定していました。しかし2023年には、突然3,606トンまで増加するという劇的な変化が見られました。この動向は、地域特有の農業環境や人口動態、気候変動など複数の要因が影響していると考えられます。
ニウエのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 3,606 |
38.65% ↑
|
2022年 | 2,601 |
0.04% ↑
|
2021年 | 2,600 | - |
2020年 | 2,600 | - |
2019年 | 2,600 | - |
2018年 | 2,600 | - |
2017年 | 2,600 | - |
2016年 | 2,600 | - |
2015年 | 2,600 | - |
2014年 | 2,600 | - |
2013年 | 2,600 | - |
2012年 | 2,600 |
8.33% ↑
|
2011年 | 2,400 | - |
2010年 | 2,400 |
-4.26% ↓
|
2009年 | 2,507 |
-1.09% ↓
|
2008年 | 2,534 |
-2.52% ↓
|
2007年 | 2,600 |
1.51% ↑
|
2006年 | 2,561 |
0.88% ↑
|
2005年 | 2,539 |
0.71% ↑
|
2004年 | 2,521 |
0.79% ↑
|
2003年 | 2,501 |
1.01% ↑
|
2002年 | 2,476 |
0.73% ↑
|
2001年 | 2,458 |
-1.68% ↓
|
2000年 | 2,500 | - |
1999年 | 2,500 | - |
1998年 | 2,500 | - |
1997年 | 2,500 | - |
1996年 | 2,500 |
7.33% ↑
|
1995年 | 2,329 |
1.42% ↑
|
1994年 | 2,297 |
2.4% ↑
|
1993年 | 2,243 |
5.64% ↑
|
1992年 | 2,123 |
6.16% ↑
|
1991年 | 2,000 |
100% ↑
|
1990年 | 1,000 |
-50% ↓
|
1989年 | 2,000 | - |
1988年 | 2,000 |
-9.09% ↓
|
1987年 | 2,200 |
-4.35% ↓
|
1986年 | 2,300 |
-8% ↓
|
1985年 | 2,500 |
-7.41% ↓
|
1984年 | 2,700 |
-10% ↓
|
1983年 | 3,000 |
-11.76% ↓
|
1982年 | 3,400 |
3.03% ↑
|
1981年 | 3,300 | - |
1980年 | 3,300 | - |
1979年 | 3,300 |
32% ↑
|
1978年 | 2,500 |
-16.67% ↓
|
1977年 | 3,000 |
30.43% ↑
|
1976年 | 2,300 |
-30.3% ↓
|
1975年 | 3,300 |
-28.26% ↓
|
1974年 | 4,600 |
27.78% ↑
|
1973年 | 3,600 |
5.88% ↑
|
1972年 | 3,400 | - |
1971年 | 3,400 |
-2.86% ↓
|
1970年 | 3,500 |
25% ↑
|
1969年 | 2,800 |
-6.67% ↓
|
1968年 | 3,000 |
-14.29% ↓
|
1967年 | 3,500 |
-12.5% ↓
|
1966年 | 4,000 |
-20% ↓
|
1965年 | 5,000 |
-16.67% ↓
|
1964年 | 6,000 |
25.79% ↑
|
1963年 | 4,770 |
46.77% ↑
|
1962年 | 3,250 |
37.13% ↑
|
1961年 | 2,370 | - |
ニウエは、南太平洋に位置する小さな島国で、ココナッツ生産はその伝統的農業の一つです。このデータから1960年代を振り返ると、1964年に約6,000トンという生産量の頂点を記録しました。当時の生産量上昇要因としては、人口増加や地域内でのココナッツ需要の高まり、輸出の拡大が挙げられます。しかし、その後生産は縮小し、1980年代には年間3,000トン未満、1990年にはついに1,000トンまで大幅に減少する状況に陥りました。この低下の背景には、ニウエに特有の課題があります。
一つ目は、自然災害による影響です。ニウエは台風の被害を頻繁に受ける地域であり、このような災害が直接的に農業インフラを破壊し、収穫量へ大きな打撃を与えることがあります。加えて、1980年代後半以降の急激な人口減少も見逃せない要因です。ニウエは、移民により若年層が海外へ流出し、生産年齢人口が大幅に減少しています。この結果、農業に従事する労働力が不足し、ココナッツ生産においても影響が出たと考えられます。
その後、2000年代以降、年間2,500~2,600トンの生産量で一定の安定期を迎えたものの、生産量の伸びは見られませんでした。こうした生産量の停滞は、農地の狭小化や、気候変動に伴う成長条件の変化も関係していると推察されます。しかし2023年には突然、前年の約2,600トンから3,606トンへと急増しました。この急増の背景には、天候条件の回復や、ココナッツ産業を強化するための新たな政府プログラムの影響がある可能性があります。この拡大が一時的なものか、中長期での成長トレンドの兆しなのか、詳細な分析が求められます。
将来に向けての課題として、まず気候変動への対応が挙げられます。ココナッツは気候条件に敏感な作物であり、適切な栽培環境の確保が必要不可欠です。また、労働力不足の問題を解決するためには、移民政策や若者の農業参画促進プログラムをさらに拡充することが考えられます。一部の国では、最新の農業技術や自動化設備の導入が労働力不足の補完に有効であるとの事例がありますが、ニウエのような小国でも技術移転を進めることで、収量の可視化や作業の省力化が図れる可能性があります。
さらに、国際市場における競争力の向上が不可欠です。近年、ココナッツを使用した製品、特にココナッツオイルやココナッツミルクの需要が拡大しています。このため、ニウエ政府や地域企業が連携し、生産から加工、輸出までの一連のバリューチェーンを整備することが求められます。
2023年の生産量の急上昇は、ニウエのココナッツ産業にとって明るい兆候とも言えますが、今後も政策の改善と国際協力が継続的に必要です。特に地政学的リスクや自然災害、移民流出の課題に対処しつつ、国際的な農業技術や市場へのアクセスを活用することで、持続的な生産基盤を築くことが期待されます。