国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、キリバスのココナッツ生産量は1961年から2023年にかけて大きな変動を示しています。1960年代から1990年代にかけては一進一退の動きが見られましたが、2000年代後半からは増加に転じ、2016年に238,000トンで最高値を記録しました。その後、減少傾向に転じましたが、2023年には再び189,209トンとやや回復しています。この推移は、気候変動の影響、農業政策、社会的要因などが複雑に絡み合った結果と考えられます。
キリバスのココナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 189,209 |
4.66% ↑
|
2022年 | 180,793 |
3.73% ↑
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2021年 | 174,300 | - |
2020年 | 174,300 | - |
2019年 | 174,300 |
-16.6% ↓
|
2018年 | 209,000 |
-12.18% ↓
|
2017年 | 238,000 | - |
2016年 | 238,000 |
42.17% ↑
|
2015年 | 167,400 |
0.06% ↑
|
2014年 | 167,300 |
-1.24% ↓
|
2013年 | 169,400 |
1.19% ↑
|
2012年 | 167,400 |
2.23% ↑
|
2011年 | 163,750 | - |
2010年 | 163,750 | - |
2009年 | 163,750 | - |
2008年 | 163,750 | - |
2007年 | 163,750 |
3.64% ↑
|
2006年 | 158,000 |
22.48% ↑
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2005年 | 129,000 | - |
2004年 | 129,000 |
34.38% ↑
|
2003年 | 96,000 | - |
2002年 | 96,000 | - |
2001年 | 96,000 | - |
2000年 | 96,000 |
-9.65% ↓
|
1999年 | 106,250 | - |
1998年 | 106,250 |
6.25% ↑
|
1997年 | 100,000 | - |
1996年 | 100,000 |
23.08% ↑
|
1995年 | 81,250 | - |
1994年 | 81,250 | - |
1993年 | 81,250 | - |
1992年 | 81,250 |
3.17% ↑
|
1991年 | 78,750 |
34.04% ↑
|
1990年 | 58,750 |
-29.85% ↓
|
1989年 | 83,750 |
-37.38% ↓
|
1988年 | 133,750 |
11.46% ↑
|
1987年 | 120,000 |
9.09% ↑
|
1986年 | 110,000 |
10% ↑
|
1985年 | 100,000 |
1.01% ↑
|
1984年 | 99,000 |
76.79% ↑
|
1983年 | 56,000 |
-26.32% ↓
|
1982年 | 76,000 |
-11.63% ↓
|
1981年 | 86,000 |
40.98% ↑
|
1980年 | 61,000 |
-12.86% ↓
|
1979年 | 70,000 |
-12.5% ↓
|
1978年 | 80,000 |
25% ↑
|
1977年 | 64,000 |
1.59% ↑
|
1976年 | 63,000 |
57.5% ↑
|
1975年 | 40,000 |
-55.56% ↓
|
1974年 | 90,000 |
31.39% ↑
|
1973年 | 68,500 |
52.22% ↑
|
1972年 | 45,000 |
-36.62% ↓
|
1971年 | 71,000 |
20.34% ↑
|
1970年 | 59,000 |
7.27% ↑
|
1969年 | 55,000 |
1.85% ↑
|
1968年 | 54,000 |
-36.47% ↓
|
1967年 | 85,000 |
18.06% ↑
|
1966年 | 72,000 |
-4% ↓
|
1965年 | 75,000 |
47.06% ↑
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1964年 | 51,000 |
8.51% ↑
|
1963年 | 47,000 |
-14.55% ↓
|
1962年 | 55,000 |
-11.29% ↓
|
1961年 | 62,000 | - |
キリバスのココナッツ生産量の歴史的データからは、同国の経済基盤と社会状況が密接に関連していることが浮かび上がります。1961年の62,000トンという生産量は、当時のキリバスが国際市場向けの輸出農産物の生産を開始していた段階を示しています。その後の10年間で一時的な増減を経ていますが、1974年以降、収穫量の大幅な増加が見られています。1980年代には100,000トンを超える生産量が複数年にわたって記録され、1990年代初頭には120,000トン以上に達する年もありました。しかし、その後、気候変動や農業経済政策の変化が影響し、生産量は断続的に減少を見せています。
特に注目すべきは、2000年代後半から2010年代にかけての急激な増加です。2004年には一気に129,000トンまで上昇し、2006年には158,000トン、2007年には163,750トンを記録しています。これらは、国際輸出市場が広がったことや、国内でココナッツ関連産業への投資が行われた結果と考えられます。また、2016年に238,000トンという歴史的最高値を記録した背景には、高収量種の栽培拡大や品種改良、そして気候条件の一時的な好転が挙げられます。
しかし2017年以降、生産量は再び減少傾向を示しており、特に2019年から2021年にかけての174,300トンへの落ち込みが目立ちます。これは、新型コロナウイルスの世界的流行による物流制限や農業労働力の不足、加えて、台風や旱魃を含む自然災害の影響が重なった結果と分析されます。2022年以降はやや回復基調にあるものの、2023年の189,209トンという数字は2016年のピークに比べて大きく下回っています。
ココナッツ生産はキリバスの農業および経済基盤において重要な役割を果たしていますが、地政学的課題や環境問題が今後の大きなリスクとなります。温暖化に伴う海面上昇と塩害が進行するにつれ、農地の劣化が深刻化することが予想されます。また、輸出市場の需要変動や他国間の競争も、キリバスのココナッツ産業に影響を及ぼしています。特にインドやインドネシアといった主要ココナッツ生産国との競争は価格帯や品質管理の面で大きな課題です。
これまでの生産量の推移から、気候変動への適応策を進めることが今後の重要な対策となります。具体的には、塩分耐性の高いココナッツ品種の研究開発と普及活動を進める必要があります。また、災害リスク管理を強化し、自然災害による農業被害を最小限に抑えるための気象予報技術の活用が重要です。さらに、生産者の収入安定化を図るための支援策として、ココナッツ生産以外の関連産業(たとえばココナッツオイルや繊維製品)の育成も検討する価値があるでしょう。
国際社会においても、キリバスが抱えるこれらの課題を認識し、協力体制を構築することが求められます。特に、環太平洋地域の国々との連携を深め、技術交流や市場アクセスを推進することで、持続可能な農業基盤を築くことができます。環境問題という地球規模の課題に直面している以上、キリバスの解決策は他の島嶼国のモデルケースにもなり得ます。
今後もFAOや国際社会による支援を含めた多方面からの取り組みを通じて、キリバスが安定したココナッツ生産を継続できるよう、さらに包括的な対策が必要です。