国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、1961年から2022年までのキリバスにおけるサトイモの生産量推移は、1960年代から1970年代にかけて生産量が増加し、1984年には2,000トンに達しました。しかし、その後の生産量は減少傾向を示し、特に1985年から1989年にかけて顕著な低下が見られます。2000年代初頭には再び増加し、2008年に最高値の2,250トンを記録しましたが、以降は変動を伴いながら徐々に減少しています。2022年時点では1,960トンとやや安定してはいるものの、過去のピークと比較すると減少している状況が見られます。
キリバスのサトイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,924 |
-1.81% ↓
|
2022年 | 1,960 |
-0.01% ↓
|
2021年 | 1,960 |
-0.03% ↓
|
2020年 | 1,960 |
-0.57% ↓
|
2019年 | 1,972 |
3.02% ↑
|
2018年 | 1,914 |
-1.44% ↓
|
2017年 | 1,942 |
-1.77% ↓
|
2016年 | 1,977 |
-2.29% ↓
|
2015年 | 2,023 |
-2.75% ↓
|
2014年 | 2,080 |
4.02% ↑
|
2013年 | 2,000 |
11.11% ↑
|
2012年 | 1,800 |
-8.39% ↓
|
2011年 | 1,965 |
-3.9% ↓
|
2010年 | 2,045 |
-6.22% ↓
|
2009年 | 2,180 |
-3.1% ↓
|
2008年 | 2,250 |
2.27% ↑
|
2007年 | 2,200 |
2.33% ↑
|
2006年 | 2,150 |
5.09% ↑
|
2005年 | 2,046 |
2.29% ↑
|
2004年 | 2,000 |
5.26% ↑
|
2003年 | 1,900 |
5.56% ↑
|
2002年 | 1,800 |
5.88% ↑
|
2001年 | 1,700 |
3.15% ↑
|
2000年 | 1,648 |
3.01% ↑
|
1999年 | 1,600 |
-0.17% ↓
|
1998年 | 1,603 |
0.53% ↑
|
1997年 | 1,594 |
-0.36% ↓
|
1996年 | 1,600 |
3.9% ↑
|
1995年 | 1,540 |
2.66% ↑
|
1994年 | 1,500 |
3.55% ↑
|
1993年 | 1,449 |
3.47% ↑
|
1992年 | 1,400 |
-2.02% ↓
|
1991年 | 1,429 |
-12.92% ↓
|
1990年 | 1,641 |
9.4% ↑
|
1989年 | 1,500 |
-6.25% ↓
|
1988年 | 1,600 |
-5.88% ↓
|
1987年 | 1,700 |
-5.56% ↓
|
1986年 | 1,800 |
-5.26% ↓
|
1985年 | 1,900 |
-5% ↓
|
1984年 | 2,000 |
5.26% ↑
|
1983年 | 1,900 |
5.56% ↑
|
1982年 | 1,800 |
5.88% ↑
|
1981年 | 1,700 |
6.25% ↑
|
1980年 | 1,600 | - |
1979年 | 1,600 | - |
1978年 | 1,600 | - |
1977年 | 1,600 | - |
1976年 | 1,600 |
6.67% ↑
|
1975年 | 1,500 |
7.14% ↑
|
1974年 | 1,400 |
7.69% ↑
|
1973年 | 1,300 |
4% ↑
|
1972年 | 1,250 |
4.17% ↑
|
1971年 | 1,200 |
4.35% ↑
|
1970年 | 1,150 |
4.55% ↑
|
1969年 | 1,100 |
4.76% ↑
|
1968年 | 1,050 |
5% ↑
|
1967年 | 1,000 |
5.26% ↑
|
1966年 | 950 |
5.56% ↑
|
1965年 | 900 |
5.88% ↑
|
1964年 | 850 |
6.25% ↑
|
1963年 | 800 | - |
1962年 | 800 | - |
1961年 | 800 | - |
キリバスにおけるサトイモ生産は、太平洋地域の食生活と農業において重要な柱の一つと言えます。サトイモは、地域住民の主食として消費されるほか、特に小規模農家による家庭生産が一般的で、自給的な農業としての性質が強い作物です。1961年から1984年にかけて生産量は安定的に増加しており、この間地域の農業技術の向上や自然条件が安定していた影響が考えられます。特に1984年には2,000トンに達しており、この時期の栽培活動が活発であったことが推察されます。
一方、1985年から1989年にかけての急激な生産量の減少は、地政学的背景によりもたらされた可能性があります。この時期は、気候変動や海面上昇の影響が徐々に顕在化してくるタイミングとも一致し、これが農業生産にマイナスの影響を及ぼしたと見ることもできます。また、同時期における農業労働人口の減少や、輸入食品の増加による伝統農業の相対的な低迷も一因であると考えられます。
2000年代初頭には再び生産量が増加し、2008年に最高値である2,250トンを記録しています。これは、農業政策の転換や地域経済の再活性化が、農業生産量の拡大に寄与した結果と見ることができます。しかし、2009年以降は再び生産が減少する傾向が顕著になり、とりわけ2011年以降は1,965トンから1,800トン台への急減が見られます。この減少は、環太平洋地域における気候変動の進行や、サイクロンや海面上昇といった自然災害に起因している可能性が高いと言えます。特にキリバスは、海抜の低い環礁国として、農地の塩害被害への対応が重要課題となっています。
直近の2022年時点では1,960トンと、生産量は多少の安定傾向を見せているものの、かつてのピーク時である2008年の水準には届いていないのが現状です。これは一時的な要因ではなく、長期的な気候変動や農業人口の不足など、構造的な課題が背景にあると考えられます。
キリバスにおけるサトイモ生産の持続可能性を確保するためには、いくつかの具体的な対策が重要となります。特に、耐塩性品種の研究開発と導入、農地の塩害対策における国際技術の活用が挙げられます。また、太平洋諸国間の技術協力や、国際機関による支援体制の強化も効果的なアプローチになるでしょう。さらに、地域住民への農業訓練や教育の強化は、農業従事者の育成と安定的な生産基盤の確立に寄与するはずです。
キリバスの地理的条件と経済的背景を考えると、災害対策やインフラ整備の一環として農業の近代化を進めることも含め、国際的な連携を通じた長期的な取り組みが不可欠です。このような施策を進めることで、再びサトイモ生産を持続可能な形で増加させ、地域の食料安定に寄与することが期待されます。