オーストラリアの食文化は「多文化の交差点」
現在のオーストラリア料理をひと言で表すのは簡単ではありません。その歴史を紐解くと、多様な文化が混ざり合っていることがわかります。
始まりはイギリス・スコットランドの食文化
18世紀後半、オーストラリアに初期に入植したのはイギリスやスコットランドからの人々でした。そのため、伝統的なオーストラリアの食文化の基盤には、フィッシュ・アンド・チップスやミートパイ、ローストビーフといったイギリス料理が色濃く残っています。
多文化国家が生んだ豊かな食の多様性
その後、オーストラリアは世界中から多くの移民を受け入れる多民族・多文化国家へと発展しました。ヨーロッパ、アジア、中東など、様々な国から持ち込まれた食文化が融合し、「モダン・オーストラリア料理(Modern Australian Cuisine)」と呼ばれる、国籍にとらわれない独創的な料理スタイルを生み出したのです。
今、注目の伝統食!先住民の知恵「ブッシュ・タッカー」とは?
多様な食文化が花開く一方で、近年、オーストラリア大陸に古くから伝わる先住民(アボリジニ)の食文化が見直されています。それが**「ブッシュ・タッカー(Bush Tucker)」**です。
ブッシュ・タッカーとは、オーストラリアの自然環境(ブッシュ)で採れる伝統的な食材のこと。アボリジニの人々は、有史以前からこの大陸特有の動植物を食料として利用し、厳しい自然環境を生き抜く知恵を受け継いできました。
【ブッシュ・タッカーの主な食材例】
- 肉類: カンガルー、ワラビーなどの有袋類、ワニ、トカゲなどの爬虫類
- 昆虫類: ウィチェッティ・グラブ(蛾の幼虫)など
- 植物類: ワトルシード(アカシアの種)、植物の根や木の実
これらの食材は、栄養価が高いだけでなく、持続可能な食料資源としても注目されており、現在では健康志向のオーストラリア人の間で「スーパーフード」として人気が高まっています。
人気者カンガルー!気になる味と美味しい食べ方

ブッシュ・タッカーの中でも、特にポピュラーで、観光客でも気軽に試せるのがカンガルー肉です。
「あの可愛いカンガルーを食べるなんて…」と抵抗を感じるかもしれませんが、オーストラリアでは増えすぎたカンガルーの個体数調整の意味合いもあり、ごく一般的に食べられています。スーパーの精肉コーナーにも普通に並んでいるんですよ。
カンガルー肉ってどんな味?
気になるその味ですが、多くの人が抱く「クセが強そう」「硬そう」といったイメージとは全く違います。
- 味: 牛肉の赤身に似ていて、非常に淡白でクセがないのが特徴です。ジビエ特有の臭みはほとんどありません。
- 食感: 脂肪が少なく、きめ細かい肉質で、とても柔らかいです。
- 栄養: 高タンパク、低脂肪、低コレステロールで、鉄分や亜鉛も豊富なヘルシーミートとして知られています。
おすすめの食べ方No.1は「タタキ」!
カンガルー肉の美味しさを最大限に引き出す食べ方として、現地で特におすすめされているのが「タタキ」です。
表面をサッと炙ることで香ばしさがプラスされ、中のレアな部分の繊細な旨味と柔らかな食感をダイレクトに味わえます。ワサビ醤油やポン酢でいただくと、まるで上質な馬刺しや牛のタタキのようで、絶品です。
もちろん、シンプルにステーキにするのも定番。焼きすぎると硬くなるので、ミディアムレアで仕上げるのが美味しく食べるコツです。
カンガルーだけじゃない!オーストラリアのユニーク食材
レストランや精肉店では、カンガルー以外のブッシュ・タッカーにも出会えます。
- ワニ(クロコダイル): 淡白で、食感や味は鶏肉によく似ています。唐揚げやグリルで食べられることが多いです。
- トカゲ: こちらも鶏肉に似た味わいと言われています。
これらのユニークな肉は、シドニーやメルボルンなどの都市部にあるモダン・オーストラリア料理のレストランで、洗練された一皿として提供されていることが多いです。
まとめ:旅の思い出に、オーストラリアならではの食体験を
オーストラリアの食文化は、イギリスの伝統から始まり、世界中の文化が溶け合った末に、今、大陸古来の先住民の知恵「ブッシュ・タッカー」へと回帰し、新たな魅力を放っています。
中でもカンガルー肉は、**「淡白でクセがなく、ヘルシーで美味しい」と三拍子そろった注目の食材です。ステーキも美味しいですが、もしメニューにあればぜひ「タタキ」**でその真価を味わってみてください。
オーストラリアを訪れる機会があれば、美しい自然や動物たちとの触れ合いだけでなく、ぜひその土地ならではのユニークな食文化にも挑戦してみてはいかがでしょうか。きっと忘れられない旅の思い出になるはずです。