ボリビアの“実質的な首都”ラパスとは?
ラパスの標高とその特殊性
- ラパス市街:標高約3650m(富士山頂と同等)
- エル・アルト国際空港:標高約4060m(世界最高所にある国際空港)
このような高地に都市がある背景には、ボリビアの地形的特徴と鉱山資源を中心とした歴史的発展があります。
鉱山が育てた高地都市ラパスの歴史
ボリビアの実質的な首都ラパスが、政治と経済の中心都市へと成長した背景には、「鉱山資源」と「地理的戦略性」という2つの要因があります。
スペイン植民地時代と鉱山経済の始まり
ラパスの歴史を語る上で欠かせないのが、16世紀のスペイン植民地時代です。スペイン人がボリビアに到達した当初、最大の関心事は「銀」でした。特に、ラパスから南東約300kmの地にあるポトシ銀山は、当時世界最大級の産銀地としてヨーロッパに膨大な富をもたらしました。
このポトシ銀山とペルー・太平洋岸をつなぐ交通ルートの中継地点として、1548年にラパスが設立されました。つまり、当初のラパスは「交易と軍事の要衝」として機能していたのです。
19世紀末〜20世紀初頭の鉱業ブーム
ラパスが本格的にボリビアの経済・政治中枢として台頭したのは、19世紀末から20世紀初頭にかけての鉱業ブームです。特に以下の資源が経済成長を後押ししました。
- 錫(スズ):ボリビアは20世紀初頭、世界最大級の錫の生産国でした。
- 鉛・亜鉛:錫とともに副産物として産出され、精錬産業の発展を支えました。
- 硝石(ナトリウム硝酸塩):当時は火薬や肥料の原料として重宝されました。
これらの鉱物資源は、ラパスを拠点に各地へと輸送され、ラパスには鉱山会社、金融機関、商社などが集積するようになりました。
交通インフラの発展と都市の成長
鉱山資源を効率的に輸送する必要から、鉄道・道路などのインフラ整備が進みました。ラパスはアンデス山脈を通じてペルーやチリと結ばれ、内陸国ボリビアにとって海への“窓口”的な役割も担うようになります。
特に、ラパスとチリのアリカ港を結ぶ鉄道路線(アリカ・ラパス鉄道)の建設は、経済の国際化と輸出主導の発展を促しました。結果的に、ラパスは南米内陸部における一大経済拠点としての地位を確立したのです。
行政機能の移転と“実質首都”化
もともとボリビアの憲法上の首都は「スクレ」ですが、政情不安と内戦(連邦戦争 1898〜1899年)を契機に、行政機能がラパスへと移されました。これにより、ラパスは「実質的な首都」としての役割を担うようになり、政府機関、大統領官邸、議会などの中心が集約されました。
このようにラパスは、銀や錫をはじめとする鉱山資源の交易・輸送を軸に発展し、地政学的な重要性とインフラ整備の相乗効果によって、ボリビアの中枢都市としての地位を築いたのです。
すり鉢地形の絶景都市、ラパスの魅力
ラパス市は、すり鉢状の谷に広がる独特の地形をしています。高台のエル・アルトから谷底の中心街へと下っていく際の景色は圧巻。都市全体が階段状に広がり、上部ほど貧困層、下部ほど富裕層が住むという社会構造も見られます。
先住民文化が息づく都市
- 人口:約100万人
- エイマラ族やケチュア族などの先住民が約半数を占める
- 伝統衣装やマーケット文化が色濃く残る
エル・アルトとの移動には、世界最長級のロープウェイ「ミ・テレフェリコ(Mi Teleférico)」が活用され、景観と利便性を両立しています。
ラパス旅行時の注意点とアドバイス
この極地に行くには、体調管理が非常に重要です。特に「高山病(高所性低酸素症)」への対策は必須。事前準備と現地対応を知っておくことが、安心してラパスを楽しむコツです。
高山病のリスクと予防法
- 主な症状:頭痛、吐き気、息切れ、めまい
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対策例:
・水分を多く取る
・到着直後は安静にし、無理な行動を避ける
・コカ茶など現地の民間療法を試す(※効果は個人差あり)
・体調がすぐれない場合は酸素吸入設備を利用
現地で役立つ移動・買い物のポイント
- 移動手段:
・ロープウェイ(安価で景観も楽しめる)
・タクシー(交渉制の場合がある) -
市場:
・魔女市場(Witches' Market):伝統薬やお守りが並ぶ独特の雰囲気
・ローカルマーケット:民芸品や衣類、食材が手に入る
まとめ:ボリビアの空に最も近い都市、ラパスを知ろう
ラパスは単なる高地都市ではなく、文化・歴史・地理すべてがユニークな存在です。訪れるには体調管理が欠かせませんが、それを乗り越えれば富士山の頂上から見下ろすような都市生活を体感できます。世界でも稀な“空の都市”ラパス、その奥深さをぜひ学び、旅の計画に加えてみてはいかがでしょうか。