1. 圧巻のスケール!平均サイズが東京23区の3.4倍
まず、驚きの事実からご紹介します。
オーストラリアの牧畜が盛んな内陸部や西部地域(ノーザンテリトリーなど中〜西部3州・テリトリー)における放牧地1戸あたりの平均面積は、なんと約21万5200ヘクタール(2011年)。
この数字だけではピンとこないかもしれませんが、日本の東京23区の総面積が約6万2760ヘクタールです。つまり、オーストラリアでは1つの牧場が東京23区の約3.4倍もの広さを持つのが平均だというのです。
もはや「牧場」というより「一つの国」のようなスケール感。地平線の彼方まで続く広大な土地で、動物たちがのびのびと暮らしている光景が目に浮かびます。
ちなみに、世界最大の牧場もオーストラリアにあり、「アンナ・クリーク・ステーション」という牧場の面積は日本の四国(約1万8800㎢)を優に超える約2万3000㎢。まさに桁違いです。
2. なぜオーストラリアの牧場はこれほど巨大なのか?
これほどまでに牧場が巨大化したのには、オーストラリア大陸の地理的な特徴が大きく関係しています。
広大で安価な土地
オーストラリアの国土面積は日本の約20倍ですが、人口は約5分の1。人口密度が極めて低いため、広大な土地を安価に確保することが可能です。
放牧に適した気候と地形
国土の大部分を占める広大な乾燥・半乾燥地帯は、農耕には不向きですが、乾燥に強い牧草が生育します。この環境が、少ない労力で大量の家畜を放牧するスタイルに適していました。柵で広大な土地を囲い、家畜を放し飼いにすることで、効率的な牧畜が発展したのです。

3. 人口よりはるかに多い!国を支える羊と牛
「オーストラリアは羊の背に乗っている」という有名な言葉があります。これは、かつて羊毛産業が国の経済を根幹から支えていたことを示す言葉です。その言葉通り、今でも羊と牛はオーストラリアにとって欠かせない存在です。
羊:人口の2.5倍以上!世界有数の羊大国
- 飼育頭数:約6,500万頭以上
- 羊毛生産量:約32万9,000トン(2019年、世界第2位)
オーストラリアの人口が約2,600万人(2023年時点)ですから、国民一人あたり2頭以上の羊がいる計算になります。高品質な「メリノウール」は世界的に有名で、アパレル産業に不可欠な素材です。
牛:食卓でおなじみ「オージー・ビーフ」
- 肉牛の生産量:約235万トン(世界トップ5クラス)
日本でもおなじみの「オージー・ビーフ」は、オーストラリアのもう一つの顔です。広大な牧草地で育った牛は、赤身が多くヘルシーだと人気を集めています。日本はオーストラリア産牛肉の主要な輸出先の一つであり、私たちの食生活にも深く関わっています。
4. 日本と比べると一目瞭然!驚きのスケール差
オーストラリアのスケールをより実感するために、日本のデータと比較してみましょう。
項目 | オーストラリア | 日本 |
---|---|---|
牧場1戸あたりの平均面積 | 約21万5200ha<br>(東京23区の約3.4倍) | (比較できる大規模データなし) |
羊の飼育頭数 | 約6,500万頭 | 約4万頭 |
牛の飼育頭数(肉用・乳用計) | 約2,400万頭 | 約401万頭 |
※日本の飼育頭数は農林水産省 令和5年畜産統計調査より
こうして見ると、その差は歴然です。国土の約7割が森林で、平地が少ない日本では、オーストラリアのような大規模放牧は物理的に不可能です。この国土条件の違いが、両国の牧畜業のスタイルの違いを生んでいます。
まとめ
オーストラリアの牧場が東京23区の3.4倍もの広さを持つのは、決して大げさな話ではなく、この国ではごく当たり前の光景です。
- 1戸あたりの平均面積は東京23区の約3.4倍
- 背景には広大で安価な土地と放牧に適した環境がある
- 人口をはるかに超える6,500万頭の羊と、世界トップクラスの牛を飼育
広大な大陸の特性を最大限に活かしたオーストラリアの牧畜業。スーパーでオージー・ビーフやウール製品を見かけたら、地平線まで続く壮大な牧場の風景を思い浮かべてみてはいかがでしょうか。そのスケール感を知ると、オーストラリアという国の見え方が少し変わるかもしれません。