国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、スロバキアのナシ生産量は1993年の16,846トンをピークに、以降年々減少傾向が顕著で、2023年には1,020トンにまで減少しています。特に2000年代初頭から2010年代にかけて、急速な減少が見られますが、2018年以降にはやや持ち直しつつあるものの、生産量の大幅な回復は実現していません。
スロバキアのナシ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,020 |
-2.86% ↓
|
2022年 | 1,050 |
10.53% ↑
|
2021年 | 950 |
-14.41% ↓
|
2020年 | 1,110 |
40.51% ↑
|
2019年 | 790 |
-43.17% ↓
|
2018年 | 1,390 |
64.69% ↑
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2017年 | 844 |
102.4% ↑
|
2016年 | 417 |
-32.08% ↓
|
2015年 | 614 |
73.94% ↑
|
2014年 | 353 |
-64.13% ↓
|
2013年 | 984 |
210.41% ↑
|
2012年 | 317 |
-72.39% ↓
|
2011年 | 1,148 |
-44.86% ↓
|
2010年 | 2,082 |
-7.1% ↓
|
2009年 | 2,241 |
-20.78% ↓
|
2008年 | 2,829 |
28.01% ↑
|
2007年 | 2,210 |
-8.79% ↓
|
2006年 | 2,423 |
8.8% ↑
|
2005年 | 2,227 |
-11.42% ↓
|
2004年 | 2,514 |
-48.27% ↓
|
2003年 | 4,860 |
9.34% ↑
|
2002年 | 4,445 |
2.09% ↑
|
2001年 | 4,354 |
-50.43% ↓
|
2000年 | 8,783 |
-4.39% ↓
|
1999年 | 9,186 |
-23.59% ↓
|
1998年 | 12,022 |
46.09% ↑
|
1997年 | 8,229 |
-24.53% ↓
|
1996年 | 10,903 |
1.22% ↑
|
1995年 | 10,772 |
14.83% ↑
|
1994年 | 9,381 |
-44.31% ↓
|
1993年 | 16,846 | - |
国連食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スロバキアのナシ生産量は1990年代以降、大きな減少傾向にあります。1993年の16,846トンというピークから1990年代後半までに半減し、2000年代初頭には1,000トン台へと低下しました。この減少傾向は主に、農業の機械化不足や農業従事者の減少など、社会的・経済的な変化が影響していると考えられます。また、2004年にEUに加盟した後、EU共通農業政策の導入に伴い、より収益性の高い作物への転換が進んだことも要因として挙げられます。
さらに、2011年には特に低い1,148トンという生産量を記録し、続く2012年にはわずか317トンと、大幅な低迷期に突入しました。この深刻な減少は、当時の異常気象や寒波による収穫減に加えて、地域的な農業基盤の衰退が重なったことが原因とされています。寒波や早期霜害などの気象リスクが頻発している点を踏まえると、気候変動がこの地域の果樹栽培に及ぼしている影響が無視できないものとなっています。
2018年以降のナシ生産量は1,000トン付近まで回復しており、2023年には1,020トンとなっていますが、1990年代の水準とは大きな開きがあります。この改善の背景には、気候変動への対応策として耐寒性の高い果樹品種の導入や、農業技術の改善が進められたことが考えられます。しかし、それでも気候リスクや国内農業基盤の弱体化を完全に克服したとは言えません。
スロバキアのナシ生産量の推移を他国と比較すると、同じ東ヨーロッパ地域に位置するポーランドやチェコなどでは、隣接地域間での農業協力やEUの補助金を活用した地域農業改革が進められた結果、より安定的な農業生産を実現しています。一方でスロバキアは、生産基盤が脆弱であるため、収穫量が気象条件や市場環境に大きく左右されることが課題となっています。
気候変動により異常気象が増加することが予測される現在と未来において、スロバキアは果樹栽培における生産基盤の強化を図る必要があります。具体的には、耐寒性や病害虫耐性のあるナシ品種の研究開発と導入、灌漑システムの導入による水資源管理の強化、さらには果樹農家への教育プログラムの実施が挙げられます。また、ナシの生産だけでなく、加工品化を進めることで付加価値を高め、国内の農業を持続可能な産業として復興させる試みが効果的です。
さらに、地政学的観点では、スロバキアのEU加盟国としての地位を活かし、近隣諸国との協力関係を構築することが重要です。地域共通の農産物市場を形成し、農業ノウハウや資源を共有することで、生産量を安定させつつ、輸出用の果樹生産の活性化を目指すべきです。このような取り組みは、スロバキア国内の失業率改善や地元経済の強化にも寄与する可能性があります。
しかし、これらの政策実行には政府および国際機関の財政的支援が必要不可欠です。スロバキアの農業政策担当者は、気候変動適応策と連携した農業改革プログラムを策定し、EUや各国の支援の下で進めるべきです。これにより、スロバキアにおけるナシ生産が再び安定し、自国農業の競争力を向上させる道が開けるでしょう。