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スロバキアのキャベツ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、スロバキアにおけるキャベツ生産量は、1990年代中盤から1999年にかけて急成長していましたが、2000年代初頭から徐々に減少し始め、2010年代以降は特に急激な落ち込みを見せています。2022年にはわずか7,830トンとなり、ピーク時の1999年の198,469トンと比較すると、約96%減少していることが明らかとなりました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 7,420
-5.24% ↓
2022年 7,830
-25.99% ↓
2021年 10,580
1.05% ↑
2020年 10,470
-25.95% ↓
2019年 14,140
-9.3% ↓
2018年 15,590
-14.46% ↓
2017年 18,225
8.55% ↑
2016年 16,789
71.4% ↑
2015年 9,795
-40.32% ↓
2014年 16,413
7.72% ↑
2013年 15,237
24.19% ↑
2012年 12,269
-66.48% ↓
2011年 36,600
-21.65% ↓
2010年 46,711
-6.93% ↓
2009年 50,188
-36.15% ↓
2008年 78,602
1.81% ↑
2007年 77,206
-11.96% ↓
2006年 87,693
3.81% ↑
2005年 84,472
-0.9% ↓
2004年 85,242
-1.47% ↓
2003年 86,510
2.85% ↑
2002年 84,109
-34.56% ↓
2001年 128,531
30.3% ↑
2000年 98,644
-50.3% ↓
1999年 198,469
25.76% ↑
1998年 157,810
39.02% ↑
1997年 113,512
17.18% ↑
1996年 96,871
10.33% ↑
1995年 87,803
5.7% ↑
1994年 83,069
-10.45% ↓
1993年 92,765 -

スロバキアのキャベツ生産量は、この約30年間で大きな変動を経験しています。1990年代後半には農業生産の増加と市場拡大により、生産量が大幅に増加しました。1999年の198,469トンという記録は、同国がキャベツ栽培に力を入れていた時期を反映しています。しかし、その後急激な減少が見られ、2022年には7,830トンという歴史的に低い水準に達しました。この下落の背景には、農業政策の変化、農村労働力の減少、国内外市場との競争激化、異常気象の影響などが挙げられます。

まず、スロバキアの農業が経験した政策面での変化について触れます。同国は2000年代に欧州連合(EU)に加盟しましたが、新しい農業補助政策は一部の農産物に重点を置く形となり、キャベツを含む特定作物への支援が減少しました。この影響で、農家は栽培面積を縮小し、より収益性の高い作物や家畜へと転換を図る傾向が増えました。さらに、農村地域から都市部への人口移動により、農業労働力の確保も困難となりました。

また、地球温暖化に伴う異常気象もキャベツ生産に大きな影響を与えています。特に、干ばつや豪雨といった極端な天候条件が、収穫量に直接的な負担をかけました。さらに、キャベツという作物は冷涼な気候を好むため、全体的な気温上昇が栽培に適した季節や地域を縮小させています。この種の気候リスクにより、生産量を安定させることが難しくなっています。

世界市場でも競争が激化する中、近隣諸国であるポーランドやハンガリーでは、安定したキャベツ生産と輸出を維持していることから、スロバキア国内市場への輸入が増えました。日本や中国、韓国といったアジア諸国でもキャベツを重要な野菜と位置づけ、気候適応型の生産技術や新しい育種法に投資しています。このような取り組みが、スロバキアとの生産量や市場競争力の差をさらに広げています。

キャベツ生産量の減少はスロバキアの農業経済に留まらず、同国の食料自給率や食生活にも影響を及ぼしかねない懸念があります。特に、キャベツはスロバキア料理において伝統的な食材であり、この減少は文化的影響も与え得ます。この課題への対応として、地域農業の再活性化や若年層の農業参加を促す政策が重要になるでしょう。また、気候変動に適応するキャベツ品種の研究開発や、安定した潅漑技術の導入も検討すべきです。

総合的に見て、スロバキアのキャベツ生産の低迷は、単なる農業の構造的変化だけでなく、気候変動、国際競争、政策の優先順位という複数の要因が絡み合っています。今後、スロバキアがキャベツ生産を復活させるためには、地域農業の競争力を長期的に高めるための適応策が不可欠です。国際協力を通じて技術移転を進め、EU内外のマーケットで独自の地位を確立する努力が必要となります。また、地政学的なリスク軽減と食料安全保障との関連を視野に入れた柔軟な政策も求められます。