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セルビアの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、セルビアの桃およびネクタリン生産量は、2006年から2015年にかけて全体的に増加傾向を示していましたが、2016年以降、特に2020年以降は大幅に減少しています。特に2021年から2023年の生産量は4万5千トン前後と著しく減少し、これまでのピーク時と比較するとおよそ半減している状況です。この減少傾向は農業施策や気候条件、さらには地域の地政学的背景と関連していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 44,740
-1.42% ↓
2022年 45,384
3.3% ↑
2021年 43,933
-25.15% ↓
2020年 58,692
-16.37% ↓
2019年 70,181
-4.72% ↓
2018年 73,657
-8.59% ↓
2017年 80,578
-2.68% ↓
2016年 82,795
-15.62% ↓
2015年 98,119
7.41% ↑
2014年 91,348
0.37% ↑
2013年 91,008
41.5% ↑
2012年 64,317
-14.51% ↓
2011年 75,233
9.61% ↑
2010年 68,636
-11.13% ↓
2009年 77,230
23.24% ↑
2008年 62,666
-4.51% ↓
2007年 65,624
10.99% ↑
2006年 59,127 -

桃およびネクタリンの生産量推移は、セルビア農業の現状と課題を如実に物語っています。2006年の生産量59,127トンからスタートし、2015年には過去最高の98,119トンに到達しました。この数値は、セルビアがヨーロッパ市場向けの果実生産国として注目されるようになった時期を示しています。しかし、2016年以降、生産量は不安定化し、特に2020年の58,692トンを境に顕著な減少傾向が見られるようになりました。その後も2021年から2023年にかけて、4万トン台にまで落ち込んでいます。

生産量の推移に影響を与える要因としては、まず気候変動が挙げられます。セルビアは近年、夏季の猛暑や干ばつが頻発しており、果実の成長に必要な水資源が不足しています。また、2020年代初頭には欧州全域で農業被害を伴う異常気象が観察されており、これがセルビアの桃およびネクタリンの栽培に深刻な影響を与えたと推測されます。さらに、冬季の不安定な気温や遅霜も、開花と収穫時期に悪影響を与えた可能性が高いです。

地政学的な観点からは、地域における経済的な不安定性や政治的な緊張も見逃せません。バルカン半島全体での地政学的な不安がセルビアの農業輸出に支障をきたしており、特に輸出規制や物流の問題は生産意欲の低下につながっています。さらに、欧州が近年直面したエネルギー価格の高騰や農業用肥料不足もコスト圧力として影響を及ぼしたと考えられます。

一方で、2020年以降の新型コロナウイルスの拡大によるパンデミックも影響を与えました。物流やサプライチェーンの混乱に加え、労働力不足が果樹園経営に影響し、収穫量減少の一因となったと考えられます。この問題は、他の農産品を手掛けるヨーロッパ諸国でも共通して見られた課題でした。

この状況を改善するためには、まず気候変動対策を中心とした農業政策が求められます。灌漑システムの近代化や水資源管理の強化、気象災害に強い品種の研究・導入が必要不可欠です。また、政府および国際機関による農家への財政的支援や補助金制度の充実も効果的な施策となります。

さらに、地域協力の枠組みを強化し、他のバルカン諸国と連携して市場拡大と物流の効率化を図ることも有効です。デジタル技術を活用したスマート農業の推進や、国際市場向けの販路開拓努力も重要でしょう。また、若年層の農業参入を促すための教育プログラムやインセンティブ提供も、生産力回復のための鍵となるかもしれません。

結論として、セルビアは桃およびネクタリン栽培において厳しい課題に直面しているものの、適切な政策と地域間協力によって生産量減少の歯止めをかけることは可能です。それによって、ヨーロッパ市場における競争力を維持するとともに、農業部門の持続可能な発展を実現することが期待されます。