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セルビアのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、セルビアのテンサイ(甜菜)生産量は2006年の3,188,905トンから2023年の2,040,624トンまで全体的に減少傾向を示しています。特に2010年の3,324,847トンがピークとなり、その後は年によるばらつきが見られるものの、長期的に見ると減少が続いています。2022年には1,667,107トンと著しく落ち込みましたが、2023年にはやや回復しました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,040,624
22.41% ↑
2022年 1,667,107
-18.61% ↓
2021年 2,048,190
1.49% ↑
2020年 2,018,215
-12.45% ↓
2019年 2,305,316
-0.86% ↓
2018年 2,325,303
-7.49% ↓
2017年 2,513,495
-6.35% ↓
2016年 2,683,860
22.93% ↑
2015年 2,183,194
-37.76% ↓
2014年 3,507,441
10.3% ↑
2013年 3,180,008
28.07% ↑
2012年 2,482,962
-12.01% ↓
2011年 2,821,919
-15.13% ↓
2010年 3,324,847
18.85% ↑
2009年 2,797,596
21.65% ↑
2008年 2,299,770
-28.28% ↓
2007年 3,206,380
0.55% ↑
2006年 3,188,905 -

セルビアのテンサイ生産量は、同国の農業セクターの重要な指標として位置付けられており、この推移には気候変動、農業政策、市場動向など複数の要因が影響を与えています。データからは、2006年から2010年にかけて比較的安定して高い生産量を維持していたものの、2010年以降、全体的な減少傾向が顕著となっています。特に2022年の1,667,107トンは最低水準となり、これが農業部門に与えた影響は無視できません。

この減少の背景には、天候の不安定さや干ばつなどの極端な気象条件が関係していると考えられます。セルビアを含むバルカン半島では近年、気候変動に伴い気温の上昇や降水量の偏りが顕著となっており、農作物の収穫に大きな影響を及ぼしています。また、土壌の劣化や農業インフラの老朽化もテンサイ生産にとって重要な課題です。例えば適切な灌漑(かんがい)システムの不足は、干ばつ時の収穫量減少をさらに加速させる要因となっています。

さらに、セルビアでは農業に対する国の支援や補助金が充分でない場合があり、これも生産量を低下させる一因と考えられます。隣国のハンガリーやルーマニアなどと比較すると、EU加盟国の補助金政策が有利に働いている状況もあり、競争上の不利が生じている可能性があります。一方で、セルビアのようにEU未加盟の国では、国際市場での競争力を上げるための独自の政策が求められます。

2023年には生産量が多少回復したものの、長期的な観点から課題は依然として多いです。具体的には、気候変動に対応した耐病性や高収量品種への切り替え、土壌保全技術の導入、また最新の灌漑技術の広範な採用が必要不可欠です。さらに、地域間協力の枠組みを活用し、近隣諸国との知識交換や技術提供を行うことも有効でしょう。

加えて、地政学的背景もセルビアの農業に一定の影響を及ぼしています。特にウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇や農業資材の供給問題は、肥料や燃料を必要とするテンサイ生産にも影響を与えています。このような状況下で安定した生産を維持するためには、国内での資源循環型の農業推進やエネルギー効率の高い生産技術の導入が鍵となります。

今後の対策としては、政府による農業分野への支援を増やすことが急務です。具体的には、気候変動への適応計画の策定、農業従事者への教育や資源提供を通じた持続可能な農業の推進が重要となります。また、国際機関やEU諸国との協力を通じて、市場アクセスの改善や生産コストの削減を目指すことが求められます。これらの対策を実行に移すことで、セルビアのテンサイ生産量の回復と農業全体の発展が期待できるでしょう。