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セルビアの馬肉推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、セルビアの馬肉生産量は、2013年の120トンをピークに減少傾向が続き、2022年には28トンと最低値を記録しました。しかし、2023年には46トンとやや回復の兆しを見せています。この減少の背景には、消費動向の変化や農業構造の変化などがあると考えられます。

年度 (トン) 増減率
2023年 46
64.57% ↑
2022年 28
-29.5% ↓
2021年 40 -
2020年 40 -
2019年 40 -
2018年 40 -
2017年 40
-20% ↓
2016年 50
-44.44% ↓
2015年 90
28.57% ↑
2014年 70
-41.67% ↓
2013年 120 -

今回公表されたデータを見ると、セルビアの馬肉生産量はここ10年間で著しく減少していることが明らかになりました。2013年には120トンもの馬肉が生産されていたのに対し、近年ではその1/3以下にまで落ち込んでいます。特に2013年から2017年にかけては急激な減少が目立ち、2017年以降の数値は40トン前後でほぼ横ばいを維持していました。ただし2022年には28トンとさらに減少したものの、2023年には46トンへ回復しています。この点において、新たな変化の兆候が見られると言えるでしょう。

この動向には、複数の背景が考えられます。まず一つ目は、市場や消費者の嗜好の変化です。セルビアでは伝統的に肉料理が多く消費されていますが、牛肉や豚肉に比べると、馬肉は必需性が低いため需要が減少している可能性があります。日本や韓国では馬肉はニッチな食材で、消費量は少ない一方、イタリアやフランスでは一定の需要のある高級食材として残っています。このような国々と比較すると、セルビア国内市場における馬肉のポジションが相対的に弱まっていることが分かります。

加えて、馬の飼育や農業構造の変化が影響を与えている可能性も大いに考えられます。セルビアでは過去10年間に渡り、農業の機械化が進み、伝統的な家畜を用いた農業が縮小してきました。これに伴い、馬の飼育自体が減少し、その結果として馬肉生産量も減少していると考えられます。この点、ドイツやイギリスなどのヨーロッパ諸国でも類似の農業構造改革が進み、馬に対する需要が減少した例が見られます。

また、地政学的背景も影響を与えている可能性があります。セルビアはバルカン半島に位置し、EU加盟を目指す国のひとつです。この地域では過去の紛争や経済的困難が影響を残しており、農業・食糧政策はしばしば周辺国や国際的な圧力に左右されます。また、近年世界的に注目されている気候変動の影響による農業生産環境の変化も関係している可能性があります。例えば、干ばつや水不足などが馬の飼育に影響を及ぼしているかもしれません。

一方、2023年に生産量が46トンに回復した理由については、一時的な国内需要の増加や、輸出需要の変化が影響しているかもしれません。特に、隣国との貿易や新しいマーケットへの売り込みが成功した可能性が考えられます。また、政府や地方自治体が一部支援政策を実施した影響も排除できません。

今後の課題としては、馬肉の需要と供給のミスマッチを是正する取り組みが挙げられます。例えば、国内消費の促進策として、伝統料理や高付加価値商品の開発が有効と考えられます。また、輸出市場の開拓に向けた国際的な商業展開や、馬の飼育に適した地域環境整備も重要です。さらに、気候変動への対応として、馬の飼育に対する持続可能な資源利用計画や農業技術の導入が検討されるべきでしょう。

結論として、セルビアにおける馬肉生産量の減少は、消費者嗜好の変化、農業構造の変化、地政学的背景など複数の要因が重なった結果であると考えられます。しかし、2023年には一時的な回復が見られることから、今後の政策次第では再び安定した生産基盤を構築する可能性も見えてきます。政府や生産者、消費者が一丸となり、地域特性を活かした持続可能な馬肉産業の再構築に向けた努力が求められています。