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セルビアのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に公表した最新データによると、セルビアのキュウリ類生産量は2006年の66,709トンを皮切りに、2011年の71,761トンでピークを記録しましたが、その後減少傾向にあります。特に2018年以降は3万トン以下で停滞しており、2023年も29,675トンと低迷しています。この減少傾向には、気候変動や経済的要因、さらには農業従事者の減少などが影響している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 29,675
-3.5% ↓
2022年 30,751
5.39% ↑
2021年 29,177
-6.72% ↓
2020年 31,281
5.28% ↑
2019年 29,711
-30.16% ↓
2018年 42,539
-26.6% ↓
2017年 57,957
5.26% ↑
2016年 55,059
4.55% ↑
2015年 52,664
-0.02% ↓
2014年 52,672
-17.3% ↓
2013年 63,687
15.05% ↑
2012年 55,356
-22.86% ↓
2011年 71,761
2.32% ↑
2010年 70,136
5.05% ↑
2009年 66,762
7.86% ↑
2008年 61,898
3.59% ↑
2007年 59,754
-10.43% ↓
2006年 66,709 -

セルビアのキュウリ類生産は2006年から2011年にかけては順調に増加を見せ、71,761トンという最大生産量を記録しました。しかし、その後の減少にはいくつかの背景が存在します。2012年からは5万トン台へと移行し、2014年の52,672トンを境に一時的な回復は見られるものの、再び減少期に転じています。そして2018年を分岐点として生産量は3万トンを割り込み、2023年には29,675トンとなりました。

このような生産量の減少にはいくつかの主な要因が挙げられます。ひとつは気候変動の影響です。セルビアは地中海性気候と大陸性気候が混在する独特な気候帯に属しており、近年の異常気象や干ばつが農作物全般、特にキュウリ類の生育に悪影響を及ぼしている可能性があります。また、キュウリの栽培には適切な水管理が必要ですが、干ばつや水資源の不足は生産性の低下に寄与していると考えられます。

加えて、農業セクターの構造変化も重要な要因です。都市化の進展や魅力的な雇用機会が農業以外の分野にシフトしていることから、農業従事者の不足が顕著です。このことは、小規模農家が中心となっているセルビアの農業にとって特に深刻な課題です。さらに、経済的な要因も無視できません。例えば、農業用資材の価格上昇や生産インフラの整備の遅れが障壁として挙げられます。

一方で、近隣諸国やその他の主要生産国の動向と比較すると、生産量の減少トレンドはセルビア独自の事情だけでなく、東欧全体で同様の課題も抱えていることが確認されています。他国の事例として、トルコや中国などは輸出政策や効率的な栽培技術の採用によってキュウリ生産を安定化させています。これに対し、セルビアではこれらの施策が十分に普及しているとは言い難いのが現実です。

今後の対策として、まずは気候変動への適応策が優先されるべきです。具体的には、排水設備や温室栽培技術の導入によって気象リスクを軽減することが重要です。また、効率的な灌漑(かんがい)システムを設置することで、水資源の利用効率向上も図れます。そのほかにも、政府や国際機関からの資金援助や研修プログラムを通じて、若年層が農業に従事できる仕組みを構築することが必要です。

さらに、セルビアは地政学的にヨーロッパ市場へのアクセスが比較的容易であり、地元産キュウリのブランド化や有機農産物市場へのシフトが競争力強化につながる可能性があります。近年の消費者動向を分析すると、健康志向の高まりから高品質な野菜の需要が増加傾向にあります。これを念頭に置き、セルビアの輸出戦略を見直すことは市場拡大のチャンスをもたらします。

結論として、セルビアのキュウリ生産量減少は複数の要因が絡み合った結果であり、短期的な対策だけでなく、中長期的な視点での産業全体の強化が求められます。政府および国際機関が協力して支援を行い、気候変動への挑戦や農業従事者への教育支援を通じて、生産量の改善と持続可能な農業の実現を目指すべきです。これにより、国内の経済にも前向きな影響を及ぼすことが期待されます。

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