2025年、再燃した米中関税戦争とは
関税発動の経緯と数値で見る実態(2025年)
- アメリカの措置:2025年4月、米通商代表部(USTR)は中国製品の大多数に対して最大145%の関税を課す包括的関税政策を発表。背景には、国内産業保護と経済安全保障強化の狙いがあります。
- 中国の対抗:中国商務部は即日対抗し、アメリカ製品に対して最大125%の報復関税を決定。農産物、航空機部品、ハイテク機器などが対象。
- WTOの分析(2025年4月) 世界貿易機関(WTO)は、今回の関税応酬により「米中間の物品貿易は最大80%減少する恐れがあり、世界全体の貿易量も前年比0.2%縮小」との見通しを発表。また、関税政策による供給網の混乱は「経済圏の分断とブロック化」を引き起こす重大リスクであると警告しました。
注目ポイント:トランプ関税の影響。2018年の「トランプ関税」政策は、現在の関税バトルの前段階とも言えます。当時から米中の貿易摩擦は激化の一途をたどり、2025年にはその余波がさらに強化されるかたちとなっています。
実は“180年の歴史”? 米中関税のルーツを探る
望厦条約とアメリカの東アジア進出(1844年)
- アメリカが清国と締結した望厦条約(1844年)は、初の不平等条約として知られ、「領事裁判権」「最恵国待遇」などの特権を獲得しました。これにより、アメリカは清国市場における影響力を急速に強めました。
- その背景には、1842年のアヘン戦争の終結と南京条約の締結があります。南京条約によってイギリスが清国に与えた政治的・経済的影響が、他の列強(特にアメリカ)に連鎖的に波及し、望厦条約はその延長線上にあるとされています。
豆知識:望厦条約によってアメリカは五港開港を享受し、さらに関税協定権や12年ごとの条約改定権も獲得。これがアメリカのアジア市場進出の足がかりとなり、現代の米中経済関係の源流の一つと考えられています。
世界恐慌下の保護主義:スムート・ホーリー関税法(1930年)
- アメリカが平均40%以上の高関税を課す法律を制定。
- 各国が報復し、世界的な貿易縮小と大不況を招いた。
豆知識:2025年の高関税政策にも、この保護主義の再来という指摘が。
なぜ今、関税バトルが再燃?背景にあるキーワードとは
米国と中国の主張
- 米国:「知的財産権侵害」「国家補助金」などを理由に中国を非難。
- 中国:「一方的な制裁」「WTOルール違反」として米国に反発。
背景キーワードで読み解く経済戦略
デカップリング(Decoupling):
米中両国が互いへの経済的依存を減らし、自国主導のサプライチェーン(供給網)を再構築しようとする動き。主に経済安全保障や地政学リスク回避を目的としている。
フレンドショアリング(Friend-shoring)
信頼性が高く、価値観を共有する国々とのみ経済的な結びつきを強化し、政治的にリスクの少ない取引相手と供給網を構築する戦略。近年、アメリカはインド、ベトナム、メキシコなどとの経済連携を重視している。
関税が上がるとどうなる?~日常生活への影響~
価格上昇がじわじわと:
家電、衣類、食料品、医薬品など多くの生活必需品において、関税によるコスト増が発生。これにより、企業はコストを価格に転嫁し、最終的には消費者が負担を被る形になります。
実際の影響額:
米国消費者1世帯あたり、年間約1,300ドルの追加支出が発生するとの試算(2025年・米経済分析局)。これは日本円で約20万円弱に相当し、特に中間所得層への影響が大きいとされています。
物流・航空券も高騰:
部品の輸送コストや国際物流の遅延も加わり、航空券や輸入食品の価格上昇に拍車をかけています。
- 豆知識:ただし、スマートフォンや一部の半導体は、ベトナムやインドなど他国生産への切り替えが進んでおり、価格上昇が抑えられる可能性もあります。
~~100年たっても、結局「関税バトル」は人間ドラマ~~
2025年の関税バトルは、新しいようでいて実はとても“古くて人間くさい”争い。
国家同士の「経済のかけひき」は、19世紀の清朝時代から変わらないパターンで繰り返されています。
ニュースで「関税」や「報復」といった言葉が出てきたら、ぜひその背後にある「歴史」を思い出してください。
これから激化する米中の関税をめぐるバトル、そして経済戦争は、私たちの暮らしにも大きな影響を与えかねません。
今後、どうなるのか――目が離せません。