国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ウルグアイの羊肉生産量は長期的に見ると大幅に減少しています。1961年の生産量は56,000トンで始まり、1970年代には一時的に増大したものの、1980年代以降、安定しながらも徐々に減少し、2000年代に急減しました。2010年代以降はさらに低水準に落ち着き、2023年には22,285トンにとどまりました。このデータはウルグアイの農業・牧畜業の変化や市場需要、さらには地政学的影響を反映しています。
ウルグアイの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 22,285 |
-7.43% ↓
|
2022年 | 24,074 |
-2.29% ↓
|
2021年 | 24,637 |
4.22% ↑
|
2020年 | 23,639 |
33.87% ↑
|
2019年 | 17,658 |
0.55% ↑
|
2018年 | 17,562 |
21.91% ↑
|
2017年 | 14,406 |
0.56% ↑
|
2016年 | 14,326 |
-1.35% ↓
|
2015年 | 14,521 |
-39.48% ↓
|
2014年 | 23,994 |
-12.62% ↓
|
2013年 | 27,458 |
42.27% ↑
|
2012年 | 19,300 |
-5.1% ↓
|
2011年 | 20,337 |
-1.1% ↓
|
2010年 | 20,563 |
-37.15% ↓
|
2009年 | 32,718 |
8.98% ↑
|
2008年 | 30,022 |
10.08% ↑
|
2007年 | 27,272 |
-12.03% ↓
|
2006年 | 31,000 |
-6.06% ↓
|
2005年 | 33,000 |
24.51% ↑
|
2004年 | 26,504 |
-1.6% ↓
|
2003年 | 26,934 |
-12.66% ↓
|
2002年 | 30,837 |
-39.77% ↓
|
2001年 | 51,200 |
0.39% ↑
|
2000年 | 51,000 | - |
1999年 | 51,000 |
-7.27% ↓
|
1998年 | 55,000 |
-8.33% ↓
|
1997年 | 60,000 |
-6.25% ↓
|
1996年 | 64,000 |
23.08% ↑
|
1995年 | 52,000 |
-21.21% ↓
|
1994年 | 66,000 |
3.13% ↑
|
1993年 | 64,000 |
-0.6% ↓
|
1992年 | 64,385 |
2.97% ↑
|
1991年 | 62,525 |
2.25% ↑
|
1990年 | 61,152 |
6.1% ↑
|
1989年 | 57,638 |
2.7% ↑
|
1988年 | 56,125 |
6.73% ↑
|
1987年 | 52,584 |
1.87% ↑
|
1986年 | 51,620 |
15.3% ↑
|
1985年 | 44,770 |
5.04% ↑
|
1984年 | 42,622 |
-0.88% ↓
|
1983年 | 43,000 |
-10.42% ↓
|
1982年 | 48,000 |
-2.04% ↓
|
1981年 | 49,000 |
48.48% ↑
|
1980年 | 33,000 |
10.93% ↑
|
1979年 | 29,748 |
-21.72% ↓
|
1978年 | 38,000 |
-2.56% ↓
|
1977年 | 39,000 |
1.83% ↑
|
1976年 | 38,300 |
-9.73% ↓
|
1975年 | 42,430 |
-18.09% ↓
|
1974年 | 51,800 |
7.92% ↑
|
1973年 | 48,000 |
-27.9% ↓
|
1972年 | 66,571 |
-4.4% ↓
|
1971年 | 69,633 |
-20.15% ↓
|
1970年 | 87,208 |
47.81% ↑
|
1969年 | 59,000 |
-11.52% ↓
|
1968年 | 66,680 |
27.89% ↑
|
1967年 | 52,138 |
-21% ↓
|
1966年 | 66,000 |
13.79% ↑
|
1965年 | 58,000 |
9.43% ↑
|
1964年 | 53,000 |
1.92% ↑
|
1963年 | 52,000 |
-9.57% ↓
|
1962年 | 57,500 |
2.68% ↑
|
1961年 | 56,000 | - |
ウルグアイは古くから羊肉の生産が盛んな国で、特に1960年代から1970年代にかけて高い生産量を記録していました。1961年には56,000トン、1970年には記録的な87,208トンという生産量に達し、輸出市場でも重要な位置を占めていました。しかし、その後の数十年間で生産量は急激に減少。この長期的な減少の背景には、複数の複雑な要因が関与しています。
まず、ウルグアイにおける畜産業の優先順位の変化が挙げられます。世界的な需要と価格動向に伴い、同国では羊の代わりに牛の飼育に力を入れるようになりました。牛肉市場がより高い収益性を示す中で、羊肉は次第に国内市場や輸出市場での競争力を失いつつあります。また、農地の利用の変化も影響しています。穀物や大豆といった作物の生産が増加し、牧草地が縮小された結果、羊の頭数が減少しました。
さらに、1980年代以降、気候変動に起因する降水量や気温の変化が牧畜業に影響を及ぼしました。不安定な気候条件によって牧草地がダメージを受け、生産効率が低下しました。これに加え、2000年以降の急激な減少は、世界市場での競争激化や疾病の発生が影響しています。特に伝染性疾病や動物ウイルスは、羊の個体数の大幅な減少に繋がりました。
地政学的リスクも見逃せません。ウルグアイは、隣国との貿易関係や国際市場の変動に大きく依存しています。中国やヨーロッパといった主要な輸出先の需要が減少したり、輸出規制が強化された影響で、羊肉市場へのアクセスが制限されました。例えば、アジア諸国、特に中国では豚肉や鶏肉の需要が高まる一方で、羊肉の輸入は縮小傾向にあります。
もっとも課題となるのは、持続性のある生産体制の確立です。羊肉産業の再興には、複数の側面からの取り組みが必要と言えます。一つは、高付加価値製品としての羊肉やその副産物(羊毛や乳製品)の開発です。これにより、輸出市場でのブランド価値を高めることができます。また、家畜に適した環境を整備するために、水資源や土地管理の改善も欠かせません。例えば、気候変動に対応した牧草地の復元や、生産性の高い品種の導入は有効な道筋と言えます。
さらに、ウルグアイ国内の若年層が畜産業に関心を持てるよう教育制度の強化も重要です。動物の飼育からマーケティングまで一貫した知識を提供することで、地域経済の活性化が期待されます。また、東南アジアや中東といった新興市場への輸出促進プログラムを通じて、新たな販路の開拓を目指すべきでしょう。他国と比較すると、アメリカやオーストラリアはすでに羊肉市場で強い地位を築いていますが、ウルグアイとしても独自の魅力を発信し、市場での競争力を確保することが必要です。
最後に、疫病や自然災害のリスクを軽減するため、効果的なモニタリング体制や予防策の導入が欠かせません。2020年以降、新型コロナウイルスの影響によって国内の生産および輸出が停滞した状況からも、こうした外的ショックに対応できる強靱な産業基盤を築くことが重要です。
総じて、ウルグアイの羊肉生産量の推移は、地元の牧畜業と輸出市場の動向を如実に反映しています。この減少傾向を克服し、長期的な成長を実現するためには、革新的な政策と地産地消の促進、そして新しい市場への参入を組み合わせた戦略が求められるでしょう。政府の支援だけでなく、国際的な協力枠組みも必要な一方で、ブランド価値の向上という長期的な視点も欠かせません。