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北マケドニアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、北マケドニアの羊肉生産量は、1990年代初頭には年間12,000トン以上で推移していましたが、1997年以降は急激な減少に転じました。その後は増減を繰り返しながらも、2015年以降は3,000トン台に停滞し、近年は微増傾向を見せています。2022年には3,992トンまで回復しましたが、2023年にはやや下がり3,891トンとなっています。このデータは、北マケドニアの農業経済に関する重要な指標として、羊産業の現状と課題を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,891
-2.53% ↓
2022年 3,992
28.9% ↑
2021年 3,097
-2.7% ↓
2020年 3,183
-6.16% ↓
2019年 3,392
-1.57% ↓
2018年 3,446
0.7% ↑
2017年 3,422
-8.43% ↓
2016年 3,737
-6.11% ↓
2015年 3,980
-15.8% ↓
2014年 4,727
0.04% ↑
2013年 4,725
-15.63% ↓
2012年 5,600
-12.09% ↓
2011年 6,370
27.4% ↑
2010年 5,000
-4.31% ↓
2009年 5,225
0.4% ↑
2008年 5,204
-19.88% ↓
2007年 6,495
-9.77% ↓
2006年 7,198
4.97% ↑
2005年 6,857
-2.46% ↓
2004年 7,030
19.25% ↑
2003年 5,895
27.13% ↑
2002年 4,637
-21.41% ↓
2001年 5,900
31.11% ↑
2000年 4,500
2.37% ↑
1999年 4,396
-21.68% ↓
1998年 5,613
-14.8% ↓
1997年 6,588
-30.91% ↓
1996年 9,536
-4.41% ↓
1995年 9,976
-23.56% ↓
1994年 13,050
1.3% ↑
1993年 12,882
3.94% ↑
1992年 12,394 -

北マケドニアは、歴史的に農牧業が重要な産業であり、特に羊飼育や羊肉の生産が国内経済において一定の役割を果たしてきました。しかし、羊肉生産量の推移を見ると、1990年代前半の年間概ね13,000トンから、1997年以降に急激な生産量の低下が確認され、その後数十年にわたりほぼ減少傾向が続いています。20世紀後半には羊飼育が国内および周辺地域の生活基盤でもありましたが、地政学的リスクや経済の変化が影響を与えた可能性が考えられます。

1997年の6,588トン以降の急減は、旧ユーゴスラビア崩壊に伴う地域的な衝突や経済の停滞が大きく影響したと推測されます。この地政学的背景により、牧畜のインフラや物流網へのダメージ、生産者の移住や減少、消費市場の縮小などが原因となった可能性があります。また、2000年以降、北マケドニアが徐々に安定を取り戻すに従い、一時的な回復が見られましたが、近年は依然として水準が低く、3,000トン台に留まる状況が続いています。この減少は、国内市場の需要縮小、海外輸出の競争力低下、気候変動による牧草地の劣化、若年層の農業離れなどの複合的要因が絡んでいます。

比較として、隣国のギリシャや他のヨーロッパ諸国でも羊飼育の重要性は類似していますが、それらの国々では、EUの農業補助金や輸出市場拡大を活用して競争力を維持または向上させています。この点で、北マケドニアが競争に遅れをとっている現実が浮き彫りになります。例えば、ギリシャの羊肉生産量はこの地域でトップクラスを誇り、国内外市場での需要を獲得しています。

こうした中、北マケドニアが抱えている課題は多岐にわたります。一つは、収益性の低下により農家が転業を余儀なくされるリスクです。この流れを食い止めるためには、国際市場での競争力を強化する必要があります。その際には、より効率的で持続可能な牧畜技術の導入と、若年層が農業を魅力的と感じられる政策が求められます。また、地球温暖化や異常気象への対応として、牧草地の保護、生態系への理解を深めた畜産方法の普及も重要です。

さらに、北マケドニアはEU加盟候補国であり、将来的にはEU農業補助金を活用する可能性があります。これに向けて、地域間協力を通じて羊肉産業を再構築することが必須となります。例えば、ギリシャやアルバニアといった周辺国との流通やマーケットの連携を深めることが考えられます。同時に、輸出市場の多角化を図り、新興国への展開を進めることも課題解決の一環となるでしょう。

新型コロナのパンデミック中には、輸出市場の停滞や国内物流の混乱も産業の減速につながった可能性がありますが、これを教訓に持続可能なサプライチェーンの構築や災害対策を進めることも重要です。感染症や紛争といった予測不能な危機の影響を最小限に抑えるため、国内の自給力や備蓄の強化なども検討されるべきです。

最終的に、北マケドニアの羊肉産業は、適切な政策と資源の投資によって競争力を取り戻すポテンシャルを秘めています。国際機関や地域間連携を活かし、羊飼育や肉の生産、輸出を持続可能な形で活性化しなければなりません。例えば、北マケドニア特有のブランド化や認証制度を通じて、海外市場での付加価値を高める取り組みが求められます。このような多角的な対策が実現すれば、北マケドニアの羊肉生産は新たな成長への道を歩むことが可能となるでしょう。