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トルコの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が公開した最新データによると、2023年のトルコの羊肉生産量は569,066トンで、過去60年以上のデータの中で最高値を記録しました。特に2000年代以降、羊肉生産量は着実な成長傾向を示しており、2022年から2023年の1年間だけでも約16%の急増が見られます。一方、1960年代から1990年代の間には不安定な変動が見られ、1990年代前半には特に大幅な減少が記録されました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 569,066
16.29% ↑
2022年 489,354
26.8% ↑
2021年 385,933
11.66% ↑
2020年 345,639
9.32% ↑
2019年 316,170
8.58% ↑
2018年 291,179
10.79% ↑
2017年 262,825
-1.44% ↓
2016年 266,675
6.73% ↑
2015年 249,863
4.69% ↑
2014年 238,670
1.05% ↑
2013年 236,186
7.18% ↑
2012年 220,359
4.85% ↑
2011年 210,171
12.92% ↑
2010年 186,121
-1.26% ↓
2009年 188,496
-2.15% ↓
2008年 192,647
0.64% ↑
2007年 191,428
2.24% ↑
2006年 187,236
-1.73% ↓
2005年 190,539
0.23% ↑
2004年 190,105
-7.01% ↓
2003年 204,441
-6.78% ↓
2002年 219,311
-2.77% ↓
2001年 225,555
102.95% ↑
2000年 111,139
-16.11% ↓
1999年 132,476
-8.45% ↓
1998年 144,703
24.63% ↑
1997年 116,104
18.32% ↑
1996年 98,127
-3.91% ↓
1995年 102,115
-19.15% ↓
1994年 126,306
11.97% ↑
1993年 112,806
-8.2% ↓
1992年 122,887
-4.46% ↓
1991年 128,626
-57.69% ↓
1990年 304,000
-0.98% ↓
1989年 307,000
-0.65% ↓
1988年 309,000
-0.32% ↓
1987年 310,000
-1.43% ↓
1986年 314,500
1.62% ↑
1985年 309,500
1.14% ↑
1984年 306,000
0.86% ↑
1983年 303,400
3.94% ↑
1982年 291,900
1.99% ↑
1981年 286,200
19.55% ↑
1980年 239,400
2.44% ↑
1979年 233,700
-30.59% ↓
1978年 336,700
3.57% ↑
1977年 325,100
3.19% ↑
1976年 315,060
-4.2% ↓
1975年 328,865
14.06% ↑
1974年 288,316
2.97% ↑
1973年 280,000
1.82% ↑
1972年 275,000
-0.36% ↓
1971年 276,000
3.37% ↑
1970年 267,000
1.52% ↑
1969年 263,000
10.04% ↑
1968年 239,000
0.42% ↑
1967年 238,000
-2.86% ↓
1966年 245,000
4.26% ↑
1965年 235,000
2.17% ↑
1964年 230,000
-2.13% ↓
1963年 235,000
1.29% ↑
1962年 232,000
-4.53% ↓
1961年 243,000 -

トルコの羊肉生産は、1961年の243,000トンから始まり、長い年月をかけて現在の569,066トンへと増加しています。ただし、この推移には一貫して上昇していくというよりも、大きな変動が見られる点が特徴です。1960年代から1970年代の間、生産量は多少の年変動を伴いながら、徐々に安定的に増加しました。しかし、1979年の233,700トンへの急落と、それに続く1980年代初頭の回復期は、この時期のトルコ農業に対する内外の経済ショックや制度的変化の影響を反映していると思われます。

また、1990年代前半にかけての大幅な生産量減少は注目すべきポイントです。例えば1991年には128,626トン、1995年にはさらに低い102,115トンが記録され、この時期の社会経済的背景が強く反映されています。このような激しい減少の要因としては、トルコ国内の地政学的リスク、内外需バランスの崩壊、農業支援政策の不足、さらには羊飼いの減少や紛争地域における生産活動の中断などが挙げられます。

2000年代以降は生産量の回復が見られ、特に2010年以降、羊肉の需要増加を背景に再び安定して増加に転じています。この増加は、主として政府による農業・畜産業の振興政策、輸出市場の成長、トルコ国内の消費者嗜好の変化に依存しています。2020年代にはさらに顕著な急増があり、この時期の最大の要因として、新型コロナウイルスの影響による食料安全保障への関心の高まりや、羊肉の栄養価への注目が挙げられます。羊は乾燥地帯でも飼育可能なため、気候変動に伴い干ばつに強い畜産物としても評価されています。

しかしながら、この成長の裏には、いくつかの課題も指摘されています。第一に、産業の集約化が進む一方で、小規模羊農家が市場競争で生き残るのに苦労している点です。この問題は、農家の経済的安定や雇用、地域コミュニティの維持に影響を及ぼしています。次に、気候変動の進行とそれに伴う飼料不足、さらには水ストレスなどの環境課題が生産量の安定性に潜在的なリスクを及ぼしています。

他国との比較に目を向けると、トルコの羊肉生産は、伝統的な地域食文化に基づく内需主導型の発展を特徴としています。中国やインドといったアジアの大国が近年急速に羊肉生産量を拡大し、輸出市場で存在感を高めている一方で、トルコの生産は大部分が国内消費に吸収されています。このため輸出競争力は低いものの、国内の食料安全保障を支える基盤として機能しています。

トルコが今後直面する主な課題としては、生産環境の持続可能性に対応するためのインフラ整備や技術的助言の提供、さらには小規模農家を支援するための包括的政策の立案が挙げられます。具体的な対策として、例えば乾燥地域の効率的な放牧管理技術の導入や、飼料栽培の促進による自己供給率の向上、さらには羊肉の輸出促進策としての国際的マーケティング戦略の強化が考えられます。また、政府と民間企業、さらには研究機関が連携して、気候変動対策の一環としての「適応型畜産」への移行を進めることも重要です。

結論として、トルコの羊肉生産は近年の著しい成長が示すとおり、社会的要請や消費者のニーズに応える可能性を十分に持つ産業です。しかし同時に、これを達成するためには、伝統と現代的ニーズをバランス良く取り入れ、経済的かつ環境的に持続可能な農業システムを築いていく必要があります。国際的な協力や先進的技術の活用も視野に入れながら、この分野のさらなる発展が期待されます。