国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データ(2024年7月更新)によると、セントクリストファー・ネイビスの羊肉生産量は1961年の64トンから1980年代までおおむね安定していましたが、1990年代中盤以降大幅に減少し、一時期は10トン未満にまで減少しました。2023年には16トンに増加したものの、生産量は最盛期の数値から大きく低下しています。このような推移は他国の羊肉生産動向と大きく異なり、地元農業や経済に特有の課題が影響していると考えられます。
セントクリストファー・ネイビスの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 16 |
63.93% ↑
|
2022年 | 10 |
0.83% ↑
|
2021年 | 10 |
-3.2% ↓
|
2020年 | 10 |
28.37% ↑
|
2019年 | 8 |
-17.13% ↓
|
2018年 | 9 |
-3.49% ↓
|
2017年 | 10 |
11.06% ↑
|
2016年 | 9 |
-12.91% ↓
|
2015年 | 10 |
10.42% ↑
|
2014年 | 9 |
23.24% ↑
|
2013年 | 7 |
32.14% ↑
|
2012年 | 6 |
-53.33% ↓
|
2011年 | 12 | - |
2010年 | 12 |
20% ↑
|
2009年 | 10 |
-14.53% ↓
|
2008年 | 12 |
36.05% ↑
|
2007年 | 9 |
-11.34% ↓
|
2006年 | 10 |
-64.3% ↓
|
2005年 | 27 |
-15.09% ↓
|
2004年 | 32 |
-23.81% ↓
|
2003年 | 42 |
-12.5% ↓
|
2002年 | 48 |
-14.29% ↓
|
2001年 | 56 |
194.74% ↑
|
2000年 | 19 |
-45.71% ↓
|
1999年 | 35 |
16.67% ↑
|
1998年 | 30 |
-43.18% ↓
|
1997年 | 53 | - |
1996年 | 53 | - |
1995年 | 53 |
-13.16% ↓
|
1994年 | 61 |
-10.17% ↓
|
1993年 | 68 |
0.24% ↑
|
1992年 | 68 |
0.24% ↑
|
1991年 | 67 |
0.24% ↑
|
1990年 | 67 |
-0.47% ↓
|
1989年 | 68 |
0.24% ↑
|
1988年 | 67 |
0.24% ↑
|
1987年 | 67 |
0.24% ↑
|
1986年 | 67 |
0.24% ↑
|
1985年 | 67 |
0.24% ↑
|
1984年 | 67 |
0.24% ↑
|
1983年 | 67 | - |
1982年 | 67 |
0.24% ↑
|
1981年 | 66 | - |
1980年 | 66 |
0.24% ↑
|
1979年 | 66 | - |
1978年 | 66 |
0.24% ↑
|
1977年 | 66 |
0.24% ↑
|
1976年 | 66 |
0.24% ↑
|
1975年 | 66 | - |
1974年 | 66 |
0.24% ↑
|
1973年 | 66 | - |
1972年 | 66 |
0.24% ↑
|
1971年 | 65 | - |
1970年 | 65 |
0.25% ↑
|
1969年 | 65 |
0.25% ↑
|
1968年 | 65 | - |
1967年 | 65 | - |
1966年 | 65 |
-0.25% ↓
|
1965年 | 65 | - |
1964年 | 65 |
-0.49% ↓
|
1963年 | 66 | - |
1962年 | 66 |
2.5% ↑
|
1961年 | 64 | - |
セントクリストファー・ネイビスの羊肉生産量は、データが始まる1961年から1980年代後半までは安定して60トン台を維持していました。この15年間の間、食肉生産の変動が少なく、地域の需要と供給が一定の範囲でバランスを保っていたことを示しています。しかしながら、このバランスは1994年以降大きく崩れ始め、生産量は急激に減少を辿ります。例えば、1994年には61トンだった生産量が、1998年には30トンと約半減し、2000年には19トンと低迷期を迎えます。その後、一時的な回復も見られるものの減少傾向は続き、2006年以降はほぼ一桁台で推移しています。2023年においては16トンにまで回復しましたが、それでも過去の水準には遠く及んでいません。
この生産量推移には複数の要因が絡んでいると考えられます。まず、地域の農業構造の変化が背景にある可能性があります。セントクリストファー・ネイビスは小さな島国であり、土地資源が限られているため、貴重な土地を他の需要、特に観光業や不動産開発などへ転用することが考えられます。また、家畜飼育を支えるインフラや技術が不足しているといった課題も影響を与えている可能性があります。さらに、気候変動や海洋台風の頻発といった自然災害は直接的に飼育環境や牧草の供給に悪影響を及ぼしていることが予想されます。
他国と比較すると、日本やアメリカ、フランスのような先進国では羊肉の消費量が限定的である一方、中国やニュージーランドのように生産と消費が増加している地域もあります。中国では都市人口の増加に伴う消費者嗜好の変化が、ニュージーランドでは主に輸出需要が生産を拡大しています。しかし、セントクリストファー・ネイビスは小規模な国内市場と輸出基盤の脆弱性に直面しており、これらの国とは明らかな違いが見られます。
この状況を改善するためには、まず国内農業基盤の強化が必要です。具体的には羊の適切な飼育技術の導入や、生産者に対する経済的助成の提供、牧草育成のための環境整備が挙げられます。また、観光業への依存が増える中で、地元の農業製品を観光資源として活用し、地産地消を促進するマーケティング戦略を展開することも有効です。さらに、地域の経済と家畜農業を繋げるため、カリブ海地域全体の協力体制を構築し、輸出市場を拡大する枠組みを作ることも求められます。
地政学的にみると、この地域の小国は天然資源の限界や災害に対する脆弱性に直面しやすい点を考慮する必要があります。仮に気候変動がさらに進む場合、農業環境への影響が強まり羊肉生産の回復は一層困難になる可能性があります。したがって、これを補うために地域間での災害復興支援や協力体制を強化することが将来的に急務といえます。
結論として、セントクリストファー・ネイビスの羊肉生産量の低下は、農業構造の変化、自然災害、地政学的リスクの複合的な影響が原因です。この問題を解決するためには短期的な助成策だけでなく、持続可能な農業政策の策定と実行が必要です。また、地域協力の強化や気候変動への適応策も並行して進める必要があります。これによって、将来、持続可能な羊肉生産環境が整うことが期待されます。