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ポーランドの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによると、ポーランドの羊肉生産量は1960年代から1970年代に一定の規模を保ちながら減少傾向を示し、1990年代以降は急激に減少していました。しかし、2013年以降はわずかな増加傾向が見られ、2023年には1,340トンという数字に達しています。この推移は経済、農業、地政学的背景を反映した結果と考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,340
10.74% ↑
2022年 1,210
6.14% ↑
2021年 1,140
4.59% ↑
2020年 1,090
-3.54% ↓
2019年 1,130
13% ↑
2018年 1,000
11.11% ↑
2017年 900
28.57% ↑
2016年 700 -
2015年 700
-46.15% ↓
2014年 1,300
44.44% ↑
2013年 900 -
2012年 900
-18.18% ↓
2011年 1,100 -
2010年 1,100
-8.33% ↓
2009年 1,200
-14.29% ↓
2008年 1,400
-6.67% ↓
2007年 1,500
15.38% ↑
2006年 1,300
8.33% ↑
2005年 1,200
-29.41% ↓
2004年 1,700
21.43% ↑
2003年 1,400
27.27% ↑
2002年 1,100
-15.38% ↓
2001年 1,300 -
2000年 1,300
-18.75% ↓
1999年 1,600
23.08% ↑
1998年 1,300
-55.17% ↓
1997年 2,900
-43.14% ↓
1996年 5,100
-8.93% ↓
1995年 5,600
-32.53% ↓
1994年 8,300
-52.84% ↓
1993年 17,600
-21.78% ↓
1992年 22,500
-31.82% ↓
1991年 33,000
14.98% ↑
1990年 28,700
28.13% ↑
1989年 22,400
-15.15% ↓
1988年 26,400
-12.58% ↓
1987年 30,200
-1.63% ↓
1986年 30,700
17.62% ↑
1985年 26,100
25.48% ↑
1984年 20,800
20.23% ↑
1983年 17,300
-3.35% ↓
1982年 17,900 -
1981年 17,900
-3.24% ↓
1980年 18,500
-8.87% ↓
1979年 20,300
5.18% ↑
1978年 19,300
12.21% ↑
1977年 17,200
6.83% ↑
1976年 16,100
-5.85% ↓
1975年 17,100
-16.18% ↓
1974年 20,400
-8.11% ↓
1973年 22,200
-4.31% ↓
1972年 23,200
4.04% ↑
1971年 22,300
2.29% ↑
1970年 21,800
-3.96% ↓
1969年 22,700 -
1968年 22,700
8.1% ↑
1967年 21,000
8.81% ↑
1966年 19,300 -
1965年 19,300
1.05% ↑
1964年 19,100
-11.57% ↓
1963年 21,600
-11.84% ↓
1962年 24,500
-4.67% ↓
1961年 25,700 -

ポーランドの羊肉生産量は1961年の25,700トンをピークとする期間を皮切りに、当初は緩やかに、その後は急激に減少してきました。1960年代においては19,000トンから25,000トンの間で維持されており、この時期の安定した生産量は農村部での伝統的な羊の飼育に支えられていました。しかし、1970年代半ば以降、生産量は20,000トンを下回るようになり、1990年代に入ると顕著に減少が加速し、1994年には8,300トン、1997年には2,900トンと、約30年間で生産量が10分の1まで縮小しました。

ポーランドにおける羊肉生産の急減は農業政策の大転換や経済状況の変化から紐解くことができます。1990年代初頭には、旧ソビエト連邦の崩壊と市場経済化の進展に伴い、羊肉需要の減少が始まりました。この時期、ポーランド国内では牛肉や豚肉の消費が主流となり、羊肉の需要は限定的でした。特に高度な競争力を持たない羊飼育業者は縮小を余儀なくされ、小規模経営で行われていた伝統畜産の衰退が加速しました。

さらに、この期間の政策変更も重要な背景となっています。EU加盟後の農業支援政策の選好により、他の家畜や作物が優先された結果、羊肉生産業への投資が相対的に抑制されました。また、地政学的にも、周辺国での羊毛や羊肉の生産の競争が激化し、輸入品が国内市場を一層圧迫しました。

しかし、21世紀に入り、羊肉生産は底を迎えた後、徐々に回復の兆しを見せ始めています。2013年以降では小規模ながらも増加傾向が見られ、2023年には1,340トンに達しました。この回復の理由は主に健康志向の高まりと、新たな消費動向にあります。近年、羊肉は健康的で高たんぱく質の肉として見直される傾向があり、一部の高所得層や都市部の消費者に人気が出始めています。

ポーランドが今後羊肉生産量を増加させるためにはいくつかの課題に取り組む必要があります。まず、消費者教育を通じて、羊肉の健康的な側面をアピールし、その需要を喚起することが求められます。さらに、小規模農家の支援体制の強化、たとえば専用の補助金の確保や生産者組合の形成によって生産性を向上させる必要があります。このような政策は、フランスや英国など羊肉消費が多い国で成功を収めている例を参考にすることができるでしょう。

また、地政学的観点からみると、気候変動が牧草地の変化や利用可能な土地面積に影響を与えるリスクも無視できません。そのため、持続可能な農業技術の導入や効率的な土地利用計画が当面の課題となるでしょう。EU加盟国間の協力を通じた資源共有も重要です。

結論として、ポーランドの羊肉生産の推移は、過去60年にわたる農業構造変化と市場特性を色濃く反映しています。将来的な課題を克服するためには、国内外の経済や消費行動を見据えた戦略的な農業政策が不可欠です。また、EU内での連携を深めることにより、ポーランドは羊肉産業の新たな章を開く可能性を秘めています。