国際連合食糧農業機関が2024年に発表したデータによると、ニューカレドニアの羊肉生産量は1960年代から2023年にかけて大きく変動を見せています。1961年から1970年代半ばまでは比較的安定していましたが、それ以降は増減が激しく、特に1990年代初頭以降には急激な減少が見られ、その後も低調な状態が続いています。2023年には9トンにまで回復しているものの、過去のピークである1993年の30トンには遠く及んでいません。
ニューカレドニアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 9 |
85.11% ↑
|
2022年 | 5 |
-47.78% ↓
|
2021年 | 9 |
-25% ↓
|
2020年 | 12 |
-11.76% ↓
|
2019年 | 14 |
74.36% ↑
|
2018年 | 8 |
30% ↑
|
2017年 | 6 | - |
2016年 | 6 |
-53.85% ↓
|
2015年 | 13 |
160% ↑
|
2014年 | 5 |
-37.5% ↓
|
2013年 | 8 | - |
2012年 | 8 |
-20% ↓
|
2011年 | 10 |
25% ↑
|
2010年 | 8 |
33.33% ↑
|
2009年 | 6 |
-25% ↓
|
2008年 | 8 |
33.33% ↑
|
2007年 | 6 |
-14.29% ↓
|
2006年 | 7 |
-22.22% ↓
|
2005年 | 9 |
12.5% ↑
|
2004年 | 8 |
33.33% ↑
|
2003年 | 6 |
-14.29% ↓
|
2002年 | 7 | - |
2001年 | 7 | - |
2000年 | 7 |
75% ↑
|
1999年 | 4 |
33.33% ↑
|
1998年 | 3 |
-25% ↓
|
1997年 | 4 | - |
1996年 | 4 |
-60% ↓
|
1995年 | 10 | - |
1994年 | 10 |
-66.67% ↓
|
1993年 | 30 |
11.11% ↑
|
1992年 | 27 | - |
1991年 | 27 |
12.5% ↑
|
1990年 | 24 |
30.43% ↑
|
1989年 | 18 |
4.55% ↑
|
1988年 | 18 |
10% ↑
|
1987年 | 16 | - |
1986年 | 16 | - |
1985年 | 16 | - |
1984年 | 16 | - |
1983年 | 16 |
-16.67% ↓
|
1982年 | 19 |
-14.89% ↓
|
1981年 | 23 |
-6.62% ↓
|
1980年 | 24 |
-16.57% ↓
|
1979年 | 29 |
6.47% ↑
|
1978年 | 27 |
6.25% ↑
|
1977年 | 26 |
14.29% ↑
|
1976年 | 22 |
16.67% ↑
|
1975年 | 19 |
14.29% ↑
|
1974年 | 17 |
16.67% ↑
|
1973年 | 14 |
5.88% ↑
|
1972年 | 14 |
-19.05% ↓
|
1971年 | 17 |
31.25% ↑
|
1970年 | 13 | - |
1969年 | 13 | - |
1968年 | 13 | - |
1967年 | 13 |
6.67% ↑
|
1966年 | 12 | - |
1965年 | 12 | - |
1964年 | 12 |
-6.25% ↓
|
1963年 | 13 | - |
1962年 | 13 | - |
1961年 | 13 | - |
1961年以降のニューカレドニアにおける羊肉生産量の推移を見ると、当初の生産量は13トンからスタートし、1970年代後半から1980年代にかけて最大29トンにまで増加しました。この時期には、島内の食肉需要の高まりと羊飼育の活性化が背景にあったと考えられます。しかし、1993年をピークにその後の生産量には劇的な減少が見られ、1996年にはわずか4トン、1998年には3トンまで落ち込みました。この急激な低下の要因としては、ニューカレドニアの農業政策の変化や土地利用の競合、外部からの輸入肉の増加による競争激化などが考えられます。
2000年代以降も生産量は低い水準を維持しており、近年の回復傾向も限定的です。2023年の生産量は9トンと、過去の水準に比べかなり低調な状態ですが、2019年以降に見られた一時的な増加の影響は注目に値します。このような動向は、地域特有の地政学的課題や気候変動と密接に関連していると考えられます。たとえば、ニューカレドニアは南太平洋の島嶼国家として気候リスクに直面しており、干ばつや洪水などの影響で牧草地の運用に困難が生じています。
また、ニューカレドニアは地政学的にフランスの海外領土であり、フランス本土からの影響が農業政策にも及びます。そのため、自給自足を重視する農業モデルが十分発展していない可能性があります。さらに、食品の輸入依存度が高い地域であることから、本土や近隣諸国から輸入された肉製品が供給を占めており、国内生産の競争力が低下している点も否定できません。
ニューカレドニアにおける羊肉生産量の減少は、地域経済や環境への影響から見ても長期的な課題となっています。この問題に対する具体的な対策としては、まず生産者への支援を強化することが挙げられます。たとえば、効率的な農地管理技術や灌漑インフラの導入を支援することで、気候変動による影響を軽減しつつ、生産性を向上させることが可能です。また、輸入肉への依存を緩和し、地元で生産された羊肉の需要を高めるために、品質向上と地産地消の推進が求められます。これには、消費者教育や観光産業との連携を通じて、ニューカレドニア独自の農畜産物ブランドを築くことが有効です。
さらに、将来の見通しとしては地域間協力の強化が鍵となります。ニューカレドニアは同じ南太平洋地域に属するフィジーやトンガなどの島嶼国と連携を図り、共通の気候変動対策や農業技術の共有を進めるべきです。これにより、地域全体で持続可能な生産モデルが確立され、個別国の弱点を補完し合える可能性があります。
結論として、ニューカレドニアにおける羊肉生産量の動向は、単なる生産性の問題に留まらず、気候リスク、政策、地政学など多くの要素が絡み合った複合的な課題を示しています。今後は、農業政策の見直しや技術支援、地域間協力の枠組みを強化することで、この問題を克服し、持続可能な農業モデルを育むことが期待されます。