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アフガニスタンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の発表した最新データによると、アフガニスタンの羊肉生産量は、かつて1960年代の高成長期から着実な増加が見られたものの、近年は停滞傾向にあります。特に2020年代に入ってからの生産量は減少傾向が続き、2023年には100,793トンとなっています。この長期的な推移には地政学的背景、気候変動、そして国内インフラの脆弱性が影響していると分析されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 100,793
-1.18% ↓
2022年 102,000
-2.86% ↓
2021年 105,000
-4.55% ↓
2020年 110,000
-1.62% ↓
2019年 111,814
1.65% ↑
2018年 110,000
-2.26% ↓
2017年 112,541
4.53% ↑
2016年 107,668
0.25% ↑
2015年 107,400
-1.83% ↓
2014年 109,407
3.21% ↑
2013年 106,000
-4.5% ↓
2012年 111,000
-3.48% ↓
2011年 115,000
1.77% ↑
2010年 113,000
13.36% ↑
2009年 99,680
14.73% ↑
2008年 86,880
32.12% ↑
2007年 65,760
-12.55% ↓
2006年 75,200
-14.55% ↓
2005年 88,000
7.84% ↑
2004年 81,600
10.87% ↑
2003年 73,600
2.22% ↑
2002年 72,000
-36.62% ↓
2001年 113,600
-6.58% ↓
2000年 121,600
-15.56% ↓
1999年 144,000
9.76% ↑
1998年 131,200
6.49% ↑
1997年 123,200
8.45% ↑
1996年 113,600
10.94% ↑
1995年 102,400
-3.03% ↓
1994年 105,600 -
1993年 105,600
-2.94% ↓
1992年 108,800
-5.56% ↓
1991年 115,200
0.18% ↑
1990年 114,992
4.54% ↑
1989年 110,000
4.76% ↑
1988年 105,000
5% ↑
1987年 100,000
5.26% ↑
1986年 95,000
-9.52% ↓
1985年 105,000
-8.7% ↓
1984年 115,000
-8% ↓
1983年 125,000
-6.72% ↓
1982年 134,000
0.75% ↑
1981年 133,000
3.91% ↑
1980年 128,000
3.23% ↑
1979年 124,000
-3.13% ↓
1978年 128,000
3.23% ↑
1977年 124,000
5.98% ↑
1976年 117,000
24.47% ↑
1975年 94,000
5.62% ↑
1974年 89,000
8.54% ↑
1973年 82,000
9.33% ↑
1972年 75,000
-13.79% ↓
1971年 87,000
-1.14% ↓
1970年 88,000
2.33% ↑
1969年 86,000
-5.49% ↓
1968年 91,000
13.75% ↑
1967年 80,000
6.67% ↑
1966年 75,000
2.74% ↑
1965年 73,000
4.29% ↑
1964年 70,000
7.69% ↑
1963年 65,000
6.56% ↑
1962年 61,000 -
1961年 61,000 -

アフガニスタンの羊肉生産量の推移を紐解くと、1960年代から1970年代にかけての持続的な成長がまず目を引きます。例えば、1961年の61,000トンから1978年の128,000トンにまで増加したことは、国内の牧畜産業が当時、比較的安定した状態にあったことを示しています。これは、家畜農業技術の向上や豊かな牧草地を活用した産業拡大によるものだと考えられます。しかし同時に、1979年以降のソ連侵攻開始やその後の長期的な紛争の影響により、この成長が途絶えていることが確認できます。

1980年代から1990年代にかけてのデータを見ると、羊肉生産量は一時的な回復と減少を繰り返しながら、不安定な動向を示しています。例えば、1981年には133,000トンへ達したものの、1986年には95,000トンまで減少しています。また1990年代前後では、110,000トン前後の生産量で推移していますが、これが本格的な持続的回復ではなく、むしろ一定の限界に達している兆候ともいえます。この背景には、内戦にともなう社会的混乱や生産基盤の破壊があると指摘されます。

さらに注目すべきは、2001年以降の大幅な減少と停滞です。2002年には72,000トンにまで落ち込み、その後2010年代には一部回復を果たしたものの、2020年代に入ると再び104,000トン以下の低下傾向が続いています。この減少は、気候変動による干ばつや牧草地の劣化、そして農村開発の停滞が原因とされています。また、近年の地政学的な不安定さも影響しており、2021年以降の政権交代が農業供給網や輸送インフラに課題を与え、全体的な羊肉供給に悪影響を及ぼしていると言えます。

国際比較の観点から見ると、アフガニスタンの羊肉生産量は中国やインドのような主要生産国と比べて非常に小規模です。例えば、中国では年間生産量が約200万トンを超えることが一般的です。また、韓国や日本のように国内需要を輸入で補う国も多い中、アフガニスタンのように自給的な供給モデルに依存する国では、牧畜業の安定が非常に重要です。しかし現在、安定した通年の供給が難しく、国内肉の消費需要を完全には満たせていない状況があります。

ここで未来への示唆を考えると、まず乾燥地帯でも育成可能な家畜用飼料の活用や、適切な牧草管理が急務です。例えば、国際機関との連携を通じて、適応可能な飼料品種の導入や牧草地の保全に力を入れることが提案されます。また、生産量をより正確に管理し、地政学的なリスクに強い供給網を構築する必要があります。これには、隣国との地域協力や貿易枠組みを強固にすることが有効であると考えられます。さらに、長期的には、農家支援政策の充実や、若者を牧畜業へと誘導する働きかけが重要となるでしょう。

結論として、アフガニスタンの羊肉生産量の推移は、紛争や気候変動、インフラの不備といった多様な課題の影響を強く受けています。ただし、国際協力や技術導入による持続可能な農業の促進があれば、将来的には回復基調へと乗せる可能性が十分にあります。国際社会の支援を得ながら、持続可能な生産体制の構築に向けた取り組みが求められます。