Skip to main content

アイスランドの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、アイスランドの羊肉生産量は、1961年の13,000トンをピークに1970年代半ばの15,893トンに増加しましたが、その後、総じて減少傾向が続いています。2023年の生産量は8,403トンに留まり、最盛期の約半分以下の水準となっています。特に1990年代以降、生産量が10,000トンを下回る年が多くなり、安定した増加には至っていません。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 8,403
-2.96% ↓
2022年 8,659
-7.77% ↓
2021年 9,388
3.51% ↑
2020年 9,070
-6.68% ↓
2019年 9,719
-7.32% ↓
2018年 10,487
-1.24% ↓
2017年 10,619
2.35% ↑
2016年 10,375
1.87% ↑
2015年 10,185
0.84% ↑
2014年 10,100
2.11% ↑
2013年 9,891
-0.3% ↓
2012年 9,921
3.48% ↑
2011年 9,587
4.59% ↑
2010年 9,166
3.68% ↑
2009年 8,841
-1% ↓
2008年 8,930
3.31% ↑
2007年 8,644
-0.03% ↓
2006年 8,647
-1.04% ↓
2005年 8,738
1.09% ↑
2004年 8,644
-1.68% ↓
2003年 8,792
1.34% ↑
2002年 8,676
0.7% ↑
2001年 8,616
-11.49% ↓
2000年 9,735
12.62% ↑
1999年 8,644
5.72% ↑
1998年 8,176
3.45% ↑
1997年 7,903
-2.8% ↓
1996年 8,131
-6.43% ↓
1995年 8,690
-1.23% ↓
1994年 8,798
-0.59% ↓
1993年 8,850
2.94% ↑
1992年 8,597
-7.63% ↓
1991年 9,307
-1.55% ↓
1990年 9,454
-1.76% ↓
1989年 9,623
-8.73% ↓
1988年 10,543
-16.31% ↓
1987年 12,598
-6.49% ↓
1986年 13,472
4.64% ↑
1985年 12,875
-1.08% ↓
1984年 13,015
-4.96% ↓
1983年 13,694
-4.53% ↓
1982年 14,344
-2.96% ↓
1981年 14,781
2.09% ↑
1980年 14,479
-8.9% ↓
1979年 15,893
0.88% ↑
1978年 15,755
6.6% ↑
1977年 14,780
0.17% ↑
1976年 14,755
-3.73% ↓
1975年 15,327
9.61% ↑
1974年 13,983
1.95% ↑
1973年 13,715
9.91% ↑
1972年 12,478
10.76% ↑
1971年 11,266
-7.97% ↓
1970年 12,242
-5.06% ↓
1969年 12,894
-1.77% ↓
1968年 13,127
-2.5% ↓
1967年 13,464
6.87% ↑
1966年 12,599
1.88% ↑
1965年 12,367
9.37% ↑
1964年 11,307
-8.1% ↓
1963年 12,303
-7.2% ↓
1962年 13,258
1.98% ↑
1961年 13,000 -

アイスランドは羊肉の生産が盛んな国として知られ、とりわけ伝統的な放牧農業に支えられた独自の畜産業を形成しています。しかし、データから明らかなように、アイスランドにおける羊肉生産量は過去数十年にわたり、顕著な減少傾向を示しています。生産量は1960年代から1970年代までの約15,000トン規模が最盛期であり、それ以降、徐々に減少へと転じました。2023年には8,403トンとなり、60年間で約4割の減少を記録しています。

この減少の背景には、いくつかの要因があります。まず、国内外の人口動態や食文化の変化として、消費者の需要が多様化している点が挙げられます。特に、過去数十年で健康志向の食生活や植物性食品の需要が高まり、これが間接的に家畜由来の食品、特に羊肉の市場に影響を与えています。また、アイスランドでは、国内市場の需要が国の小規模な人口(約37万人)に限定される中、輸出の拡大も課題であり、競争力の向上が必要です。

さらに、地政学的リスクや自然環境も生産量に影響を与えている可能性があります。アイスランドの厳しい気候や一部の地域における農地化の困難さは、生産の安定性に直接影響を及ぼします。特に冬季には家畜管理コストが増加し、これが生産減少を招く要因となっています。また、1990年代以降、欧州における農産物政策(たとえば関税や輸入規制の変更)が間接的に羊肉輸出に影響している可能性も考えられます。

さらに2020年からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、輸出や国内の流通にも影響がありました。データからは、2020年の生産量が2017年をピークにして再び減少に転じていることが確認されます。このパンデミックの影響は、畜産業全体を取り巻く課題を再認識させる契機となりました。

今後の課題の一つとして、国内外での市場需要に適応しつつ、安定的で持続可能な羊肉生産をどのように確立していくかが重要です。特に、輸出競争力を強化するためには、高品質でアイスランドらしいブランド化が求められるでしょう。また、持続可能性を高めるために、環境に配慮した生産手法の研究開発が急務です。たとえば、温室効果ガス排出量削減や、循環型農業プロセスの構築が考えられるでしょう。

結論として、羊肉生産量の減少は単なる国内市場の問題だけではなく、地政学的、社会的な側面からも複雑な課題として認識されています。アイスランド政府や畜産業界の関係者には、こうした要因を組み合わせた包括的な戦略の策定が期待されます。また、国際協力を強化し、輸出先国でのマーケット開拓に向けた支援を求めることも有益です。将来的には、テクノロジーの活用や政策的支援を活用し、アイスランドの羊肉生産における持続可能な回復と発展を目指す必要があるでしょう。