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アゼルバイジャンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、1992年のアゼルバイジャンの羊肉生産量は27,000トンでしたが、2023年までに88,946トンへと増加しています。この間、2009年から2010年および2016年から2019年にかけて生産量が急増し、持続的な上昇傾向を示しました。一方で、2012年や2014年に一時的な減少が見られるなど、経済的・地政学的要因の影響が浮き彫りとなっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 88,946
-0.12% ↓
2022年 89,055
1.61% ↑
2021年 87,647
0.68% ↑
2020年 87,058
2.06% ↑
2019年 85,300
5.57% ↑
2018年 80,800
2.16% ↑
2017年 79,092
5.1% ↑
2016年 75,254
6.08% ↑
2015年 70,940
3.17% ↑
2014年 68,760
-3.06% ↓
2013年 70,929
0.8% ↑
2012年 70,366
-5.42% ↓
2011年 74,395
0.15% ↑
2010年 74,280
11.24% ↑
2009年 66,776
44.22% ↑
2008年 46,300
2.81% ↑
2007年 45,036
1.36% ↑
2006年 44,433
6.06% ↑
2005年 41,894
2.97% ↑
2004年 40,684
3.7% ↑
2003年 39,231
4.3% ↑
2002年 37,614
2.46% ↑
2001年 36,710
4.93% ↑
2000年 34,984
0.62% ↑
1999年 34,769
8.17% ↑
1998年 32,143
24.48% ↑
1997年 25,822
0.93% ↑
1996年 25,583
11.23% ↑
1995年 23,000
4.55% ↑
1994年 22,000
-15.38% ↓
1993年 26,000
-3.7% ↓
1992年 27,000 -

アゼルバイジャンにおける羊肉生産量は、1992年の27,000トンから始まり、その後30年以上にわたって顕著に増加を続けてきました。特に2009年を境に生産量が大幅に増加し、70,000トンを超える水準に到達しています。2023年現在は88,946トンと記録され、この成長は国内畜産業の発展と農業政策の成功を示しています。

1990年代前半、アゼルバイジャンの羊肉生産は不安定で、22,000トン台の最低値まで減少した時期もありました。この背景には、旧ソビエト連邦の崩壊による経済的混乱や、ナゴルノ・カラバフ紛争といった地政学的リスクが存在しました。これらの要因が家畜飼育に影響を及ぼし、畜産業全体の減少につながったと考えられます。

その後、1998年以降から2000年代半ばにかけては、生産量が徐々に回復しました。この回復は経済の安定と農業分野での技術改善に起因します。また、アゼルバイジャン政府が実施した農業振興プログラムや、国際機関の支援によるインフラ整備も羊肉生産に寄与しました。2009年の急増は、国内需要の伸びと輸出産業の拡大に伴い、畜産業が一層強化された結果と言えるでしょう。

一方で、2012年や2014年では生産量がやや減少傾向を見せています。この期間は、世界経済の停滞や石油価格の低迷がアゼルバイジャン経済、特に農村地域に影響を及ぼしていた時期と一致します。こうしたマクロ経済の変動要素が備品や飼料の供給問題、環境要因の悪化などを通じて生産量に響いたと推測されます。

近年では、2016年から再び増加傾向が顕著になり、2023年には過去最高に迫る水準に達しました。これは、国内の所得向上に伴う食肉需要の増大や、農業技術のさらなる発展の成果を反映しており、農産物としての羊肉の輸出拡大も重要な要因とされています。アゼルバイジャンと中東諸国や中央アジアとの貿易関係の強化も一つの背景に挙げられます。

しかしながら、課題も残されています。2023年の生産量は前年より微減しており、これは気候変動の影響や飼料価格の高騰、地域的な農村振興策のばらつきが原因と考えられます。また、紛争地帯での安全保障問題も、継続的に農産業にリスクをもたらしています。これを改善するためには、持続可能な農業技術の導入や、地域間協力による畜産支援体制の強化が必要です。

さらに、新型コロナウイルスによるパンデミックは2020年以降の国際貿易に影響し、輸出動向や国内食料供給網に調整を迫る場面がありました。アゼルバイジャンでは、輸入依存の危険性を見直し、食肉市場での自給的生産を推進する試みが進行しています。しかし、農家や小規模事業者が都心部と農村部の経済格差に直面している課題も依然として残っています。

今後の対策として、農村部の支援を拡充し、地域間でのインフラ発展を推進することが急務です。また、気候変動への対応として、耐乾性の強い飼料作物の導入や水資源管理の確立が求められます。さらに、輸出市場を拡大するには、中東やアジア市場との貿易協定の締結、輸送インフラへのさらなる投資が必要となるでしょう。

総じて、アゼルバイジャンの羊肉生産量はこの30年間で大きく成長しましたが、地政学的リスクや経済変動、環境問題といった多岐にわたる挑戦に直面しています。政府や国際機関がこれらの課題に適切に対処することで、持続可能な成長を確保し、羊肉生産が国内経済だけでなく地域経済をも支える基盤として発展する可能性を有しているといえます。