国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによれば、コンゴ民主共和国の羊肉生産量は、1961年の2,050トンから長期的にわずかではありますが増加傾向を示しています。特に1980年代後半から1990年代初期には成長が加速しましたが、その後は緩やかな増加にとどまっています。最新の2023年の生産量は2,849トンで、近年、ほぼ横ばいの状態が続いています。
コンゴ民主共和国の羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 2,849 |
-0.05% ↓
|
2022年 | 2,850 |
0.39% ↑
|
2021年 | 2,839 |
0.18% ↑
|
2020年 | 2,834 |
0.18% ↑
|
2019年 | 2,829 |
0.18% ↑
|
2018年 | 2,824 |
0.11% ↑
|
2017年 | 2,821 |
-0.41% ↓
|
2016年 | 2,833 |
-0.12% ↓
|
2015年 | 2,836 |
0.02% ↑
|
2014年 | 2,836 | - |
2013年 | 2,836 |
-0.06% ↓
|
2012年 | 2,837 |
-0.09% ↓
|
2011年 | 2,840 |
-0.35% ↓
|
2010年 | 2,850 |
1.06% ↑
|
2009年 | 2,820 |
0.36% ↑
|
2008年 | 2,810 |
0.36% ↑
|
2007年 | 2,800 |
0.36% ↑
|
2006年 | 2,790 |
0.43% ↑
|
2005年 | 2,778 |
0.11% ↑
|
2004年 | 2,775 |
0.11% ↑
|
2003年 | 2,772 |
0.11% ↑
|
2002年 | 2,769 |
-1.53% ↓
|
2001年 | 2,812 |
-1.54% ↓
|
2000年 | 2,856 |
-1.52% ↓
|
1999年 | 2,900 |
-1.53% ↓
|
1998年 | 2,945 |
-1.47% ↓
|
1997年 | 2,989 |
-0.5% ↓
|
1996年 | 3,004 |
-4.88% ↓
|
1995年 | 3,158 |
-0.85% ↓
|
1994年 | 3,185 |
4.53% ↑
|
1993年 | 3,047 |
-1.9% ↓
|
1992年 | 3,106 |
4.12% ↑
|
1991年 | 2,983 |
5.29% ↑
|
1990年 | 2,833 |
3.39% ↑
|
1989年 | 2,740 |
5.38% ↑
|
1988年 | 2,600 |
3.17% ↑
|
1987年 | 2,520 | - |
1986年 | 2,520 |
0.8% ↑
|
1985年 | 2,500 |
0.81% ↑
|
1984年 | 2,480 |
0.4% ↑
|
1983年 | 2,470 |
0.41% ↑
|
1982年 | 2,460 |
0.41% ↑
|
1981年 | 2,450 |
2.08% ↑
|
1980年 | 2,400 | - |
1979年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1978年 | 2,300 |
-4.17% ↓
|
1977年 | 2,400 | - |
1976年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1975年 | 2,300 | - |
1974年 | 2,300 | - |
1973年 | 2,300 | - |
1972年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
1971年 | 2,200 | - |
1970年 | 2,200 |
20.22% ↑
|
1969年 | 1,830 |
19.61% ↑
|
1968年 | 1,530 |
-9.47% ↓
|
1967年 | 1,690 |
6.29% ↑
|
1966年 | 1,590 |
-5.36% ↓
|
1965年 | 1,680 |
15.07% ↑
|
1964年 | 1,460 |
-16.09% ↓
|
1963年 | 1,740 |
-7.94% ↓
|
1962年 | 1,890 |
-7.8% ↓
|
1961年 | 2,050 | - |
今回、1961年から2023年までのコンゴ民主共和国における羊肉生産量の推移データを分析した結果、いくつかの特徴的なトレンドが見られました。まず、1960年代から70年代半ばにかけては年間生産量が2,000トン前後で推移し、不安定ながらも低い水準を維持していました。1976年以降、2,400トン台へと増加し、1980年代には生産がさらに安定して増加し始めています。1990年に初めて2,800トンを超え、その後の数年間では約3,100トンに達する時期もありました。しかし、1996年以降は減少に転じ、近年は2,800トン台での停滞が続いています。
このような生産量の推移背景には、いくつかの地政学的・経済的要因が関与しています。1980年代後半から1990年代初期の増産期は、農業技術の発展や家畜育成環境の改善が要因の一部であったと考えられます。しかし、1990年代中頃以降、国内情勢の不安定化、特に紛争の影響が顕著になりました。持続可能な家畜育成や農業活動が困難になり、羊肉生産を含む一次産業全体に打撃を与えました。それ以降、状況改善のための取り組みが行われてきましたが、本格的な生産拡大にはつながっていないことが見て取れます。
また、他国の情勢を踏まえると、この生産量は依然として低い水準にあると言えます。たとえば、中国やインドなど、一部のアジア地域では羊肉生産量が数百万トンに達しており、産業の規模や支援が大きく異なることがわかります。地域比較を通じて、コンゴ民主共和国が持続的な生産能力を向上させる潜在力は十分にあるとみられますが、社会的・経済的基盤を整えるための取り組みが必要不可欠です。
現在の停滞した生産アークを変えるためには、以下のような具体的な対策が考えられます。まず、羊の飼育環境や餌供給の効率化といった技術的改善が挙げられます。国内外の専門機関や教育機関と連携することで、農村部の牧畜農家への技術支援を提供するのは一案です。また、国際的なパートナーシップを通じて、羊肉関連の輸出市場を創出することで生産者の経済的インセンティブを高めることも効果的です。
さらに重要なのは、地政学的リスクへの対応策を講じることです。紛争や治安不安が一次産業の停滞を招いている以上、国家主導での安定化政策が羊肉生産量向上の鍵になります。市場を取り巻く政治的リスクを軽減するためには、地域間協力による積極的な経済振興プログラムの導入が求められています。また、自然災害や疫病の発生リスクも補足的要因となるため、家畜の健康管理や防疫対策の強化も課題です。
今回のデータから得られる結論として、コンゴ民主共和国における羊肉生産量は増加傾向を示しているものの、市場の需要に見合うだけの成長を達成しておらず、依然として停滞が見られます。国内の社会的・経済的基盤整備を優先しながら、技術支援と国際協力を通じた発展への取り組みが必要です。今後は、地政学的リスクの軽減や持続可能な牧畜政策の導入に注力することで、この問題解決の糸口を見いだせるでしょう。