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カナダの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organizationによる最新データによると、カナダの羊肉生産量は1960年代のピーク時から1970年代にかけての減少を経て、2000年以降に再び増加傾向を示しました。2023年の生産量は17,647トンとなり、これは履歴上でも比較的高い水準です。しかし、全体的に見ると近年は概ね16,000トン台で推移し、2000年代半ばの急速な成長は一段落した印象を受けます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 17,647
5.29% ↑
2022年 16,760
1.21% ↑
2021年 16,560
-0.25% ↓
2020年 16,602 -
2019年 16,602
3.08% ↑
2018年 16,106
-0.28% ↓
2017年 16,151
-1.74% ↓
2016年 16,437
-2.42% ↓
2015年 16,845
-0.29% ↓
2014年 16,894
-0.28% ↓
2013年 16,941
3.89% ↑
2012年 16,306
-7.91% ↓
2011年 17,707
9.61% ↑
2010年 16,155
1.22% ↑
2009年 15,960
-1.66% ↓
2008年 16,230
-3.45% ↓
2007年 16,810
-1.35% ↓
2006年 17,040
-2.91% ↓
2005年 17,550
0.46% ↑
2004年 17,470
10.85% ↑
2003年 15,760
6.85% ↑
2002年 14,750
3.54% ↑
2001年 14,246
13.57% ↑
2000年 12,544
9.84% ↑
1999年 11,420
7.63% ↑
1998年 10,610
4.19% ↑
1997年 10,183
-4.15% ↓
1996年 10,624
3.86% ↑
1995年 10,229
-2.52% ↓
1994年 10,493
-3.24% ↓
1993年 10,844
-3.67% ↓
1992年 11,257
8.02% ↑
1991年 10,421
12.17% ↑
1990年 9,290
4.01% ↑
1989年 8,932
5.98% ↑
1988年 8,428
6.55% ↑
1987年 7,910
-3.34% ↓
1986年 8,183
-0.27% ↓
1985年 8,205
-7.83% ↓
1984年 8,902
5.17% ↑
1983年 8,464
8.89% ↑
1982年 7,773
20.51% ↑
1981年 6,450
22.95% ↑
1980年 5,246
10.49% ↑
1979年 4,748
-1.64% ↓
1978年 4,827
-12.49% ↓
1977年 5,516
-18.39% ↓
1976年 6,759
-13.13% ↓
1975年 7,781
4.04% ↑
1974年 7,479
-16.92% ↓
1973年 9,002
8.41% ↑
1972年 8,304
4.73% ↑
1971年 7,929
5.73% ↑
1970年 7,499
-3.39% ↓
1969年 7,762
-9.5% ↓
1968年 8,577
-11.85% ↓
1967年 9,730
1.24% ↑
1966年 9,611
-15.55% ↓
1965年 11,381
-18.94% ↓
1964年 14,040
-1.89% ↓
1963年 14,310
-0.8% ↓
1962年 14,425
-7.96% ↓
1961年 15,672 -

カナダの羊肉生産量は非常に特徴的な歴史を持っています。1961年には15,672トンと比較的高い生産量を記録していましたが、その後10年以上にわたり減少し、1979年には4,748トンと最低値にまで落ち込みました。この長期的な下降傾向の要因としては、畜産業における牛肉や豚肉の優勢、羊肉に対する国内需要の限界的増加、さらには羊畜産に関するコストの高さが挙げられます。

1980年代以降になると、およそ20年以上にわたる緩やかな上昇が見られました。この期間、消費者の嗜好の変化や、健康志向の高まりによる羊肉への関心の増加が背景にあると考えられます。結果として、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、羊肉生産量は顕著に増大し、2002年には過去のピークを超える14,750トンに達しました。その後、2000年代中頃には生産量がさらに伸び、2005年には17,550トンと記録的な水準に至りました。

しかし、近年は概ね16,000トン前後で安定しており、大幅な増加や減少はみられなくなっています。2023年には17,647トンと過去数年に比べて若干の上昇を示しているものの、成長率は以前ほど顕著ではありません。この背景には、国内市場における需要の頭打ちや、輸出市場における競争の激化が影響している可能性があります。

羊肉生産の現状には、いくつかの課題が見て取れます。一つは、気候変動の影響です。羊は乾燥や寒冷地帯に適応しやすい動物ではありますが、カナダのような寒冷地では飼育コストが高くなりやすく、特に餌の供給や冬季の暖房設備などに課題があります。さらに、労働力不足や若い世代の農業離れも深刻化しており、羊畜産業への参入者が減少している現状も問題です。

新たな課題としては、地域的な動乱や貿易摩擦の問題があります。羊肉は輸出品としても重要ですが、国際的な貿易政策や地政学的リスクが輸出に影響を与えています。たとえば、主要な輸出先である中東やアジア諸国における政治的不安定や、関税引き上げなどの政策的な制約が懸念されます。

未来に向けて、いくつかの具体的な対策が提案可能です。まず、国内生産の効率化を進めることが重要です。これは、飼育技術の革新や機械化を加速させることで実現できます。また、国際市場への参入を拡大するため、フリー貿易協定の活用や、輸出プロセスの簡素化を進めるべきです。さらに、国内市場の拡大のため、羊肉の健康面や調理の多様性に関する広報活動を強化することも重要です。

結論として、カナダの羊肉生産量は、大幅な減少と回復を繰り返してきた歴史を背景に、現在では持続的な安定が見られています。しかし、今後安定した成長を続けるためには、国内外の課題に対する積極的な対応が求められるでしょう。国際連合食糧農業機関などの国際機関とも協力し、気候変動への適応や国際市場拡大のための長期的な政策を展開することが鍵となります。