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トルコの羊飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、トルコの羊飼養数は1961年から2022年にかけて大きな変動を見せています。1960年代初頭には約3446万匹であった飼養数は、一時的に増加傾向を見せ、1980年代には約5000万匹というピークを迎えましたが、その後大きく減少に転じました。2000年代にはおよそ2500万匹を下回るまで落ち込みましたが、2010年代後半から再び増加に転じ、2022年には約4468万匹に達しています。この変動は、国内外の経済情勢、農村部の人口動態、政策的影響、そして地政学的リスクの影響を大きく受けた結果と考えられます。

年度 飼養数(匹)
2022年 44,687,888
2021年 45,177,690
2020年 42,126,781
2019年 37,276,050
2018年 35,194,972
2017年 30,983,933
2016年 31,507,934
2015年 31,140,244
2014年 29,284,247
2013年 27,425,232
2012年 25,031,564
2011年 23,089,692
2010年 21,794,508
2009年 23,974,592
2008年 25,462,292
2007年 25,616,912
2006年 25,304,324
2005年 25,201,156
2004年 25,431,540
2003年 25,174,000
2002年 26,972,000
2001年 28,492,000
2000年 30,256,000
1999年 29,435,000
1998年 30,238,000
1997年 33,072,000
1996年 33,791,000
1995年 35,646,000
1994年 37,541,000
1993年 39,416,000
1992年 40,433,008
1991年 40,553,008
1990年 43,647,008
1989年 45,384,000
1988年 43,796,000
1987年 43,758,000
1986年 42,500,000
1985年 40,391,008
1984年 48,707,008
1983年 49,636,000
1982年 49,598,000
1981年 48,630,000
1980年 46,026,000
1979年 43,942,000
1978年 42,708,000
1977年 41,504,000
1976年 41,366,000
1975年 40,539,008
1974年 40,093,008
1973年 38,806,000
1972年 37,008,000
1971年 36,471,008
1970年 36,351,008
1969年 36,587,008
1968年 35,878,000
1967年 34,663,008
1966年 33,382,000
1965年 32,654,000
1964年 32,278,976
1963年 31,614,000
1962年 33,306,896
1961年 34,463,200

トルコの羊飼養数の推移は、同国の農業部門および畜産業の変遷を象徴するデータです。1961年から1969年にかけて飼養数は増加し、36,500,000匹を超える規模に成長しました。この時期、農村部の人口は比較的安定していたため、羊の生産も順調に推移したと考えられます。しかし、1970年代から1990年代の初期にかけて飼養数は増減を繰り返しました。1980年代にはピークを迎え、4900万匹を超えましたが、以降の減少傾向は目立っています。この現象の背後には、農村の人口減少や都市化の進展、家族経営の畜産農家の減少などの要因が関係しています。

特に1990年代後半以降の急激な減少は顕著で、1998年以降、飼養数が3000万匹を下回りました。この減少は、国内の経済的困難と EU加盟を目指して進められていた農業政策の影響、および地域紛争の影響が重なった結果とみられます。また、羊肉価格の低迷や輸入政策の緩和による競争の激化が、国内の生産者に負のインパクトを与えた可能性もあります。

しかしながら、2010年代以降、羊飼養数は再び増加傾向を見せており、2018年には約3519万匹、2021年には4517万匹に達しています。この復調は、畜産業を支援する政策の実施や、羊肉及び乳製品への需要の増加が主な要因と考えられます。特に、国内輸出振興策や地方開発政策の影響が生産量の増加につながった可能性が高いと考えられます。

しかし、2022年のデータは約4468万匹と若干の減少を示しており、これは生産コストの高騰、気候変動による放牧地の減少、新型コロナウイルスの影響などが絡んでいる可能性があります。気候変動の影響は特に牧草地の品質やリソースの管理に対して顕著に現れており、将来的に生産効率をさらに圧迫する可能性が懸念されます。

将来の課題として、まず挙げられるのは、持続可能な牧草地と水資源の管理問題です。トルコは乾燥地域が多いため、放牧地の質を維持しながら餌の供給を確保する取り組みが不可欠です。また、農村部の人口流出が続くことで、羊の生産に関わる労働力不足が深刻化するリスクも指摘されています。これに対して、政府は機械化やデジタル技術を導入して生産効率を高める施策を講じるべきです。

具体的な提案の一つとして、地域に依存する小規模な生産者を支援する制度をより強化することが挙げられます。例えば、直販市場の設立や輸送インフラの整備を行い、地域産品の競争力を向上させるべきです。また、羊の飼養に関しては、気候変動適応型の牧草地管理技術の導入や、水資源の効率的な利用に注目する必要があります。さらに、地政学的リスクを考慮したうえで、輸入依存度を減らし国内生産を増加させるための長期的な計画が必要です。

総括すると、トルコの羊飼養数は、歴史的に見ると経済・政策・地政学的要因に大きく影響されてきました。近年の復調は政策の努力を示していますが、気候変動や地域紛争、資源管理の課題がある以上、まだ予断を許さない状態です。今後は、農業セクター全体を見据えた包括的な施策と国際的な協力の枠組みを構築することが重要です。トルコは、地理的利点を生かし、畜産業を安定的に発展させることによって、食料安全保障の地域的推進にも寄与できる可能性を秘めています。