国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したスウェーデンの羊飼養数データによると、1961年から1980年代にかけて全体的に増加傾向が見られましたが、2000年代初頭に入ると中程度の揺れがあるものの、再び上昇傾向が続き、2011年には622,711匹というピークに達しました。しかしその後、2013年以降から減少の兆候が現れ、特に2019年から急激に飼養数が大幅に減少し、2022年には340,840匹まで落ち込んでいます。この推移は、長期的な構造的変化や経済・環境の影響を示唆しています。
スウェーデンの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 340,840 |
2021年 | 348,770 |
2020年 | 367,740 |
2019年 | 371,230 |
2018年 | 587,147 |
2017年 | 606,080 |
2016年 | 578,174 |
2015年 | 594,730 |
2014年 | 588,757 |
2013年 | 576,769 |
2012年 | 610,500 |
2011年 | 622,711 |
2010年 | 564,922 |
2009年 | 540,487 |
2008年 | 524,780 |
2007年 | 508,921 |
2006年 | 505,466 |
2005年 | 471,284 |
2004年 | 465,561 |
2003年 | 448,308 |
2002年 | 426,771 |
2001年 | 451,594 |
2000年 | 431,934 |
1999年 | 437,249 |
1998年 | 421,189 |
1997年 | 442,102 |
1996年 | 469,000 |
1995年 | 461,849 |
1994年 | 484,000 |
1993年 | 470,687 |
1992年 | 447,461 |
1991年 | 418,783 |
1990年 | 405,595 |
1989年 | 400,506 |
1988年 | 394,713 |
1987年 | 397,275 |
1986年 | 407,112 |
1985年 | 426,088 |
1984年 | 438,444 |
1983年 | 436,686 |
1982年 | 430,083 |
1981年 | 403,211 |
1980年 | 391,629 |
1979年 | 382,559 |
1978年 | 387,237 |
1977年 | 389,830 |
1976年 | 389,478 |
1975年 | 368,138 |
1974年 | 372,365 |
1973年 | 347,471 |
1972年 | 332,474 |
1971年 | 330,396 |
1970年 | 334,616 |
1969年 | 342,405 |
1968年 | 326,786 |
1967年 | 266,729 |
1966年 | 243,020 |
1965年 | 225,260 |
1964年 | 224,067 |
1963年 | 187,819 |
1962年 | 169,450 |
1961年 | 171,410 |
スウェーデンの羊の飼養数推移を振り返ると、1961年の171,410匹から始まり、最初の20年で約2倍弱の増加を記録しています。1960年代後半の急激な増加期を除き、1980年代まで堅調な上昇を見せました。この時期の増加は、国内での羊毛・羊肉需要の高まり、および農業政策による家畜飼育振興が主な背景にあると考えられます。しかし、1980年代半ば以降はやや横ばい、あるいは微減の動きが見られ、1990年代後半になると一転して年による振れ幅が大きくなります。
2000年代に入り、飼養数は再び増加に転じて2006年の505,466匹を超え、2011年にピークの622,711匹を記録しました。この増加の背景には、欧州連合(EU)の農業補助金政策やスウェーデン国内での羊毛・羊肉産業の成長が挙げられます。また、羊は環境負荷が低い動物であるため、持続可能な農業への関心が高まる中で需要が増えた可能性もあります。
しかし2012年以降になると再び減少に転じ、その速度が特に2019年以降で顕著です。この急激な減少の要因としては、地球温暖化による牧草地の質の低下、飼育にかかるコスト増加、そして他の産業への転換による伝統農業の衰退が考えられます。また、2019年から急激に減少が加速した背景として、スウェーデン国内外の市場需要の変化や新型コロナウイルスのパンデミックが農業分野に与えた影響も無視できません。たとえば、パンデミック下では食肉の需要が減少し、輸送・流通の制約や労働力不足の問題も発生しました。
未来の課題として、羊飼養数の減少が地域経済、農村活性化、生物多様性保護などに与える影響が挙げられます。多くの距離的・地勢的条件に制約を抱える北欧地域では、羊はスウェーデンの農村における重要な生計基盤であり、特に持続可能な地域経済を構築するために不可欠な存在といえます。また、羊は草地の維持や生態系バランスにも寄与しており、その減少が生態系管理にも影響を及ぼす可能性があります。
これらの課題を克服するためには、農業の近代化を進めるとともにスウェーデン政府が特化資金を設けて羊飼育を奨励する政策が必要です。また、EU加盟国間での農業共同プログラムを利用し、共通農業政策の一環として羊飼育業者をさらに補助する枠組みを整えることが求められます。さらに、地球温暖化への対策として耐気候変動に強い牧草地開発や、羊毛・羊肉の高付加価値化戦略(ブランド化)による市場拡大の取り組みが見込まれます。
総じて、スウェーデンの羊飼養数の減少は、経済的、環境的、社会的な広範な影響を引き起こしつつあります。しかし、適切な政策と技術革新を通じて、この傾向を食い止める可能性は十分に残されています。国際機関や周辺諸国とも協力し、多岐にわたるアプローチを模索することが、今後のスウェーデンにおける持続可能な羊飼育の鍵となるでしょう。