国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新のデータによると、ナミビアにおける羊の飼養数は1960年代から2022年まで変動を続けており、特に1980年代から近年にかけては大きな減少傾向が見られます。1961年には約2,950,000匹だった飼養数が、1975年には4,500,000匹に達しましたが、その後は減少を繰り返し、2022年には約1,340,000匹となり、ピーク時の約30%にまで減少しています。この長期的な減少は、主に気候変動や土地の利用状況、飢饉、大干ばつなどの環境的要因の影響を反映していると考えられます。
---
ナミビアの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 1,342,289 |
2021年 | 1,319,838 |
2020年 | 1,307,355 |
2019年 | 1,582,997 |
2018年 | 1,748,795 |
2017年 | 1,917,022 |
2016年 | 1,746,642 |
2015年 | 1,973,393 |
2014年 | 2,044,156 |
2013年 | 2,188,758 |
2012年 | 2,677,913 |
2011年 | 2,850,000 |
2010年 | 2,800,000 |
2009年 | 2,700,000 |
2008年 | 2,700,000 |
2007年 | 2,652,658 |
2006年 | 2,660,252 |
2005年 | 2,663,795 |
2004年 | 2,619,363 |
2003年 | 2,955,454 |
2002年 | 2,764,253 |
2001年 | 2,233,578 |
2000年 | 2,446,146 |
1999年 | 2,174,370 |
1998年 | 2,086,434 |
1997年 | 2,429,328 |
1996年 | 2,198,436 |
1995年 | 2,409,700 |
1994年 | 2,619,520 |
1993年 | 2,651,823 |
1992年 | 2,863,401 |
1991年 | 3,295,447 |
1990年 | 3,328,316 |
1989年 | 3,242,007 |
1988年 | 3,046,306 |
1987年 | 2,811,224 |
1986年 | 2,741,336 |
1985年 | 2,579,766 |
1984年 | 2,606,024 |
1983年 | 2,331,969 |
1982年 | 2,791,347 |
1981年 | 3,452,068 |
1980年 | 4,474,027 |
1979年 | 4,325,539 |
1978年 | 4,382,577 |
1977年 | 4,425,470 |
1976年 | 3,450,000 |
1975年 | 4,500,000 |
1974年 | 3,750,000 |
1973年 | 3,720,000 |
1972年 | 3,700,000 |
1971年 | 3,680,000 |
1970年 | 3,660,000 |
1969年 | 3,640,000 |
1968年 | 3,620,000 |
1967年 | 3,600,000 |
1966年 | 3,697,000 |
1965年 | 3,650,000 |
1964年 | 3,600,000 |
1963年 | 3,553,001 |
1962年 | 3,213,810 |
1961年 | 2,954,074 |
ナミビアにおける羊の飼養数の推移を詳しくみると、1960年代から1970年代初頭にかけては比較的安定して増加しました。例えば、1961年の2,954,074匹から1975年には4,500,000匹に急増しました。この増加は、この時期のナミビア農業が安定しており、利用可能な牧草地が豊富であったことを示しています。しかし、1976年からは羊の数が大幅に減少し、翌年には3,450,000匹まで落ち込みました。
その後、1980年代に入ると飼養数はさらに減少し、1982年には約2,800,000匹、1983年には2,300,000匹まで低下しました。この時期の減少は、主に干ばつの発生や経済的不安定、不十分なインフラが原因だと考えられます。また、1980年代後半以降は緩やかに回復傾向を見せ、1990年代には再び3,000,000匹以上に到達しました。しかし、1990年代後半から再び下降傾向が見られ、その後の低迷は深刻な問題として注目されるようになりました。
2000年代後半以降では、ナミビアが直面する新たな課題として、厳しい気候条件、土地の過放牧、気候変動による干ばつの頻発などが浮き彫りになり、羊の飼養数の回復にはつながりませんでした。直近のデータでは、2020年に羊の総数が約1,300,000匹台にまで落ち込み、2022年の1,342,289匹は過去60年で最低水準の値となっています。
この減少の背景には、複数の重要な要素があります。一つは地政学的リスクと気候変動という二つの環境要因です。ナミビアは乾燥地域が広がる国土を持つため、気候変動の影響を特に受けやすく、干ばつが牧草地や水資源に壊滅的な影響を及ぼしています。また、羊の飼養には広大な牧草地が必要ですが、農地の逼迫や土地利用の競争が激化しており、これも動態に影響を与えています。さらに、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした経済的混乱や、労働力の不足も羊飼養数の低下を助長しました。
これらの課題を克服するためには、まず土地の持続可能な利用を促進する政策が重要です。具体的には、牧草地の回復プログラムや水資源管理技術の導入、干ばつ耐性のある牧草開発などが考えられます。また、農業経営を支援するインフラ整備や融資制度の拡充、気候変動への適応を目指す国際協力が求められます。加えて、他国の成功事例も参考になるでしょう。たとえば、オーストラリアでは干ばつ耐性種の開発や効率的な放牧システムを導入することで、厳しい気候条件に対応しながら農業を発展させてきました。
結論として、ナミビアにおける羊飼養数の長期的な減少は、多くの社会的および環境的課題に起因しています。この現象は、同地域の農業政策の転換や国際的な支援の必要性を強調しています。今後、持続可能な農業の推進、水資源の最適化、地域間協力の枠組み構築を通じて、羊飼養数の安定化と地域の農業の復興を目指すべきです。