国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、リビアの羊飼養数は長期的には増加傾向にあります。具体的には、1961年には約130万匹だった羊の数が、2022年には約754万匹に達し、過去60年間で約5.8倍になりました。しかし、データの中には一部で顕著な増減が見られ、それには経済的、地政学的、あるいは気候条件などの複数の要因が関与していると考えられます。
リビアの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 7,546,329 |
2021年 | 7,429,950 |
2020年 | 7,453,510 |
2019年 | 7,562,220 |
2018年 | 7,359,793 |
2017年 | 7,188,245 |
2016年 | 7,166,327 |
2015年 | 7,144,499 |
2014年 | 7,150,000 |
2013年 | 7,200,000 |
2012年 | 7,150,000 |
2011年 | 7,100,000 |
2010年 | 7,000,000 |
2009年 | 6,700,000 |
2008年 | 6,500,000 |
2007年 | 6,500,000 |
2006年 | 6,000,000 |
2005年 | 5,500,000 |
2004年 | 5,200,000 |
2003年 | 4,800,000 |
2002年 | 4,500,000 |
2001年 | 4,500,000 |
2000年 | 4,124,000 |
1999年 | 5,150,000 |
1998年 | 6,000,000 |
1997年 | 5,200,000 |
1996年 | 5,500,000 |
1995年 | 5,100,000 |
1994年 | 5,000,000 |
1993年 | 4,950,000 |
1992年 | 5,000,000 |
1991年 | 5,100,000 |
1990年 | 5,200,000 |
1989年 | 5,000,000 |
1988年 | 4,500,000 |
1987年 | 4,500,000 |
1986年 | 5,000,000 |
1985年 | 5,500,000 |
1984年 | 5,000,000 |
1983年 | 5,200,000 |
1982年 | 5,500,000 |
1981年 | 4,194,000 |
1980年 | 5,500,000 |
1979年 | 5,445,000 |
1978年 | 3,982,400 |
1977年 | 3,825,620 |
1976年 | 4,433,691 |
1975年 | 4,182,780 |
1974年 | 3,500,000 |
1973年 | 3,100,000 |
1972年 | 2,274,000 |
1971年 | 2,284,226 |
1970年 | 2,163,000 |
1969年 | 1,928,426 |
1968年 | 1,667,104 |
1967年 | 1,627,652 |
1966年 | 1,505,172 |
1965年 | 1,461,221 |
1964年 | 1,419,189 |
1963年 | 1,378,057 |
1962年 | 1,336,925 |
1961年 | 1,295,793 |
1961年以降、リビアの羊飼養数は、農牧業の拡大や地域的な需要の増加に伴い、長期的に増加してきたことがわかります。特に1970年代から1980年代には急激な増加と減少を繰り返し、1973年には310万匹、1975年には約418万匹、そして1980年には約550万匹にまで達しています。この急激な増加は、当時の経済政策や農牧業に関する政府の投資が影響を及ぼしている可能性が高いと考えられます。一方で、1981年以降には羊の数が急減し、419万匹を記録する年もありました。この時期の減少には、経済的な停滞や地域的な社会不安が影響している可能性があります。
1990年代以降は比較的安定した推移を見せ、1998年には600万匹に達しました。2000年代から2010年代にかけては緩やかな増加が続き、2010年代後半には700万匹台で推移しました。この時期の増加は、農牧業における技術の向上や輸出需要の拡大が影響していると考えられます。一方で、2011年以降はリビア内戦の影響も見られており、一部年では増加が停滞したり、わずかな減少が観察されています。例えば2020年には745万匹、2021年には743万匹と、微減する年もありました。
地政学的な背景もリビアの羊飼養数の動向に密接に関わっています。リビアは乾燥地帯に位置し、農牧業は水資源や気候に大きく左右されます。さらに、2011年のカダフィ政権崩壊後の内戦や紛争は、農牧業に深刻な影響を与えました。現地の牧草地が荒廃したり、移動が制限されたことで、飼養の管理が難しくなった地域もあったと考えられます。
このデータが示唆する課題は多岐にわたります。気候変動、例えば降水量の減少や砂漠化の進行はリビアの羊の飼育の持続可能性に大きな影響を及ぼします。また、内戦や地域衝突の継続も、農村部のインフラの破壊や移動制限を引き起こし、羊飼養の大きな障害となるでしょう。さらに、羊肉や羊毛の需要増加に応えるための効率的な管理や技術革新が求められる一方で、これがひずみを生む可能性もあります。
これらの課題に対応するためには、いくつかの具体的な提案が可能です。まず、国際的な協力を通じて、リビアの農牧業のインフラ整備を支援することが重要です。例えば、灌漑技術の提供や砂漠化防止のための植林プログラムの実施が考えられます。また、羊の健康管理や育種技術の向上、そして適切な放牧管理の教育を行うことで、効率的で持続可能な羊飼養を実現することが期待されます。さらに、地域の安定化を目指すための外交的な取り組みも、農牧業の基盤を守るために必要不可欠です。
結論として、リビアの羊飼養数は、長期的には増加傾向を示しており、これは同国の農牧業における一定の進展を表しています。しかし、気候変動や内戦といった課題を克服し、持続可能な羊飼養を実現するためには、国内外の協調が不可欠です。これらの取り組みは、リビアの経済的な安定と食料供給の確保に寄与するとともに、地域全体の持続可能な発展にも繋がるでしょう。