国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、アイスランドの羊飼養数は、1961年の833,840匹をピークとして、2022年には365,290匹まで減少しました。全体的に長期的な減少傾向が見られる一方で、1970年代後半から1980年頃までは一時的な増加が記録されており、近年の減少速度も加速しています。このような羊飼養数の減少には、生産性や地政学的・経済的要因、自然環境の変化が影響している可能性があります。
アイスランドの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 365,290 |
2021年 | 385,194 |
2020年 | 400,724 |
2019年 | 415,949 |
2018年 | 432,023 |
2017年 | 458,634 |
2016年 | 473,144 |
2015年 | 480,656 |
2014年 | 486,538 |
2013年 | 463,807 |
2012年 | 473,500 |
2011年 | 475,068 |
2010年 | 479,841 |
2009年 | 469,429 |
2008年 | 457,861 |
2007年 | 454,812 |
2006年 | 455,656 |
2005年 | 454,950 |
2004年 | 455,398 |
2003年 | 463,006 |
2002年 | 469,657 |
2001年 | 473,535 |
2000年 | 465,777 |
1999年 | 490,538 |
1998年 | 490,002 |
1997年 | 477,306 |
1996年 | 463,935 |
1995年 | 458,341 |
1994年 | 499,110 |
1993年 | 488,787 |
1992年 | 487,312 |
1991年 | 510,782 |
1990年 | 548,508 |
1989年 | 560,920 |
1988年 | 586,887 |
1987年 | 624,262 |
1986年 | 675,515 |
1985年 | 709,257 |
1984年 | 714,731 |
1983年 | 711,936 |
1982年 | 747,701 |
1981年 | 827,927 |
1980年 | 796,755 |
1979年 | 890,807 |
1978年 | 896,192 |
1977年 | 870,848 |
1976年 | 860,376 |
1975年 | 863,638 |
1974年 | 845,796 |
1973年 | 828,589 |
1972年 | 786,234 |
1971年 | 735,543 |
1970年 | 780,462 |
1969年 | 820,166 |
1968年 | 829,067 |
1967年 | 847,337 |
1966年 | 846,705 |
1965年 | 761,966 |
1964年 | 736,381 |
1963年 | 777,300 |
1962年 | 829,774 |
1961年 | 833,840 |
アイスランドの羊飼養数は1961年に833,840匹を記録した後、全体として減少傾向にあります。ただし、1970年代後半から1980年にかけては一時的に増加し、1978年には896,192匹と過去のピークに近づく水準を示しました。その後、1980年代以降は急激な減少が見られ、2022年には365,290匹と、過去半世紀で最小の飼養数となりました。このデータが示す長期的な減少率は約56%に達しており、特に1980年代から1990年代初頭にかけての顕著な減少に注目する必要があります。
背景として、経済状況や政策の変化が飼養数減少の一因と考えられます。特に1980年代には、アイスランド経済が輸出市場の変動や漁業セクターの影響を受け、多角的な農業支援策の縮小が進められました。羊肉や羊毛の需要自体が低下する中、飼養農家における事業リスクが増加し、羊飼育が採算の合わないものと認識される傾向が強まりました。また、自然環境の変化も影響を与えています。アイスランドは気候変動の影響を受けやすい地域であり、温暖化や牧草地の劣化が羊の放牧に適した環境を制限している可能性があります。
加えて、近年では環境保護政策の強化が挙げられます。アイスランドの政府は二酸化炭素排出削減を目指し、家畜による温室効果ガスの排出を管理する政策を進めており、それが羊飼養の減少に拍車をかけた可能性があります。同様の傾向は、欧州全体で牧畜頭数の減少が進む背景にも共通しています。
この状況が続くと、アイスランドの羊肉・羊毛市場の縮小だけでなく、伝統的な羊飼育文化の保全にも影響が及ぶ可能性があります。このため、いくつかの対策が必要となります。まず、持続可能な農業経営を支援するため、政府による牧畜業支援の強化、特に近代的な技術を活用した効率化支援が不可欠です。また、アイスランドの特産品である羊毛や羊肉を活かした新たな価値創造、たとえば高付加価値製品の開発や観光産業との連携なども検討すべきです。さらに、放牧地の回復や温暖化への適応を目指した研究や技術開発に投資し、気候変動に対するリスク管理を進めることが有効と考えられます。
将来的には、家畜業の縮小が地政学的に他国との競争力に影響を与える可能性にも注意を払う必要があります。たとえば、羊肉・羊毛市場ではニュージーランドやオーストラリアといった主要輸出国が存在し、それらと市場地位を争う場合には、アイスランド特有の高品質や希少性といった利点を強調する戦略が求められます。
結論として、アイスランドの羊飼養数の長期的な減少は、経済、自然環境、政策の変化が複雑に影響した結果と考えられます。これに対して効果的な対応を行うことで、羊飼育が持つ産業的・文化的な意義を損ねることなく、未来の課題に向けた解決策を見出すことが可能です。